《完結》隠れヤンデレ奴隷が契約解除してくれません!!

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小さな街の使えない子 sideアルル

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アルルの話が始まります。
少し暗いお話になるかも、、??
番外編としてお楽しみください。
アルルの視点でステラとの出会いやステラとリリウムが離れていた期間を書いてみました。
何話か続きます!






僕はハルバニア王国の小さな街の平凡な家で生まれた。

決して裕福ではないけれど優しい両親が営む薬屋を手伝いながら平和に暮らしいていた。

この国の子供は7歳になると魔法鑑定を受ける。

鑑定魔法を持つ魔法師様たちが一人一人見てくださるのだ。

「アルルくんは、、残念ながら魔力を持っていないみたいですね。」

僕の結果は残念だけど、、魔力を持っていなかったみたいだ。

「ふふっ!アルル大丈夫よ!!
あんたみたいななんにもできない子は私の言うことさえ聞いてればいいの!」

隣で魔法鑑定を終えた幼馴染のハンナが話しかけてきた。

何にもできない子かぁ、、。 

ちょっと傷つくけど、、ハンナの言うことはいつも正しかった。

「そうだね。ハンナは魔力どのくらいあったの?」

「ふふっ!
今日見た子達の中で一番だったらしいわ!」

ハンナの自信満々な顔がお日様に照らされて眩しかった。

平民でもみんな簡単な魔法はできる。

王族や貴族はとても大きな魔力をもって生まれるらしい。

少し羨ましいな。

魔力がない僕みたいな子はみんなに迷惑をかけてしまう。

そうならないように僕がやれることは一生懸命やらなくちゃ。

魔力がないからといって街の子達から少しいじめられながらも僕はなんだかんだ元気に過ごしていた。

小さな薬屋はいつのまにか診療所になって僕は患者さんを見ることが多くなった。

みんな元気になってほしくて一生懸命働いた。

働いていると大きなハンナの声が響いた。

「アルル!何やってるの!
早く私の家の薪を割りにきなさいよ!
本当に使えないんだから。」

「ハンナ。ちょっと待ってね。
このゴンおじいさんを診てからじゃないと、、。」

「そんなことより私の家が先よ!
本当にバカなんだから、、。
私の言うことさえ聞いてればいいって言ったでしょ!!!」

「アルルくん、さきにハンナちゃんを手伝ってやりなさい。」

「すいません、、。」

ハンナの家は父親がいない。

そんな中で頑張るハンナの家を僕はすごいと思う。

だから少しでも手伝いたいけど、、、さっきみたいに無理やり連れてこられるのは、、と思っても言えなかった。

ハンナだしなぁ、、。

ハンナやお客さんに揉まれながら慌ただしく時間が過ぎていく。

夜はこっそりとお小遣いで買った本を読むのだ。

『魔法指導書』

魔力がないと言われても僕は諦めたくなかった。

毎日こっそり練習したけどやっぱり魔法は出ない。

でももしかたら、、なんて思ってしまうのだ。

魔法の簡単な属性一覧が付いていた。

属性とか関係ない創造魔法が一番高度でこれには膨大な魔力と発想力がいるらしい。

自分で魔法を作るなんて、、いいなと妄想だけで笑顔になってしまった。

光魔法、、、、。

とても希少な魔法で、、、癒す力と、、攻撃力どっちも持ってるんだ。

すごいなこの魔法。

僕が魔法を使うなら人を癒してみたい。

光魔法で傷ついた人を癒す。

とても素敵だな。

光魔法が使えますように。

そんなことを願いながら眠るのがいつのまにか日常になっていた。



平和な暮らしは長く続かなかった。

その日は街のみんなが騒がしくて何が起こったかわからなかった。

よく診療所に来るゴンおじいさんに話を聞いてみた。

「あぁ、アルルくん。
まだ知らなかったのか。
戦争がもうすぐ始まると王都からお知らせが届いたらしい。
君も、、戦争がひどくなったら戦地に駆り出されるかもしれんな。」

戦争、、。

昔の人から聞いたことがある。

人々が殺し合うんだって。

たくさんの人が傷つくだろう。

なんで戦争なんてするんだろう?

