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第三章 盗賊の腹の中
ルートC
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緊迫の走る中、最初に動いたのはアルクス、彼のみが剣を持っているこの機を逃す手は無い
しかし、ファングには操作魔法がある、がファングは剣を止める事は可能だが人間等の生物は操作は出来ない
そこを利用する、剣を止められても手でファングを触れれば魔法は発動しアルクスはこの勝負に勝てる
手をファングに伸ばすアルクス、ファングも勿論触れられれば終わりだと分かっている、だから身体を仰け反らせて何とか回避する
が攻撃はまだ止まない、後二、三秒有れば手が届いてしまうだろう左手でアルクスの左手を弾く、弾いた一瞬ジュッという音がして左手の手袋の表面が溶けてしまう、そして次の瞬間アルクスの背中に何かが刺さる、大きさからいって凍った草の破片では無い……そう、ファングの溶かされ折れた剣の先の部分、それがまだ溶かされず残っていた。
「これなら、外れねぇ」
「ぐっ!?」
剣の先はアルクスの背中、胸部分に命中、深さも十分刺さっている、一般の人間なら此処で良くて戦闘不能といった所だが
アルクスは倒れず剣が刺さったままファングに歩み寄って来る
「まだ、動けるのかよ……」
「伊達に……騎士やってたんじゃ……ないぜ?」
口から血を吐き、胸からも血が流れて来る
「もう、アンタの負けだ。諦めろよ」
「ハッ! 御免だ、どちらか死ぬまでやろうぜ!」
アルクスがファングに向かって走り出す。
がそこでアルクスの足にナイフが刺さる、倒れるアルクス、動揺が走る会場
「な、なんだ!?」
「き、奇襲?」
ナイフは葉が生い茂る木の上から飛んで来た
「死なれちゃ困るんだよ」
と言う声が聞こえその声の主が木から降りて来る、男は黒服を着た黒髪の男、背には銀髪の少女を背負っている
「あ? お前……来てたのか?」
「お、お前、ぱ、パパを……!」
少女の眼と表情には確かな怒りが籠っている
「ご愁傷様だったな」
「殺して……やる」
ジョンが「ほらよ」とナイフをジェシカに渡す。
「な、何をしている!」
「何って……復讐のチャンスが来たのさ」
ジェシカを止めようとするナサル、だがジョンに食い止められ片手で首を絞められる
「き、貴様……!」
「おいおい、余計な事をするなよ、したら殺す……これは脅しじゃない」
ナサルを木に叩きつけ、ナイフを両手に持つジョン、ジェシカを守る様に周りを威嚇しながらジェシカと共にアルクスに近付く
「お前等、手出すなよ」
アルクスは部下にそう命令する
動揺しているファングを追い抜かし、アルクスの目の前まで来てジェシカはナイフを振り上げる
「ファング! 悪いな、最後はお前じゃねぇみたいだ」
「嬢ちゃん!! 止せ!!!」
「そんな事して何になる!」
ナサルそれに我に返ったファングがジェシカを止めようと行動する、が遅い、ナイフは既にアルクスの喉の元に行き着いていた。
アルクスは笑顔そのままに絶命する、苦しむ事も無く即死であった。
それを見て絶句する騎士二人、沈黙する会場
「で? どうする? お前等は戦わないのか? 俺は準備出来てるぜ」
ジョンが盗賊達に向かって言う
「……さっきの決闘はお前の乱入の所為で無しって事になったんだよな?」
「なら、俺達の自殺の話も無しって事だな」
盗賊達は微笑みを浮かべる
「そういう事になるだろうな、じゃあ、やるか、これからは俺達がこの会場を盛り上げようぜ! お前等二人共はジェシカを連れて行け、手を出すなよ、これからは俺の出番だ」
そこから始まったのは一人対二十人の戦い、彼等を見守る観客は誰も居ない、彼らが死んでも誰も悲しまないだろう、喜ぶ人間の方が多い、そういう奴等の戦い
盗賊は次々とナイフの餌食になる、時には斬られ時には投げられる、魔法や飛び道具を使っても避けられるか攻撃する前に攻撃される
