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第二章:新しい日常
⚜️ 27:マナトゥムの墓場
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◤ エルデリア城を出立して、約5時間。城からそう離れてもいない場所に、どうやら重要な場所があるらしい…… ◢
先頭を行くアーシェルが、大きく左に手を振っている。どうやら、そこから左に折れるようだ。
「少しだけ寄り道をしたい。どうしても見せたいものがあってな。——ただ、この先は整地されていない。だから、馬車はここに置いていこうと思う」
「馬車を道に置きっぱなし!? 中の荷物、盗まれたりしない?」
アルフィナが心配そうに馬車の荷台を覗きながら言う。
「王家の紋章が入ってる馬車から盗もうとする奴なんて、そうそういないさ。万一そうなった時は、馬のマナトゥムに蹴散らすよう仕込んである」
ほー……さすがアーシェル。彼に関しては、日を追う毎に私の中の評価が上がってきている。
馬車を停めたこの場所には、これといった目印がない。あえて言うなら、どこにでもあるような岩がゴロゴロしているだけだ。きっとアーシェルは、何度もここを訪れているのだろう。
「ねえ、エイル。あなたはこの先に何があるか知ってるの?」
「いえ……この辺りは私も通ることはありますが、この先に何かあるなんて、聞いたことがありません」
道なき道を15分ほど歩いた頃、小高い丘のような場所に辿り着いた。ここまで近づいて分かったが、丘のある部分が草木で意図的に隠されている。
「この奥に扉がある。みんな手伝ってくれ」
私たちはアーシェルと共に、扉を隠している草木を取り除くと、錆びついた大きな鉄扉が現れた。
「ジルハート、この扉を開けてくれないか。錆びついていて、普通ではなかなか開かん」
ジルハートはOKと言うと、巨大な鉄扉に両手を向けた。その鉄扉は巨大なうえ、かなりの厚みがありそうだ。
ジルハートの唇が小さく動く。きっと、何かしらの呪文を唱えているのだろう。巨大な鉄扉は「ギンッギンッ」と軋みながら、少しずつ左へと動いていく。
「ふう……これくらいでいいか?」
「うーん……まあ、いいだろう。じゃ、中に入ろう。僕についてきてくれ」
アーシェルが、大人一人が入れる程の隙間から、中へと入っていく。私たち残りの3人もあとに続いた。
***
「なっ、なんだここは……」
入口から数メートルは下っただろうか、細く長い通路が現れた。その通路は、まるでSF映画に出てきそうな、ツルッとした薄いグレーの壁で覆われている。このエルデリアでは、まさに異質の雰囲気と言っていい。
「きゃあっ!!」
通路に繋がっている小部屋を覗いたアルフィナが声を上げた。
「なっ、なんなのこれっ!!」
「これが、キミたちに見せたかったもの……壊れたマナトゥムたちだ。——まあ、見た目が人間に近いから、マナトゥムの死体と言ってもいいかもしれん。でも大丈夫だ、奴らは動かん。安心してくれ」
「ア……アーシェル様、い、一体どうやってこの場所を……?」
さすがのエイルも動揺しているようだ。ジルハートはおぞましいものを見るかのように、口元に手を当てている。
「10年ほど前か……この近辺で、同型のマナトゥムが地上で発見されてな。きっと近くにも同じ奴がいるはずだと、極秘裏に捜索を続けていたんだ。そこで見つけたのが、この場所だ」
「そ……その、地上にいたマナトゥムは生きていたの?」
「いや、既に動かなくなっていた。実は今も、我が城の安置所にそいつを保管してある。奴の存在がなかったら、僕はマナトゥムを作ることは出来なかっただろう」
アーシェルは、本物のマナトゥムを参考に、彼独自のマナトゥムを作っていたということか……
「何故、そのマナトゥムは地上に這い上がってきたのでしょうか。文献によると、地上のマナというマナを吸い上げてしまったために、マナトゥムは滅びたと聞いていますが」
「きっと、こいつらは旧型なんだと思う。僕が作っているマナトゥムと同様、自身でマナを吸い上げることが出来ないタイプだ。——逆に何千年もの間、よくマナが残っていたものだと感心したよ」
旧型のマナトゥム……マナトゥムにも、色々な種類があったんだ……
「きゃあっっっ!!」
「今度は何だ、アルフィナ」
「あっ、あいつ、今動いた……」
アルフィナが指さした先に、ピクピクと動いている一体のマナトゥムがいた。
「驚いたな……ここには定期的に来ているが、動いているやつをみるのは初めてだ。ジルハート、エイル! こいつを外に担ぎ出してくれ」
「なっ、何をするつもりだ? アーシェル」
「ククク……それは後で話すとする。さあ、出ようか外に!」
久しぶりに見た、アーシェルのその笑い方。楽しみで仕方がない何かを思いついたに違いない。
***
「この辺りでいいだろう。マナトゥムを置いてくれ」
マナトゥムの墓場を出た私たちは、少し開けた場所へと移動してきた。その中央に置かれたマナトゥムの胸に、アーシェルが手を当てる。
「驚くと思うが、よく聞いてくれ。僕は今から、このマナトゥムにマナを与えようと思う。僕が作っているマナトゥムと、コイツの構造は変わらない。だから、きっと動き出すはずだ」
「アッ、アーシェル、正気なのかっ!?」
「ああ、正気だジルハート。だから、万一の危険性を考えて、この広い場所へとコイツを運んできた。もしコイツが危ない存在だと分かったら、リリア。キミの魔法で吹き飛ばして欲しい」
そのアーシェルの言葉に、皆は言葉を失った。
