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第4章 アルヘナ動乱
第135話 魔獣試験
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翌日から、ドラゴンであるキイエを飼い馴らしている事を見せるため、町の外で練習をする。東門を出た崖の所なら街道からも遠いし、人に迷惑はかけないだろう。
まず飛行の練習からだ。俺の肩の上に乗ったキイエに餌の肉を見せて、それを空に向かって放り上げる。
キイエは飛び上がって、肉を空中でキャッチしてまた俺の肩に乗ってむしゃむしゃと食べている。
次は離れたアイシャに肉を持ってもらって、こちらに見せる。少しキイエを押さえておいて、合図でアイシャの肉を食べに飛ばせる。
やっぱりキイエは賢いな。こちらの意図した事を、合図やアイコンタクトで理解してくれる。
次に口から炎を吐いて、止めるのを覚えさせるのだが、これは上手く伝わらなかった。止まり木用に作った専用の台の上に乗せたキイエに、口から炎を出すのを身振り手振りで見せるのだが分かってくれない。
「ユヅキ。そんなとこで踊ってないで、私に任せなさい!」
カリンがキイエの前に進み出て正面から睨み合う。突然カリンが杖を取り出し、崖に向かって炎を放ちキイエに見せつける。
「ハッハーン。どうよ」
するとキイエも、崖に向かって炎を吐いた。
「やるわね。じゃあ、これはどう。フレイムアロー!」
するとキイエも、高速の炎の塊を崖に向かって吐く。
「それなら、これは。フレイムストーム!」
負けずにキイエも巨大な炎の塊を吐き出す。
「おいおい、そんな事したら、また門番さんが怒りに来るじゃないか」
「こら~、またお前らか~! おおっ、何だそいつは、ドラゴンじゃないか!」
槍を構え俺達に向けてくる。カリンの横にいるキイエの様子を見てみるが攻撃する気配はないな。
「いやね~。今、使役魔獣登録のための練習をしてたんですよ」
俺は営業スマイルでギルドからもらった、仮預かりの証書を見せる。
「そ、そうなのか? ドラゴンをか? まあ、ほどほどにしとけよ」
そう言って門番さんは帰ってくれた。キョトンとした目のキイエの頭を優しく撫でてやる。
「すごいな、キイエ! 槍を向けられても炎を吐かなかったな、偉いぞ」
キイエも俺に頬ずりしてくれた。これなら大丈夫そうだな。
数日後。冒険者ギルドの幹部と衛兵の代表者が並んで座る目の前で、キイエの試験が行なわれる。場所は同じ東門を出た崖の前だった。
「それにしても、なんだよこのギャラリーの数は」
冒険者をはじめ町の人達が大勢見に来ている。あいつだな噂を流したのは。ここに来ていたいつものギルドの受付嬢を睨みつけると、ニコッと引きつった笑顔を返してきやがった。
まあ、いい。練習の通りやれば大丈夫だ。
俺は肉を空に放り上げたり、アイシャに肉を持たせて飛ばせたりするが、その度に「オオー」と歓声が上がる。なんか鷹匠の見世物をしている気分だ。
「カリン、頼む」
最近は慣れてきて、カリンが指差すとそちらに向かってキイエは炎を吐いてくれるようになった。
その炎を見て観衆が響めく。サーカスの猛獣使いのような演技に、パチパチと大きな拍手までしてくれる。いや、アンコールされても困るんだがな。
マスターのジルが俺達の所までやって来て、驚きをもって褒め称える。
「すごいな、よくここまで手懐けたものだ。試験は合格だ。そのドラゴンを使役魔獣として認めよう」
「ありがとう。ジル」
「ありがとうございます。ジルさん」
これからも一緒に居られると、アイシャが一番喜んでいるな。
使役魔獣の登録証書は冒険者ギルドの受付窓口でもらえるそうだ。
「お前だろう、噂流してあんなに人を集めたの」
ギルドで受付業務に復帰していた、いつもの受付嬢に文句を言っておく。休み時間をずらして俺達を見に来ていたようだな。
「あんなに集まるとは思わなかったんですよ。アイシャさんが可愛い、可愛いって言うもんだから、つい話しちゃったんですよ……ごめんなさい」
「まあ、いいよ。それで何かあるのか」
「はい。これをキイエちゃんの足に付けておいてください」
俺は銅のプレートの輪っかをもらった。
「これは、青銅冒険者用のプレートなんですけど、使役魔獣に付けないといけないんです。足に付けた方がいいと思って加工しておきました。名前もちゃんと書いてあるんですよ」
もらったプレートは、キイエの足に付けられるように細長く加工されていて、俺達のと同じように表面に名前か刻まれている。
キイエは今後、数年に一度は使役魔獣の試験を受けないといけないそうだが、青銅ランク冒険者と同じような扱いを受けられ、町への出入りも自由にできる。
「分かった。ちゃんと付けておくよ」
「また、キイエちゃんと一緒に来てくださいね」
受付嬢に見送られて、外で待っていてくれたアイシャ達やキイエと一緒に家に帰る。今日はお祝いだな。これで堂々と町にキイエを連れて歩けるぞ。
家でキイエの足に銅プレートの輪っかを付けてみた。キイエは物珍しそうに突っついていたが、嫌がった素振りは見せなかったのでそのまま付けてもらう。