そうして徐々に数が減って行く、五人、四人、三人、二人そして一人……その一人は顔を殴られ床に伏せる
「じゃあ、ジェシカ、お前の出番だ」
「え?」
ジョンが何を言っているのか最初は理解出来なかったジェシカ、暫くしてその意味を理解する
盗賊達は死んでいない、ジョンは殺さなかったのだ。ただ戦闘不能にしただけ
そして彼等に止めを刺せとジョンは言っているのだ。
「何を……考えている!?」
「何って、彼女のお手伝いさ」
「お前、どうにかしてるってもんじゃ無いぜ……同じだこいつ等と、アンタ狂ってる!」
「何とでも言えよ、ジェシカ、どうする?」
ジェシカの顔にはさっきまでアルクスを殺すまでにあった怒りは消え今は涙を浮かべている
「もう……ヤダ、もういい」
ジェシカは限界だった。ナイフを刺し、血が溢れる、あの感触を味わうのは二度と御免だとあの温かみを感じるのは嫌だとそう思っていた。復讐の二文字は頭から飛んでいた。
そんなジェシカを力強く抱きしめるナサル
「あぁ、そう、まぁいい、俺はこいつ等に止めを刺してるからお前等は牢屋の奴等を助けて先に行ってろ、見たくないだろ?」
そしてこの盗賊達の宴は終わる、そしてその宴は二度と開かれる事は無いだろう
屋敷に帰って来たのは次の夜の事、最初に彼等を迎えたのはローラ
「君達が盗賊の元に向かった。というのは知ってるよ、それより職務も責任も放棄して許可も無く君達は盗賊の元に行った訳だよね? どうなるか……分かってるよね?」
ローラは笑顔だが目は笑っていない
「どうなるんだ? 楽しみで仕方がないな」
いつもの調子で返すジョンだが他の三人は俯き何も話さない
そんな三人を不審に思い聞く
「何があったの?」
「俺が説明する」
「ジョン、そんな事をしなくていい、私が説明する、だからジョン……今は何処かに行っててくれ、悪いが今はキミの顔を見ていたくないんだ」
とナサルが言う、表情は見えないがとても愉快には見えない
「三人が何も話さないのはジョン君が原因なんだね?」
「ご名答、全員俺にドン引きしちまってな」
ローラは溜息をつき
「いいよ、じゃ処罰が決まったら連絡するから、部屋で待っていてね、勿論外に出る事は許可しないよ」
「はいはい」
と言いジョンは部屋に戻る為屋敷に向かい、部屋に戻る
部屋で血だらけのナイフに服を洗う為木製のバケツに水を入れ清掃する
ワイシャツに付いた血痕は中々落ちず苦戦していると
扉の前に誰か立つ
「誰ですか?」
「わ、私よ」
マリアである、ジョンは服を血が見えないように着て扉を開け、マリアに挨拶をする
「どうも、帰って来ましたよ」
「えぇ……ナサルから話は聞いてるわ、お父さんの事……もう手遅れだったって」
「残念ながらね」
マリアは不安そうに自分の右腕を左手で掴み
「ナサルは話してくれなかったけど向こうで何かあったの? 物凄く深刻そうにしていたわ」
「聞きたいですか?」
「……えぇ、聞かせて」
「残酷な話になりますがそれでも聞きたいですか?」
「くどいわ」
「じゃあ此処で立ち話もなんなんで部屋にどうぞ」
「えぇ、お邪魔するわ」
マリアとジョンは部屋に入り、ジョンは椅子にマリアはベッドに座る
「ナサルから何処まで聞きましたか?」
「えっと、お父さんが助からなかったとしか聞いてないわ、それ以外は話してくれないの」
ナサルの配慮でナサルは全てを話さなかった。ジョンはその配慮を全て無にして全てを話す。
話が終わった時にはマリアの表情は青ざめ身体は震える
「……その話、本当なの?」
「えぇ、勿論」
「そう、なの……」
「それよりマリアお嬢様、ジェシカが今何処に居るか知りませんか?」
「私の部屋に居るわ」
「ふぅん」
マリアそれを聞いた後、気分を悪そうにして部屋から出て行く、それを見送るジョン
そしてジョンはローラの言い付けを破り部屋を出る、ジェシカに会う為に
その頃マリアの部屋ではジェシカがマリアのベッドの上に座っている
そしてマリアが部屋に戻って来る、マリアは部屋に戻ると同時にジェシカと目が合うが気まずく目を逸らす。