そんな疑問の答えなんて誰も知らない。

僕たちは何もかもわからないまま戦争が始まっていった。

最初はあまり何も変わらなかった。

ここは田舎だから被害が少ないと言うか、、あんまりなくて普段と変わらなかった。

ただ街の中でも若い男が集められて連れて行かれた。

僕も収集がかかっていこうとした。

「アルルもしかしてあんたも収集かけられたの?
あんたみたいな外見じゃすぐ追い出されるわね!」

ハンナが僕をみて言い放つ。

そんなことないって言おうとしたけど、、。

「その外見は、、本当に男か?
華奢だし、、、女に見えるが?」

収集場で偉い人?から声をかけられた。

「僕はおーー」

「すいません。こいつは女です。
ほら、、国のために戦いたいって言うこと聞かなくて。」

ゴンおじいさんの孫で俺と仲良くしてくれていたカイトお兄さんが口を出した。

「そうか。
お前は帰りなさい。
ここは女が来るとこじゃない。」

俺は追い出されてしまった。

やっぱりハンナの言うことはいつも正しかった。

去り際にカイトお兄さんに耳元で囁かれた。

「街のみんなを頼む。」

そうだ。

僕がみんなを守らなくちゃ。

そう心に決めた。

街の若い男は僕だけになってしまった。

みんな僕を頼ってくれると思ったけど実際はそうではなかった。

「逃げ出してきたんじゃない?
ほら、、魔力もないし、、。
あの細い体。
私たち女より女みたいじゃない?」

「そうよねぇ。
本当に使えないわ。」

みんなの声が聞こえて悲しくなる。

「あ、いた!
アルルこっち!」

相変わらずハンナだけが僕に手伝いを頼む。

戦争はだんだんと酷くなっていって、、街も戦争の被害を受けた。

火魔法が空から落ちきて危険だし、、たくさんの魔法が攻撃的に使われた残りが街にも被害を出したのだ。

子供や高齢者はさらに田舎へと逃げていった。
両親もそれについていってしまった。

僕は男だし、カイトお兄さんと約束したからこの街に残った。

それでもこの街の被害はまだマシな方らしくて、、多くの傷ついた兵士たちが治療のため運ばれてくる。

街で数少ない診療所の僕の家のところにもたくさんの兵士たちが運ばれてきた。

これを僕1人で、、治療するのか?

お願いします、、って言われたけど流石に無理だ。

魔力がないから魔法が使えなくてただでさえ手際が悪いのに。

いつもの患者さんじゃなくてここにいるのは兵士だ。

そんなことを考えていてもさらに運ばれてくるのだ。

「この人!お願いします!!!」

「は、はい。」

運ばれてきた人をチラリと見て息を呑んだ。

みんな見たこともないくらい傷ついていると思ったけど、、この人、、、片腕がなかった。

血だらけだった。

みんなみんな傷ついてる。

苦しそうな声をだす。

僕が、、、僕が魔法を使えたら、、、何か変わっただろうか?

光魔法があったら、、、あの本で読んだみたいに、、一気にみんなを癒せるのに。

神様、、、。

僕に光魔法があればいいのに!!

みんなを癒したい!!!!!

ぎゅっと目を瞑って願った瞬間、手から暖かな光がばっと放たれた。

「な、なにこれ、、、、。」

何もわからないまま光が大きくなる。

どんどん体の中から何かが抜けていくのがわかる。

「まずいかも、、、。」

視界が少しずつ暗くなっていく。

視界の隅であの片腕のない兵士の腕が何故か再生されてるのを見かけた。

幻覚、、、?

わからない、、けど、、、。

もう無理だ。

視界は完全に真っ暗になってしまった。
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