ワイワイとみんなでお祝いをしたが、キイエも分かっているのか「キエ、キエ」と鳴いて上機嫌だ。
キイエ。これからも楽しい毎日が待っているぞ。
まず飛行の練習からだ。俺の肩の上に乗ったキイエに餌の肉を見せて、それを空に向かって放り上げる。
キイエは飛び上がって、肉を空中でキャッチしてまた俺の肩に乗ってむしゃむしゃと食べている。
次は離れたアイシャに肉を持ってもらって、こちらに見せる。少しキイエを押さえておいて、合図でアイシャの肉を食べに飛ばせる。
やっぱりキイエは賢いな。こちらの意図した事を、合図やアイコンタクトで理解してくれる。
次に口から炎を吐いて、止めるのを覚えさせるのだが、これは上手く伝わらなかった。止まり木用に作った専用の台の上に乗せたキイエに、口から炎を出すのを身振り手振りで見せるのだが分かってくれない。
「ユヅキ。そんなとこで踊ってないで、私に任せなさい!」
カリンがキイエの前に進み出て正面から睨み合う。突然カリンが杖を取り出し、崖に向かって炎を放ちキイエに見せつける。
「ハッハーン。どうよ」
するとキイエも、崖に向かって炎を吐いた。
「やるわね。じゃあ、これはどう。フレイムアロー!」
するとキイエも、高速の炎の塊を崖に向かって吐く。
「それなら、これは。フレイムストーム!」
負けずにキイエも巨大な炎の塊を吐き出す。
「おいおい、そんな事したら、また門番さんが怒りに来るじゃないか」
「こら~、またお前らか~! おおっ、何だそいつは、ドラゴンじゃないか!」
槍を構え俺達に向けてくる。カリンの横にいるキイエの様子を見てみるが攻撃する気配はないな。
「いやね~。今、使役魔獣登録のための練習をしてたんですよ」
俺は営業スマイルでギルドからもらった、仮預かりの証書を見せる。
「そ、そうなのか? ドラゴンをか? まあ、ほどほどにしとけよ」
そう言って門番さんは帰ってくれた。キョトンとした目のキイエの頭を優しく撫でてやる。
「すごいな、キイエ! 槍を向けられても炎を吐かなかったな、偉いぞ」
キイエも俺に頬ずりしてくれた。これなら大丈夫そうだな。
数日後。冒険者ギルドの幹部と衛兵の代表者が並んで座る目の前で、キイエの試験が行なわれる。場所は同じ東門を出た崖の前だった。
「それにしても、なんだよこのギャラリーの数は」
冒険者をはじめ町の人達が大勢見に来ている。あいつだな噂を流したのは。ここに来ていたいつものギルドの受付嬢を睨みつけると、ニコッと引きつった笑顔を返してきやがった。
まあ、いい。練習の通りやれば大丈夫だ。
俺は肉を空に放り上げたり、アイシャに肉を持たせて飛ばせたりするが、その度に「オオー」と歓声が上がる。なんか鷹匠の見世物をしている気分だ。
「カリン、頼む」
最近は慣れてきて、カリンが指差すとそちらに向かってキイエは炎を吐いてくれるようになった。
その炎を見て観衆が響めく。サーカスの猛獣使いのような演技に、パチパチと大きな拍手までしてくれる。いや、アンコールされても困るんだがな。
マスターのジルが俺達の所までやって来て、驚きをもって褒め称える。
「すごいな、よくここまで手懐けたものだ。試験は合格だ。そのドラゴンを使役魔獣として認めよう」
「ありがとう。ジル」
「ありがとうございます。ジルさん」
これからも一緒に居られると、アイシャが一番喜んでいるな。
使役魔獣の登録証書は冒険者ギルドの受付窓口でもらえるそうだ。
「お前だろう、噂流してあんなに人を集めたの」
ギルドで受付業務に復帰していた、いつもの受付嬢に文句を言っておく。休み時間をずらして俺達を見に来ていたようだな。
「あんなに集まるとは思わなかったんですよ。アイシャさんが可愛い、可愛いって言うもんだから、つい話しちゃったんですよ……ごめんなさい」
「まあ、いいよ。それで何かあるのか」
「はい。これをキイエちゃんの足に付けておいてください」
俺は銅のプレートの輪っかをもらった。
「これは、青銅冒険者用のプレートなんですけど、使役魔獣に付けないといけないんです。足に付けた方がいいと思って加工しておきました。名前もちゃんと書いてあるんですよ」
もらったプレートは、キイエの足に付けられるように細長く加工されていて、俺達のと同じように表面に名前か刻まれている。
キイエは今後、数年に一度は使役魔獣の試験を受けないといけないそうだが、青銅ランク冒険者と同じような扱いを受けられ、町への出入りも自由にできる。
「分かった。ちゃんと付けておくよ」
「また、キイエちゃんと一緒に来てくださいね」
受付嬢に見送られて、外で待っていてくれたアイシャ達やキイエと一緒に家に帰る。今日はお祝いだな。これで堂々と町にキイエを連れて歩けるぞ。
家でキイエの足に銅プレートの輪っかを付けてみた。キイエは物珍しそうに突っついていたが、嫌がった素振りは見せなかったのでそのまま付けてもらう。
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キイエ。これからも楽しい毎日が待っているぞ。
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