マリアはジェシカの隣に座って、ジェシカの様子を伺う、ジェシカは魂が抜けたかの様に生気が無く泣くでもなくずっと俯いている
そんな彼女に声を掛ける事も出来ず、ただ黙って時が過ぎる
「あ、あぁ、そうだ! スープを持ってくるわね、温かい物でも飲めば気が休まるかもしれない」
と無理矢理明るく振る舞い「待ってて」と言い部屋を出て行く
そんな言葉にも無反応を返すジェシカ
マリアと入れ替わりにジョンが部屋に入って来る
「よぉ、お元気?」
反応を返さない
「無視か? 酷いな」
一切の配慮も無く隣に座るジョン
「で? どうだった? 殺した気分は?」
「……」
「言っただろ、お前には向かないってな」
「でも……私はやらなくちゃいけなかったの」
「復讐をしろと誰かに言われたのか?」
首を振るジェシカ
「父親がそれを望んでいると?」
「……」
「別に俺は父親はそんな事望んでないなんて事は言わないさ、死人に口無し、何を望んで死んでいったかなんて俺には分からん」
「じゃあ、余計な事を言わないで……」
「だがな、もしお前の父親がそれを望んでいたとしても、お前がそれに素直に従う必要は無いだろ、お前は人殺しなんてしたくなかったハズだそれを捻じ曲げてそのあるかも分からない父の意思に従う必要はあったのか?」
「あった……よ」
そう言ったジェシカの眼をジッと見るジョン、そして笑い言う
「なら良い、で? これからどうする? 失意に任せて自ら命を絶つか生きるか? お前の自由だ。好きにすると良い、じゃあな」
と言いジョンは部屋から出て行こうとする
「……待って」
「何だ?」
「私は人を殺した。なら私もアイツ等と一緒なのかな?」
「お前があの男を殺した時スカッとしたか? 殺して良かったと心の底から思ったか? またやろうと思ったか?」
首を振るジェシカ
「なら全くの別物だ。同じ人殺しにも種類が多様にある、一括りにはしない事だ」
じゃあ、もう用はないみたいだなと言いジョンは出て行く
ジェシカは思った。マリアが帰って来たら今までの事を謝ろうと彼女にはさっきまで無かった心の余裕が出来ていた。
死ぬのはまだ早い、そう思えていた。
しかし、ファングには操作魔法がある、がファングは剣を止める事は可能だが人間等の生物は操作は出来ない
そこを利用する、剣を止められても手でファングを触れれば魔法は発動しアルクスはこの勝負に勝てる
手をファングに伸ばすアルクス、ファングも勿論触れられれば終わりだと分かっている、だから身体を仰け反らせて何とか回避する
が攻撃はまだ止まない、後二、三秒有れば手が届いてしまうだろう左手でアルクスの左手を弾く、弾いた一瞬ジュッという音がして左手の手袋の表面が溶けてしまう、そして次の瞬間アルクスの背中に何かが刺さる、大きさからいって凍った草の破片では無い……そう、ファングの溶かされ折れた剣の先の部分、それがまだ溶かされず残っていた。
「これなら、外れねぇ」
「ぐっ!?」
剣の先はアルクスの背中、胸部分に命中、深さも十分刺さっている、一般の人間なら此処で良くて戦闘不能といった所だが
アルクスは倒れず剣が刺さったままファングに歩み寄って来る
「まだ、動けるのかよ……」
「伊達に……騎士やってたんじゃ……ないぜ?」
口から血を吐き、胸からも血が流れて来る
「もう、アンタの負けだ。諦めろよ」
「ハッ! 御免だ、どちらか死ぬまでやろうぜ!」
アルクスがファングに向かって走り出す。
がそこでアルクスの足にナイフが刺さる、倒れるアルクス、動揺が走る会場
「な、なんだ!?」
「き、奇襲?」
ナイフは葉が生い茂る木の上から飛んで来た
「死なれちゃ困るんだよ」
と言う声が聞こえその声の主が木から降りて来る、男は黒服を着た黒髪の男、背には銀髪の少女を背負っている
「あ? お前……来てたのか?」
「お、お前、ぱ、パパを……!」
少女の眼と表情には確かな怒りが籠っている
「ご愁傷様だったな」
「殺して……やる」
ジョンが「ほらよ」とナイフをジェシカに渡す。
