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第1章 異世界暮らし 山の家
第41話 町での仕事 アイシャ
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昨日ユヅキさんから瑠璃色の綺麗な髪留めをもらった。こんなプレゼントは小さな頃にお父さんからもらったお人形さん以来かな。嬉しくて何度も手に取って見つめてしまう。
朝食の時、髪留めを着けていったら、ちょっとからかわれて恥ずかしい。
大きめのピンで髪をしっかり止められるから、狩りの時に着けていても大丈夫みたいだしずっと着けておこう。
今日は北の山で大きな鹿を狙う。
ユヅキさんの作った小さな弓も中々のものね。1本の矢だけで倒している。こんな大物を狩ったのは私も初めてだわ。
その後、小さな獲物を狩ったところでもう夕暮れ。最近の狩りは調子がいいわね。ユヅキさんと生活するには充分な量だわ。
翌日、ユヅキさんはギルドの歓迎会で町に降りて行った。
今晩の夕食はひとり……。
ユヅキさんの町での仕事は順調みたいね。お金は要らないって言ったのに、好きな物でも買うようにとお金を渡してくれた。でも、お金より一緒に居てくれる方が嬉しいんだけどな。
明日会えるからいいか。カリンも休みだし、商店街での買い物とかも行けるし楽しみね。寝室にひとりは少し寂しいけど、明日の朝も早いしゆっくり眠ろう。
翌日。カリンのお店に行ったら、ユヅキさんはもう来ていた。
「アイシャ、おはよう」と声をかけてくれる。
この日は久しぶりにカリンと一緒に街でいろんなお店を見て回る。
「あれ、アイシャったらこんな大人っぽい下着を買うの?」
「今のが古くなってきたし」
「まさかあいつに見せるため!」
「そ、そんな事ないわよ。私、寝間着も新しいのを買わないと」
そう言って次の店に急ぐ。まあ、寝間着はユヅキさんも見るから、見られて恥ずかしくない可愛い物を選ぶ。
鐘5つが鳴る頃、カリンのお店に戻るとユヅキさんはもう戻ってきている。
「アイシャ、すまない。仕事の話なんだが……」
「明日からって……。狩りがあるじゃない」
そうよ、明日は狩りの予定でしょう? すまなそうに話すユヅキさん。ギルドのお仕事は、狩りの合間にするって約束だったはずよね。
なのに、どうして……。
ユヅキさんは猟師じゃない。町での仕事の方が大事なら、私が邪魔する訳にはいかないわ。
「そうね、ユヅキさんがそっちの方がいいなら、私はそれで……。せっかくの町でのお仕事だものね……」
帰りの山道、あまり言葉を交わすこともなく家に着いた。
夕食も翌朝の朝食も、ユヅキさんは何か話していたけど何を話したのかも覚えていない。
「アイシャ、2日か3日で帰る。じゃあ行ってくるよ」
「ええ、行ってらっしゃい。気をつけて」
と、言うのが精一杯だった。
本当はユヅキさんと一緒に狩りをするはずだったのに、という思いが消えない。
「仕方ないわ。ひとりでもちゃんと狩りをしなくちゃ。私は猟師なんだから」
狩りの準備をして林の中に入っていく。ひとりだと大きな獲物は狩れないからウサギかイノシシを狩るぐらいね。
でも今日狩れたのはウサギが2匹だけだった。前にひとりで狩っていた時より酷い。
もちろんウサギが見つからず捕れない時もある。でも今日はちゃんと見つけたのに矢が当たらない。焦れば焦るほど当たらなくなる。
明日は頑張ろう。ちゃんと狩らなくちゃユヅキさんに笑われてしまうわ。
夕食をひとりで食べる。ユヅキさんがいない部屋は広い。前はそんなことなかったはずなのに……。
今日は場所を変えてみましょう。西の川に近いところはどうかしら。
でもウサギは1匹も見つからなかった。
北の山なら……。鹿と大イノシシは見つけたけどあれは無理ね。
帰りにウサギを1匹だけ狩ることができた。今日はここまでね、家に戻りましょう。
2日間でウサギが3匹はあまりにも酷過ぎるわね。でも明日ユヅキさんが戻ってくれたら……。
そういえばユヅキさんは2日で仕事が終わるかもと言っていた。もしかしたら今日帰って来ているかもしれない。家に急ぎましょう。
