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第4章 アルヘナ動乱
第142話 メラクの林
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俺達は今、メラクの林と呼ばれている場所に来ている。
大規模な地滑りでスタンピードが起きた付近の魔の森を開発して、メラクの林にするそうだ。森には魔獣がほとんど居なくなって、今なら魔獣の住まない林にできると判断したようだな。
この近くにあるメラク村も再開発するそうだ。少し場所を移して他の2つの村民を移住させて大きくする計画だという。俺達はこのメラクの林が安全になるように、付近に出没する魔獣の討伐を行なっている。
ここの開発には何チームもの冒険者が参加していて、担当区域を分けて1週間ごとに交代しながら魔獣討伐をしている。
今日も林の奥へと俺達は向かう。
「どんな魔獣が出てくるか分からんから、アイシャとカリンはローブを着て行けよ」
アイシャは俺が女神様からもらった濃い藍色のローブを、カリンは王都で仕上げてもらったマンモスの毛でできた焦げ茶色のローブを着る。
ふたりのローブは全魔法属性に耐性がありながら、ある程度の物理攻撃も防げる優れ物のローブだ。しかもモコモコで暖かい。
今日は結構奥地まで行く予定だ。危険を伴うからチセとキイエは、基地となっている小屋の中でお留守番をしてもらっている。
「今日は林の右側の奥まで行ってみよう」
「そうね。あの辺りはあまり立ち入らない場所だから、慎重に足跡を確認していきましょう」
黄金ランク冒険者の調査により、山の麓に銀の鉱脈が発見されて、そこまでの道が整備されつつある。
「この辺りも、ずいぶん変わってきたわね。木も少なくなってるし」
「鉱山の坑道と村に家を作るために木を伐り出しているからな。お陰で見通しが良くなって助かるよ」
「私達がいつも通っているから魔獣の方も警戒して、あまり近寄って来ないものね」
このような人の営みが、どんどん自然を変えていくんだろうな。アイシャと一緒に住んでいたアルヘナに近いカウスの林も、昔の人がこうやって開発していったのだろうか。
そんな事を思いながら歩いていると林の奥からガサガサと音がする。
「何かしら」
アイシャが警戒して弓に矢を番える。
林の中、音のする方向に向けて矢を放つと、何かが地響きを上げてこちらに向かって来た。これはでかいぞ。木々の陰に隠れてよく見えんが、明らかに普通の獣とはサイズが違う!
「アイシャ、こっちだ」
カリンと共に道を戻って、その生き物から距離をとる。
俺達がいたであろう場所に、巨大な動物の群れが右から左へと走り去っていった。
「うわっ! 何なのあいつら」
キリンのように首が長いが、太くて首だけで人の背丈ほどもあるじゃないか。体は牛のようにずんぐりしていてでかい。頭までは4mぐらいあったぞ。カリンが驚くのも無理はないな。絶滅した巨大な哺乳類を彷彿とさせる生き物だ。
木の無い道まで避難してきたが、道を挟んだ左側に広がる林の中を地響きを立てて走っている。その音がまた俺達に近づいてきた。俺達を敵と認識したようだな。
今度は林の中から巨大な炎の塊が俺達に襲い掛かる。ローブとマントで身をかばうが、炎に包まれ群れからの一斉攻撃を受け続け、身動きが取れない。
「私に掴まって、足の風魔法を発動させなさい!」
ひと塊になって炎に耐えていた俺とアイシャの腕を取りカリンが叫ぶ。風の靴に魔力を流すと同時に、カリンが風魔法を発動させて3人一緒に炎の塊から脱出する。ホバークラフトによる高速移動だ。
俺達がさっきまでいた黒く焦げた地面に向かって、魔獣の群れが林から姿を現し走り込んでくる。
動けなくなった敵を群れで押しつぶす。これがこの魔獣の攻撃方法か!
