殴り司教と幸運極振り盗賊ちゃんのダンジョン攻略~パリィで弾いてメイスで殴れ!~

にゃーにゃ

文字の大きさ
20 / 55

第20話『ヴァンパイアロード』

しおりを挟む
 スケルトン、骨の魔獣だ。一体一体は弱いが数が多い。スケルトンは錆びついた剣や棒を持っている。おそらくはここで散った冒険者たちが持っていた物だろう。

「まずは耐久強化だ〈ハードニング〉」

 ハードニングでバックラーとメイスに硬化の魔法を付与する。耐久力の問題はこれで解決だ。地味ではあるが非常に頼りになる魔法だ。

 多数のスケルトン相手の乱戦のさなかにあっても、メイスやバックラーが途中で破損する心配はない。安定した立ち回りが可能だ。

「こいよ、スケルトン」

 メイスでバックラーを叩き、音によってスケルトンの注意を自分に引きつける。後方支援のステラに魔獣の注意が向かないようにするためだ。

「所詮は骨。音だけでもヘイト稼ぎには十分だ」

 目の前のスケルトンが振りおろしたロングソードをバックラーで弾き返し、怯んだところをメイスで思い切りぶん殴る。スケルトンの頭蓋骨が爆ぜる。

 壺を地面に落としたような乾いた音が迷宮にこだました。

「次は私だよっ!」

 ステラの正確無比なスリングショット。玉がスケルトンの眉間に当たり貫通した。動いている相手にスリングによる的確なヘッドショット。ステラの腕は本物だ。

「ダメだー。コイツラにはぜんぜん効いてないっ!」

 だが痛覚や重要な器官が存在しないスケルトンにはスリングによる攻撃はあまり効果がなさそうだ。スケルトンは物理的に粉砕できるメイスの方が効果的だ。

「ヘッドショット、ナイスだ。ところでかなり難しいとは思うが、スリングでスケルトンの膝の関節を撃ちぬき、動きを止めることは可能か?」

「やってみるね。まかせてっ!」

 ステラがスリングを弾くとスケルトンが足の関節を破壊され、地面に前傾に倒れる。

「さすがステラだ」

 俺は地面にうつ伏せに倒れたスケルトンの後頭部を、靴底で踏み潰し、粉砕する。バリンという、気持ちの良い音が迷宮にこだまする。

「ふむ、ひと段落だ。結構な数のスケルトンを倒したな」

「うん。38体倒したよ」

「かなりの数だな。レベルアップも期待できそうだ」

 4階層の魔獣は基本的にスケルトンやゾンビといった人型だ。アタックドッグのような四足の獣や、スライムのような不定形の魔獣よりもよほど戦いやすい。

 スケルトンは剣や棒を振り回して攻撃してくるから、練習したパリィの最初の実戦相手としては申し分のない敵ではある。

「アッシュ。ほら、例のアレ、決めゼリフ!」

「スケルトンどもは百叩きだ」

 俺はガストンの書いたマップを確認しつつ迷宮を進む。道中のスケルトンやゾンビの攻撃はパリィで弾き、メイスで頭を破壊しながら迷宮を最短ルートでつき進む。

「これがダイアモンドナイツたちの骨だな」

「うん。この数、まちがいないね」

 テレポーターで壁にブチ込まれて即死した冒険者たちのキレイな骨が床に散らばっていた。肉とか内蔵とかは迷宮に吸収されるので、絵的なグロ感はほぼない。

 俺は頑丈な麻袋にダイアモンドナイツの骨を集めてポイポイと放り込む。うっかり骨を取りそこねたりしたらまずいので、まじめにひろった。

「これで全部だ。帰るか」

「だねっ」

 無数の小さなコウモリが集まり一つの形になり、人型になる。いかにも高貴そうな黒服をまとった金髪の男が現れる。


「先制攻撃だ〈ディスペル〉」

「ぐあああああぁッッ!!」

「ならばもう一回〈ディスペル〉」

「ぎぃやぁああああッッ!!」


 二度のディスペルで死なないとは、なかなか強力なアンデッドのようだ。残数は4発しかない、魔法耐性を持つ相手ならメイスで殴るしかない。俺はメイスを構える。


「ストップ! タイム! いや、ちょっ、ちょっと待って、……マジでタンマ! ちょっとだけ待って。その威力のディスペル、闇の王たる我でもマジでヤバいから! あと、メイスもやめて。まずは、話しあおうよ」

 言葉を話せる魔獣とは珍しい。かなり高位の魔獣のようだ。両手を挙げて降参のポーズを取っている。信仰値60を超える俺のディスペルを食らって倒れないとは、かなりの強敵だ。まずは話を聞いてみるか。

「わかった」

「そ、そうか、それは助かる。我はヴァンパイアロード、迷宮の王の片腕だ」

 ヴァンパイアロード。迷宮の王の腹心にしてアンデッドたちの王。千年の時を生きる不死王。だが、そのような伝説級の魔獣がなぜ4階層に居るのだろうか?