「ただいま、ユヅキさ…ん……」
家のドアを開けて中に入ったけど誰もいなかった。夕食を作って食べる頃には、外はもう暗くなっている。
ユヅキさん、今日はもう戻らないわね。またひとりベッドで横になる。
私どうしたのかしら。去年お父さんが亡くなってからずっとひとりで狩りをしてきた。でもこんなに不調になることはなかった。
いえ、亡くなってから1週間ほどは何もできなかったわね。
お父さんがいた頃は、色々教えてもらえて楽しかったな。お父さんは罠の名人だったから、大きな獲物も罠でよく捕まえていた。私も罠の作り方を教えてもらったけど、どこが違うのかあまり捕まえることはできなかった。
それでもお父さんの後を継いで、弓での狩りで生活できるようになっていたはず……。なのに、独りでの狩りがこんなに苦しく感じるなんて思ってもみなかった。
翌日の朝、日が昇ってもすっきり起きれない。それでも今日は毛皮づくりをしないと。今までと同じ、いつもの事をやればいいだけなんだから。
昼過ぎにはウサギ3匹分の毛皮の処理は終わったけど、他の事はやる気が起きない。
今日、ユヅキさんは帰ってくる。でもこれから先は分からない。今の仕事が上手くいけば、町に住むかもしれない。
元々ユヅキさんは、私の所に来るのが目的ではなかったはず。何かをするため遠い国からこの国にやって来て、その途中で私を助けただけなんだから。いずれはここから出て行く。それを止めることなど私にはできないわ。
でも、でも……。
もしもユヅキさんがいなくなったら、私はどうすれば良いのだろう。
ここに残る……、ついて行く……、邪魔だと言われたらどうしよう……。
この国でユヅキさんは充分やっていける。こんな不便な山の中での生活を選ぶわけないわ……私を選ぶことも……。
でも、でも……。
もう外は暗くなっている。今日ユヅキさんは帰ってくるんじゃなかったの?
もう帰ってこない? お父さんみたいにもう……。そんなの嫌だ。大切な人を失うあんな思いはもうしたくない。胸の中の抑えられない思いが瞳から溢れてくる。
急に入り口のドアが開いた。
「アイシャ、ただいま」
帰って来てくれた!
「ユヅキさん、ユヅキさん、ユヅキさん……」
朝食の時、髪留めを着けていったら、ちょっとからかわれて恥ずかしい。
大きめのピンで髪をしっかり止められるから、狩りの時に着けていても大丈夫みたいだしずっと着けておこう。
今日は北の山で大きな鹿を狙う。
ユヅキさんの作った小さな弓も中々のものね。1本の矢だけで倒している。こんな大物を狩ったのは私も初めてだわ。
その後、小さな獲物を狩ったところでもう夕暮れ。最近の狩りは調子がいいわね。ユヅキさんと生活するには充分な量だわ。
翌日、ユヅキさんはギルドの歓迎会で町に降りて行った。
今晩の夕食はひとり……。
ユヅキさんの町での仕事は順調みたいね。お金は要らないって言ったのに、好きな物でも買うようにとお金を渡してくれた。でも、お金より一緒に居てくれる方が嬉しいんだけどな。
明日会えるからいいか。カリンも休みだし、商店街での買い物とかも行けるし楽しみね。寝室にひとりは少し寂しいけど、明日の朝も早いしゆっくり眠ろう。
翌日。カリンのお店に行ったら、ユヅキさんはもう来ていた。
「アイシャ、おはよう」と声をかけてくれる。
この日は久しぶりにカリンと一緒に街でいろんなお店を見て回る。
「あれ、アイシャったらこんな大人っぽい下着を買うの?」
「今のが古くなってきたし」
「まさかあいつに見せるため!」
「そ、そんな事ないわよ。私、寝間着も新しいのを買わないと」
そう言って次の店に急ぐ。まあ、寝間着はユヅキさんも見るから、見られて恥ずかしくない可愛い物を選ぶ。
鐘5つが鳴る頃、カリンのお店に戻るとユヅキさんはもう戻ってきている。
「アイシャ、すまない。仕事の話なんだが……」
「明日からって……。狩りがあるじゃない」
そうよ、明日は狩りの予定でしょう? すまなそうに話すユヅキさん。ギルドのお仕事は、狩りの合間にするって約束だったはずよね。
なのに、どうして……。