「出来るな? リリア」
私が頷くと、アーシェルはマナトゥムの胸の上で、紫色の光を放ちだした。
先頭を行くアーシェルが、大きく左に手を振っている。どうやら、そこから左に折れるようだ。
「少しだけ寄り道をしたい。どうしても見せたいものがあってな。——ただ、この先は整地されていない。だから、馬車はここに置いていこうと思う」
「馬車を道に置きっぱなし!? 中の荷物、盗まれたりしない?」
アルフィナが心配そうに馬車の荷台を覗きながら言う。
「王家の紋章が入ってる馬車から盗もうとする奴なんて、そうそういないさ。万一そうなった時は、馬のマナトゥムに蹴散らすよう仕込んである」
ほー……さすがアーシェル。彼に関しては、日を追う毎に私の中の評価が上がってきている。
馬車を停めたこの場所には、これといった目印がない。あえて言うなら、どこにでもあるような岩がゴロゴロしているだけだ。きっとアーシェルは、何度もここを訪れているのだろう。
「ねえ、エイル。あなたはこの先に何があるか知ってるの?」
「いえ……この辺りは私も通ることはありますが、この先に何かあるなんて、聞いたことがありません」
道なき道を15分ほど歩いた頃、小高い丘のような場所に辿り着いた。ここまで近づいて分かったが、丘のある部分が草木で意図的に隠されている。
「この奥に扉がある。みんな手伝ってくれ」
私たちはアーシェルと共に、扉を隠している草木を取り除くと、錆びついた大きな鉄扉が現れた。
「ジルハート、この扉を開けてくれないか。錆びついていて、普通ではなかなか開かん」
ジルハートはOKと言うと、巨大な鉄扉に両手を向けた。その鉄扉は巨大なうえ、かなりの厚みがありそうだ。
ジルハートの唇が小さく動く。きっと、何かしらの呪文を唱えているのだろう。巨大な鉄扉は「ギンッギンッ」と軋みながら、少しずつ左へと動いていく。
「ふう……これくらいでいいか?」
「うーん……まあ、いいだろう。じゃ、中に入ろう。僕についてきてくれ」
アーシェルが、大人一人が入れる程の隙間から、中へと入っていく。私たち残りの3人もあとに続いた。
***
「なっ、なんだここは……」
入口から数メートルは下っただろうか、細く長い通路が現れた。その通路は、まるでSF映画に出てきそうな、ツルッとした薄いグレーの壁で覆われている。このエルデリアでは、まさに異質の雰囲気と言っていい。
「きゃあっ!!」
通路に繋がっている小部屋を覗いたアルフィナが声を上げた。
「なっ、なんなのこれっ!!」
「これが、キミたちに見せたかったもの……壊れたマナトゥムたちだ。——まあ、見た目が人間に近いから、マナトゥムの死体と言ってもいいかもしれん。でも大丈夫だ、奴らは動かん。安心してくれ」
「ア……アーシェル様、い、一体どうやってこの場所を……?」
さすがのエイルも動揺しているようだ。ジルハートはおぞましいものを見るかのように、口元に手を当てている。
「10年ほど前か……この近辺で、同型のマナトゥムが地上で発見されてな。きっと近くにも同じ奴がいるはずだと、極秘裏に捜索を続けていたんだ。そこで見つけたのが、この場所だ」
「そ……その、地上にいたマナトゥムは生きていたの?」
「いや、既に動かなくなっていた。実は今も、我が城の安置所にそいつを保管してある。奴の存在がなかったら、僕はマナトゥムを作ることは出来なかっただろう」
アーシェルは、本物のマナトゥムを参考に、彼独自のマナトゥムを作っていたということか……
「何故、そのマナトゥムは地上に這い上がってきたのでしょうか。文献によると、地上のマナというマナを吸い上げてしまったために、マナトゥムは滅びたと聞いていますが」
「きっと、こいつらは旧型なんだと思う。僕が作っているマナトゥムと同様、自身でマナを吸い上げることが出来ないタイプだ。——逆に何千年もの間、よくマナが残っていたものだと感心したよ」
旧型のマナトゥム……マナトゥムにも、色々な種類があったんだ……
「きゃあっっっ!!」
「今度は何だ、アルフィナ」
「あっ、あいつ、今動いた……」
アルフィナが指さした先に、ピクピクと動いている一体のマナトゥムがいた。
「驚いたな……ここには定期的に来ているが、動いているやつをみるのは初めてだ。ジルハート、エイル! こいつを外に担ぎ出してくれ」
「なっ、何をするつもりだ? アーシェル」
「ククク……それは後で話すとする。さあ、出ようか外に!」
久しぶりに見た、アーシェルのその笑い方。楽しみで仕方がない何かを思いついたに違いない。
***
「この辺りでいいだろう。マナトゥムを置いてくれ」
マナトゥムの墓場を出た私たちは、少し開けた場所へと移動してきた。その中央に置かれたマナトゥムの胸に、アーシェルが手を当てる。
「驚くと思うが、よく聞いてくれ。僕は今から、このマナトゥムにマナを与えようと思う。僕が作っているマナトゥムと、コイツの構造は変わらない。だから、きっと動き出すはずだ」
「アッ、アーシェル、正気なのかっ!?」
「ああ、正気だジルハート。だから、万一の危険性を考えて、この広い場所へとコイツを運んできた。もしコイツが危ない存在だと分かったら、リリア。キミの魔法で吹き飛ばして欲しい」
そのアーシェルの言葉に、皆は言葉を失った。
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私が頷くと、アーシェルはマナトゥムの胸の上で、紫色の光を放ちだした。
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