「な、何をしている!」
「何って……復讐のチャンスが来たのさ」
ジェシカを止めようとするナサル、だがジョンに食い止められ片手で首を絞められる
「き、貴様……!」
「おいおい、余計な事をするなよ、したら殺す……これは脅しじゃない」
ナサルを木に叩きつけ、ナイフを両手に持つジョン、ジェシカを守る様に周りを威嚇しながらジェシカと共にアルクスに近付く
「お前等、手出すなよ」
アルクスは部下にそう命令する
動揺しているファングを追い抜かし、アルクスの目の前まで来てジェシカはナイフを振り上げる
「ファング! 悪いな、最後はお前じゃねぇみたいだ」
「嬢ちゃん!! 止せ!!!」
「そんな事して何になる!」
ナサルそれに我に返ったファングがジェシカを止めようと行動する、が遅い、ナイフは既にアルクスの喉の元に行き着いていた。
アルクスは笑顔そのままに絶命する、苦しむ事も無く即死であった。
それを見て絶句する騎士二人、沈黙する会場
「で? どうする? お前等は戦わないのか? 俺は準備出来てるぜ」
ジョンが盗賊達に向かって言う
「……さっきの決闘はお前の乱入の所為で無しって事になったんだよな?」
「なら、俺達の自殺の話も無しって事だな」
盗賊達は微笑みを浮かべる
「そういう事になるだろうな、じゃあ、やるか、これからは俺達がこの会場を盛り上げようぜ! お前等二人共はジェシカを連れて行け、手を出すなよ、これからは俺の出番だ」
そこから始まったのは一人対二十人の戦い、彼等を見守る観客は誰も居ない、彼らが死んでも誰も悲しまないだろう、喜ぶ人間の方が多い、そういう奴等の戦い
盗賊は次々とナイフの餌食になる、時には斬られ時には投げられる、魔法や飛び道具を使っても避けられるか攻撃する前に攻撃される
そうして徐々に数が減って行く、五人、四人、三人、二人そして一人……その一人は顔を殴られ床に伏せる
「じゃあ、ジェシカ、お前の出番だ」
「え?」
ジョンが何を言っているのか最初は理解出来なかったジェシカ、暫くしてその意味を理解する
盗賊達は死んでいない、ジョンは殺さなかったのだ。ただ戦闘不能にしただけ
そして彼等に止めを刺せとジョンは言っているのだ。
「何を……考えている!?」
「何って、彼女のお手伝いさ」
「お前、どうにかしてるってもんじゃ無いぜ……同じだこいつ等と、アンタ狂ってる!」
「何とでも言えよ、ジェシカ、どうする?」
ジェシカの顔にはさっきまでアルクスを殺すまでにあった怒りは消え今は涙を浮かべている
「もう……ヤダ、もういい」
ジェシカは限界だった。ナイフを刺し、血が溢れる、あの感触を味わうのは二度と御免だとあの温かみを感じるのは嫌だとそう思っていた。復讐の二文字は頭から飛んでいた。
そんなジェシカを力強く抱きしめるナサル
「あぁ、そう、まぁいい、俺はこいつ等に止めを刺してるからお前等は牢屋の奴等を助けて先に行ってろ、見たくないだろ?」
そしてこの盗賊達の宴は終わる、そしてその宴は二度と開かれる事は無いだろう
屋敷に帰って来たのは次の夜の事、最初に彼等を迎えたのはローラ
「君達が盗賊の元に向かった。というのは知ってるよ、それより職務も責任も放棄して許可も無く君達は盗賊の元に行った訳だよね? どうなるか……分かってるよね?」
ローラは笑顔だが目は笑っていない
「どうなるんだ? 楽しみで仕方がないな」
いつもの調子で返すジョンだが他の三人は俯き何も話さない
そんな三人を不審に思い聞く
「何があったの?」
「俺が説明する」
「ジョン、そんな事をしなくていい、私が説明する、だからジョン……今は何処かに行っててくれ、悪いが今はキミの顔を見ていたくないんだ」
とナサルが言う、表情は見えないがとても愉快には見えない
「三人が何も話さないのはジョン君が原因なんだね?」
「ご名答、全員俺にドン引きしちまってな」
ローラは溜息をつき
「いいよ、じゃ処罰が決まったら連絡するから、部屋で待っていてね、勿論外に出る事は許可しないよ」
「はいはい」
と言いジョンは部屋に戻る為屋敷に向かい、部屋に戻る