ユヅキさんは猟師じゃない。町での仕事の方が大事なら、私が邪魔する訳にはいかないわ。
「そうね、ユヅキさんがそっちの方がいいなら、私はそれで……。せっかくの町でのお仕事だものね……」
帰りの山道、あまり言葉を交わすこともなく家に着いた。
夕食も翌朝の朝食も、ユヅキさんは何か話していたけど何を話したのかも覚えていない。
「アイシャ、2日か3日で帰る。じゃあ行ってくるよ」
「ええ、行ってらっしゃい。気をつけて」
と、言うのが精一杯だった。
本当はユヅキさんと一緒に狩りをするはずだったのに、という思いが消えない。
「仕方ないわ。ひとりでもちゃんと狩りをしなくちゃ。私は猟師なんだから」
狩りの準備をして林の中に入っていく。ひとりだと大きな獲物は狩れないからウサギかイノシシを狩るぐらいね。
でも今日狩れたのはウサギが2匹だけだった。前にひとりで狩っていた時より酷い。
もちろんウサギが見つからず捕れない時もある。でも今日はちゃんと見つけたのに矢が当たらない。焦れば焦るほど当たらなくなる。
明日は頑張ろう。ちゃんと狩らなくちゃユヅキさんに笑われてしまうわ。
夕食をひとりで食べる。ユヅキさんがいない部屋は広い。前はそんなことなかったはずなのに……。
今日は場所を変えてみましょう。西の川に近いところはどうかしら。
でもウサギは1匹も見つからなかった。
北の山なら……。鹿と大イノシシは見つけたけどあれは無理ね。
帰りにウサギを1匹だけ狩ることができた。今日はここまでね、家に戻りましょう。
2日間でウサギが3匹はあまりにも酷過ぎるわね。でも明日ユヅキさんが戻ってくれたら……。
そういえばユヅキさんは2日で仕事が終わるかもと言っていた。もしかしたら今日帰って来ているかもしれない。家に急ぎましょう。
「ただいま、ユヅキさ…ん……」
家のドアを開けて中に入ったけど誰もいなかった。夕食を作って食べる頃には、外はもう暗くなっている。
ユヅキさん、今日はもう戻らないわね。またひとりベッドで横になる。
私どうしたのかしら。去年お父さんが亡くなってからずっとひとりで狩りをしてきた。でもこんなに不調になることはなかった。
いえ、亡くなってから1週間ほどは何もできなかったわね。
お父さんがいた頃は、色々教えてもらえて楽しかったな。お父さんは罠の名人だったから、大きな獲物も罠でよく捕まえていた。私も罠の作り方を教えてもらったけど、どこが違うのかあまり捕まえることはできなかった。
それでもお父さんの後を継いで、弓での狩りで生活できるようになっていたはず……。なのに、独りでの狩りがこんなに苦しく感じるなんて思ってもみなかった。
翌日の朝、日が昇ってもすっきり起きれない。それでも今日は毛皮づくりをしないと。今までと同じ、いつもの事をやればいいだけなんだから。
昼過ぎにはウサギ3匹分の毛皮の処理は終わったけど、他の事はやる気が起きない。
今日、ユヅキさんは帰ってくる。でもこれから先は分からない。今の仕事が上手くいけば、町に住むかもしれない。
元々ユヅキさんは、私の所に来るのが目的ではなかったはず。何かをするため遠い国からこの国にやって来て、その途中で私を助けただけなんだから。いずれはここから出て行く。それを止めることなど私にはできないわ。
でも、でも……。
もしもユヅキさんがいなくなったら、私はどうすれば良いのだろう。
ここに残る……、ついて行く……、邪魔だと言われたらどうしよう……。
この国でユヅキさんは充分やっていける。こんな不便な山の中での生活を選ぶわけないわ……私を選ぶことも……。
でも、でも……。
もう外は暗くなっている。今日ユヅキさんは帰ってくるんじゃなかったの?
もう帰ってこない? お父さんみたいにもう……。そんなの嫌だ。大切な人を失うあんな思いはもうしたくない。胸の中の抑えられない思いが瞳から溢れてくる。
急に入り口のドアが開いた。
「アイシャ、ただいま」
帰って来てくれた!
「ユヅキさん、ユヅキさん、ユヅキさん……」
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