「舐めんじゃないわよ!」
その群れにカリンとアイシャが攻撃をしかける。1頭が倒れたが、魔獣の群れはそのままの勢いで反対側の林の中へ入り、今もこちらを攻撃しようと走り回っている。
「あの魔獣、直線的な動きしかしてこないわ。次に魔法攻撃してきたら、さっきのように脱出して待ち伏せて攻撃しましょう。カリンお願いね」
「分かったわ。次で全部倒してやるわ」
また林の中から魔法攻撃が来て炎に包まれる。風の靴を使い素早く脱出して魔獣が林から出てくるのを待つ。
林から姿を現した瞬間、今度はこちらから魔道弓と魔法の一斉攻撃だ。
「ダブルトルネイド」
両手からの竜巻魔法で魔獣が横転し、心臓目掛け魔道弓の連射でとどめを刺す。横に飛ばされ激突した木の下敷きになり、動けなくなった魔獣の首を俺が切り落とす。
3頭を倒すことができたが、残った2、3頭はそのまま林に入り逃げ去ったみたいだ。しばらく周囲を警戒したが、さっきの魔獣の姿はどこにもなかった。群れでないと攻撃してこないようだな。
全部で4頭を倒したが、このでかい魔獣を俺達で持ち帰るのは無理だな。急いで小屋まで戻り馬車を連れて来る。
チセにも手伝ってもらい、魔獣を運ぶ木の荷台を作る。こんな時には俺の剣が役に立つ。超音波振動を起動させて、周辺の木を切り倒して縦半分に割る。それをロープで縛れば荷台の完成だ。
2頭立ての馬車に引かせるが、2回に分けて運ばんと無理だな。チセとカリンで魔獣を小屋まで運んでもらう。馬車にはキイエもいるし、ふたりに任せれば大丈夫だろう。
俺とアイシャは残って、もう一台木の荷台を作っておく。まだ昼を回ったところだが、暗くなると他の魔獣が集まって来るかもしれない。急いだほうがいい。
戻ってきた馬車に荷台を括り付け、残りの魔獣を小屋まで運んだ。
小屋の中でホッと一息つく。ここは前に地図を作った物見やぐらのある場所だが、今では基地化され小屋の周りは丈夫な石垣が築かれている。少々の魔獣が来ても平気だ。
翌朝、交代のチームがやって来た。今日はニックのパーティーだな。
「これはすごい魔獣だな。しかも4頭か!」
「ああ、運ぶだけでも苦労したよ」
「相変わらず、ユヅキさんのチームは派手ですわね」
「ねえ、ねえ、どんな魔法で倒したの。カリンさんの魔法見てみたかったな」
ネトは相変わらず、元気でおしゃべりだ。
俺達は魔獣の情報やら引き継ぎ事項を話して交代するが、この魔獣をなんとかしないとな。
「ニックすまんがそっちの馬車を貸してくれ。俺達だけでは運びきれん」
「分かった。リアトル、一緒に行ってくれ」
「じゃあ、ユヅキさん行きましょうか。こんなの町に持ち帰ったらみんな驚くわね」
町に帰りギルド前に魔獣を置いていたら、住民達が物珍しそうに集まって来て人だかりができてしまった。
倒したのは珍しい魔獣らしく、データを取るためギルドの職員達も集まって大きさや各部の様子を調べている。この後、解体調査をして、肉が食べられるかなども分かるそうだ。
俺はマスターのジルに頼んで魔石を2つもらう事にした。
この魔石をカリンの新しい杖に組み込もう。昨日の戦闘ではカリンに助けてもらったし、性能のいい杖をカリンには持ってもらいたい。出来上がるのが楽しみだ。
大規模な地滑りでスタンピードが起きた付近の魔の森を開発して、メラクの林にするそうだ。森には魔獣がほとんど居なくなって、今なら魔獣の住まない林にできると判断したようだな。
この近くにあるメラク村も再開発するそうだ。少し場所を移して他の2つの村民を移住させて大きくする計画だという。俺達はこのメラクの林が安全になるように、付近に出没する魔獣の討伐を行なっている。
ここの開発には何チームもの冒険者が参加していて、担当区域を分けて1週間ごとに交代しながら魔獣討伐をしている。
今日も林の奥へと俺達は向かう。
「どんな魔獣が出てくるか分からんから、アイシャとカリンはローブを着て行けよ」
アイシャは俺が女神様からもらった濃い藍色のローブを、カリンは王都で仕上げてもらったマンモスの毛でできた焦げ茶色のローブを着る。
ふたりのローブは全魔法属性に耐性がありながら、ある程度の物理攻撃も防げる優れ物のローブだ。しかもモコモコで暖かい。
今日は結構奥地まで行く予定だ。危険を伴うからチセとキイエは、基地となっている小屋の中でお留守番をしてもらっている。
「今日は林の右側の奥まで行ってみよう」
「そうね。あの辺りはあまり立ち入らない場所だから、慎重に足跡を確認していきましょう」
黄金ランク冒険者の調査により、山の麓に銀の鉱脈が発見されて、そこまでの道が整備されつつある。
「この辺りも、ずいぶん変わってきたわね。木も少なくなってるし」
「鉱山の坑道と村に家を作るために木を伐り出しているからな。お陰で見通しが良くなって助かるよ」
「私達がいつも通っているから魔獣の方も警戒して、あまり近寄って来ないものね」
このような人の営みが、どんどん自然を変えていくんだろうな。アイシャと一緒に住んでいたアルヘナに近いカウスの林も、昔の人がこうやって開発していったのだろうか。
そんな事を思いながら歩いていると林の奥からガサガサと音がする。
「何かしら」
アイシャが警戒して弓に矢を番える。
林の中、音のする方向に向けて矢を放つと、何かが地響きを上げてこちらに向かって来た。これはでかいぞ。木々の陰に隠れてよく見えんが、明らかに普通の獣とはサイズが違う!