部屋で血だらけのナイフに服を洗う為木製のバケツに水を入れ清掃する
ワイシャツに付いた血痕は中々落ちず苦戦していると
扉の前に誰か立つ
「誰ですか?」
「わ、私よ」
マリアである、ジョンは服を血が見えないように着て扉を開け、マリアに挨拶をする
「どうも、帰って来ましたよ」
「えぇ……ナサルから話は聞いてるわ、お父さんの事……もう手遅れだったって」
「残念ながらね」
マリアは不安そうに自分の右腕を左手で掴み
「ナサルは話してくれなかったけど向こうで何かあったの? 物凄く深刻そうにしていたわ」
「聞きたいですか?」
「……えぇ、聞かせて」
「残酷な話になりますがそれでも聞きたいですか?」
「くどいわ」
「じゃあ此処で立ち話もなんなんで部屋にどうぞ」
「えぇ、お邪魔するわ」
マリアとジョンは部屋に入り、ジョンは椅子にマリアはベッドに座る
「ナサルから何処まで聞きましたか?」
「えっと、お父さんが助からなかったとしか聞いてないわ、それ以外は話してくれないの」
ナサルの配慮でナサルは全てを話さなかった。ジョンはその配慮を全て無にして全てを話す。
話が終わった時にはマリアの表情は青ざめ身体は震える
「……その話、本当なの?」
「えぇ、勿論」
「そう、なの……」
「それよりマリアお嬢様、ジェシカが今何処に居るか知りませんか?」
「私の部屋に居るわ」
「ふぅん」
マリアそれを聞いた後、気分を悪そうにして部屋から出て行く、それを見送るジョン
そしてジョンはローラの言い付けを破り部屋を出る、ジェシカに会う為に
その頃マリアの部屋ではジェシカがマリアのベッドの上に座っている
そしてマリアが部屋に戻って来る、マリアは部屋に戻ると同時にジェシカと目が合うが気まずく目を逸らす。
マリアはジェシカの隣に座って、ジェシカの様子を伺う、ジェシカは魂が抜けたかの様に生気が無く泣くでもなくずっと俯いている
そんな彼女に声を掛ける事も出来ず、ただ黙って時が過ぎる
「あ、あぁ、そうだ! スープを持ってくるわね、温かい物でも飲めば気が休まるかもしれない」
と無理矢理明るく振る舞い「待ってて」と言い部屋を出て行く
そんな言葉にも無反応を返すジェシカ
マリアと入れ替わりにジョンが部屋に入って来る
「よぉ、お元気?」
反応を返さない
「無視か? 酷いな」
一切の配慮も無く隣に座るジョン
「で? どうだった? 殺した気分は?」
「……」
「言っただろ、お前には向かないってな」
「でも……私はやらなくちゃいけなかったの」
「復讐をしろと誰かに言われたのか?」
首を振るジェシカ
「父親がそれを望んでいると?」
「……」
「別に俺は父親はそんな事望んでないなんて事は言わないさ、死人に口無し、何を望んで死んでいったかなんて俺には分からん」
「じゃあ、余計な事を言わないで……」
「だがな、もしお前の父親がそれを望んでいたとしても、お前がそれに素直に従う必要は無いだろ、お前は人殺しなんてしたくなかったハズだそれを捻じ曲げてそのあるかも分からない父の意思に従う必要はあったのか?」
「あった……よ」
そう言ったジェシカの眼をジッと見るジョン、そして笑い言う
「なら良い、で? これからどうする? 失意に任せて自ら命を絶つか生きるか? お前の自由だ。好きにすると良い、じゃあな」
と言いジョンは部屋から出て行こうとする
「……待って」
「何だ?」
「私は人を殺した。なら私もアイツ等と一緒なのかな?」
「お前があの男を殺した時スカッとしたか? 殺して良かったと心の底から思ったか? またやろうと思ったか?」
首を振るジェシカ
「なら全くの別物だ。同じ人殺しにも種類が多様にある、一括りにはしない事だ」
じゃあ、もう用はないみたいだなと言いジョンは出て行く
ジェシカは思った。マリアが帰って来たら今までの事を謝ろうと彼女にはさっきまで無かった心の余裕が出来ていた。
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