「なぜ、ヴァンパイアロードがここに居る」

「いやね。我、サキュバスたちから相談をうけちゃったんだよね。ひどいことをする冒険者が居るからなんとかして欲しいって、凄い熱心に頼まれちゃってね」

「サキュバスって、あのサキュバスか?」

「うん、そうなんだ。我ってさ、サキュバスとか知性を持った魔獣たちの相談とかも受けてるんだよ。まあ、部下の愚痴を聞く上司みたいな感じだよね」

「大変ですね」

「ありがとう。そうなんだよ。でさ、最近あんまりにも常識のない冒険者が居るって聞いてさこのフロアに来たんだよね」

 闇の王も大変だ。

「ところで、貴君の名は? たった二人で4階層を危なげなく攻略するとは、なかなかやるね。高レベルの司教といったところかな?」

「司教のアッシュだ」

「そうか。で、申し訳ないんだけどさ、貴君にお願いしたいことがあるんだ。聞いてもらえるだろうか?」

「話を聞いてから判断しよう」

「そうだね、それも一理あるね。貴君は、ダイアモンドなんちゃらとかってパーティー知ってる?」

「まぁ一応」

「そう、よかった。なら話がはやいね。ちょっとね、ダイアモンドなんちゃらの聖騎士とニンジャが、サキュバスにひどいことをしてるって聞いてさ。我、ここに来たんだよね」

「吸血鬼の眷属殺しか?」

「違う違う。我は闇の王だし、そういうことでは怒らないよ。別に眷属とか仲間とかを殺されても我、文句言わないし」

「そうなんですか?」

「まぁね。だって、我らってさ、お互い殺し合う関係なわけじゃん。そういう意味ではお互い殺されても文句言えないし、文句言うのも何か筋違いって気がするじゃん? でもね、まっ限度があるよね。さすがに我もね、カチンときちゃった」

「何をやらかしたんですか」

「サキュバス側のプライバシーもあるから、まぁ詳細は伏せるけど、ダイアモンドなんちゃらの聖騎士とニンジャが嫌がるサキュバスにレベルドレインを強制させまくってたんだってさ。まったくひどい話だよね?」

「ですね」

 ……。一体何やらかしたのやら。

「分かってもらって助かるよ。そじゃ、この護符をソイツらに渡して欲しい。この護符、サキュバスを遠ざける効果があるから。具体的にはサキュバスの20メートル以内に近づくと、アラームがなり響く呪いだね」

「でも、彼らが装備するとは限らないですよ」

 
 ガストンは別として、悪ニンジャの方の危険性は低いだろう。悪ニンジャは地獄の監獄のようなボッタクリ商店で無償奉仕という名の、奴隷労働をさせられている。

 悪ニンジャが迷宮に潜ろうとすれば守衛に追い返されるし、そもそもギルドの監獄よりセキュリティが厳しい商店の〈寮〉から脱獄するのは不可能だろう。

 商店の寮は悪ニンジャが全盛期の能力を持っていたとしても実力で突破不可能なほどの異常な堅牢性を持った寮らしい。上長の許可が無いと外にすら出られない。
 
 それに、彼のニンジャボールはすでに俺の蹴りで部位破壊済みだ。もはや悪さはできないだろう。

 まあ、ヴァンパイアロードからの頼みでもあるし、面会かなんかで悪ニンジャに会えたら護符は渡しておこう。

「それは大丈夫。一度でも手で触れれば永久に効果があるような術式を施してあるから。手に持たせればオッケー」

「わかりました」

「悪いね。本当は我が自らの手で殺したい気持ちはあるんだけど、闇の王たる我が直接手を下すってのはさすがにね。それに、ヴァンパイアロードが四階に現れたって広まるとまずいでしょ? ギルドとか大騒ぎして迷宮を閉ざしちゃうし」

「ですね」

「じゃ、これ前払いのお礼。かなり良いアイテムだよ」



 名称:アミュレット
 解説:レベルドレイン、石化、麻痺を無効化し、体力を少しずつ回復させる首飾り



「これ、もらって良いんですか? なんか、凄そうなアイテムですが」

「うん、あげるよ。元の魔除けのアミュレットの力が強すぎてヤバかったから、100分割して作ったヤツの1つだ。もちろんそれでも効果は、かなりの物だと思うけどね」

「ありがとうございます」

「うむ。もっと良いアイテムが欲しければ、頑張って我の部屋に来るといい。その時は、貴君を超一流の冒険者と認め、その時は本気の我の力をお見せしよう。では」

 ヴァンパイアロードは無数の小さなコウモリに变化し消え去った。

「ステラ、これやる」

 俺はヴァンパイアロードからもらったアミュレットをステラに渡す。

「えっ、いいのっ?!」

「うむ。効果を見る限り、体力のある俺よりステラが付けていた方が役に立ちそうだ。もしよければ使ってくれ」

「ありがとうアッシュ」

 ハグされた。

「うむ」

 常時体力回復は良いと思うのだが、俺は体力が高いからそこまで必要なさそうだ。あと、このアミュレットはデザインが女物っぽい。

 一応は男女兼用を意識して作られてるっぽいのだが、ちょっと綺麗過ぎる。こういう装飾品はステラが身につけた方が良いだろう。ハグされたし。

「じゃ、帰るか」

「そうだねっ!」

 ダイアモンドナイツの骨を回収した俺たちは、立ちふさがるアンデッドの群れをディスペルとメイスでケチらしながら昇降機に乗り、帰路につくのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...