「アイシャ、こっちだ」
カリンと共に道を戻って、その生き物から距離をとる。
俺達がいたであろう場所に、巨大な動物の群れが右から左へと走り去っていった。
「うわっ! 何なのあいつら」
キリンのように首が長いが、太くて首だけで人の背丈ほどもあるじゃないか。体は牛のようにずんぐりしていてでかい。頭までは4mぐらいあったぞ。カリンが驚くのも無理はないな。絶滅した巨大な哺乳類を彷彿とさせる生き物だ。
木の無い道まで避難してきたが、道を挟んだ左側に広がる林の中を地響きを立てて走っている。その音がまた俺達に近づいてきた。俺達を敵と認識したようだな。
今度は林の中から巨大な炎の塊が俺達に襲い掛かる。ローブとマントで身をかばうが、炎に包まれ群れからの一斉攻撃を受け続け、身動きが取れない。
「私に掴まって、足の風魔法を発動させなさい!」
ひと塊になって炎に耐えていた俺とアイシャの腕を取りカリンが叫ぶ。風の靴に魔力を流すと同時に、カリンが風魔法を発動させて3人一緒に炎の塊から脱出する。ホバークラフトによる高速移動だ。
俺達がさっきまでいた黒く焦げた地面に向かって、魔獣の群れが林から姿を現し走り込んでくる。
動けなくなった敵を群れで押しつぶす。これがこの魔獣の攻撃方法か!
「舐めんじゃないわよ!」
その群れにカリンとアイシャが攻撃をしかける。1頭が倒れたが、魔獣の群れはそのままの勢いで反対側の林の中へ入り、今もこちらを攻撃しようと走り回っている。
「あの魔獣、直線的な動きしかしてこないわ。次に魔法攻撃してきたら、さっきのように脱出して待ち伏せて攻撃しましょう。カリンお願いね」
「分かったわ。次で全部倒してやるわ」
また林の中から魔法攻撃が来て炎に包まれる。風の靴を使い素早く脱出して魔獣が林から出てくるのを待つ。
林から姿を現した瞬間、今度はこちらから魔道弓と魔法の一斉攻撃だ。
「ダブルトルネイド」
両手からの竜巻魔法で魔獣が横転し、心臓目掛け魔道弓の連射でとどめを刺す。横に飛ばされ激突した木の下敷きになり、動けなくなった魔獣の首を俺が切り落とす。
3頭を倒すことができたが、残った2、3頭はそのまま林に入り逃げ去ったみたいだ。しばらく周囲を警戒したが、さっきの魔獣の姿はどこにもなかった。群れでないと攻撃してこないようだな。
全部で4頭を倒したが、このでかい魔獣を俺達で持ち帰るのは無理だな。急いで小屋まで戻り馬車を連れて来る。
チセにも手伝ってもらい、魔獣を運ぶ木の荷台を作る。こんな時には俺の剣が役に立つ。超音波振動を起動させて、周辺の木を切り倒して縦半分に割る。それをロープで縛れば荷台の完成だ。
2頭立ての馬車に引かせるが、2回に分けて運ばんと無理だな。チセとカリンで魔獣を小屋まで運んでもらう。馬車にはキイエもいるし、ふたりに任せれば大丈夫だろう。
俺とアイシャは残って、もう一台木の荷台を作っておく。まだ昼を回ったところだが、暗くなると他の魔獣が集まって来るかもしれない。急いだほうがいい。
戻ってきた馬車に荷台を括り付け、残りの魔獣を小屋まで運んだ。
小屋の中でホッと一息つく。ここは前に地図を作った物見やぐらのある場所だが、今では基地化され小屋の周りは丈夫な石垣が築かれている。少々の魔獣が来ても平気だ。
翌朝、交代のチームがやって来た。今日はニックのパーティーだな。
「これはすごい魔獣だな。しかも4頭か!」
「ああ、運ぶだけでも苦労したよ」
「相変わらず、ユヅキさんのチームは派手ですわね」
「ねえ、ねえ、どんな魔法で倒したの。カリンさんの魔法見てみたかったな」
ネトは相変わらず、元気でおしゃべりだ。
俺達は魔獣の情報やら引き継ぎ事項を話して交代するが、この魔獣をなんとかしないとな。
「ニックすまんがそっちの馬車を貸してくれ。俺達だけでは運びきれん」
「分かった。リアトル、一緒に行ってくれ」
「じゃあ、ユヅキさん行きましょうか。こんなの町に持ち帰ったらみんな驚くわね」
町に帰りギルド前に魔獣を置いていたら、住民達が物珍しそうに集まって来て人だかりができてしまった。
倒したのは珍しい魔獣らしく、データを取るためギルドの職員達も集まって大きさや各部の様子を調べている。この後、解体調査をして、肉が食べられるかなども分かるそうだ。
俺はマスターのジルに頼んで魔石を2つもらう事にした。
この魔石をカリンの新しい杖に組み込もう。昨日の戦闘ではカリンに助けてもらったし、性能のいい杖をカリンには持ってもらいたい。出来上がるのが楽しみだ。
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