【改訂版】目指せ遥かなるスローライフ!~放り出された異世界でモフモフと生き抜く異世界暮らし~

水瀬 とろん

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第6章 帝国編 ~最終章~

第155話 サルガス港上陸作戦2

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 テントに捕らえられていた獣人達の避難は、猫族などの冒険者に任せ俺とカリン、タティナは港の奇襲作戦に参加しよう。兵力の差は歴然だからな、少しでも手助けせんと。

 タティナがこの後方から駐屯地のテントを焼き払っていく。敵は真夜中の奇襲で相当混乱しているようだな。小さな部隊が右往左往するばかりで、組織だった攻撃はできていないようだ。
 グライダーが高台の司令部を攻撃しているようで、離れた場所でも火の手が上がっている。そろそろ第2段階だな。

「よし、カリン。海岸線から離れた敵部隊に大魔法を撃ってくれ。同士討ちにならんように気を付けてくれよ」
「誰に言ってんのよ。大魔術師の私がヘマするはずないでしょう」

 いや、お前だから危ないんだよ。
 俺の心配を余所に、大魔法を連発するカリン。戦車で砲撃しているその先を狙っているようで同士討ちはないようだが、森が燃え辺り一面火の海だ。

 海上からも、魔法攻撃が陸地に向かっている。あれはハルミナ率いる魔術師部隊だろうな。戦車も前進し、戦火は海岸から内陸へと広がる。

「敵、東側の一団が……撤退して……行きます」

 グライダーからの通信が入る。高台の方を見ると予想通り、軍隊が撤退し始めている。全体の半分でもいなくなってくれれば、こちらの犠牲も少なくて済む。

「正教会軍と思われる……西側に攻撃を集中……。中央戦車部隊、進路を変更せよ」

 現地司令部からの指示が飛ぶ。俺達が居る場所は、陣地の西の端。後ろから追い立てるように、魔法攻撃すれば戦車と挟み撃ちにできる。
 おっと、俺達に気づいてこちらに向かって来る黒い服を着た部隊があるようだが、単体の小隊で10人程だ。 
 カリンには近づけさせんよ。俺とタティナの剣ならば、この程度斬り伏せるのも簡単だ。

「こちら、西方面戦車部隊。敵の殲滅を確認……サルガス港へ帰還する」
「了解した。ご苦労……他の部隊も……」

 明け方には戦闘も終了して、辺り一帯焼け野原だ。森の火はくすぶっているが、ここから見る限り動いている兵はいない。奇襲作戦は成功したようだ。

 後方の森に避難している獣人達の元へと向かう。

「もう大丈夫だ。俺達はサルガスの港へ行くが、君達はどうする」
「まずはみんなと合流したい。ここの連中を連れて一緒に行ってもいいか」

 多分サルガス港に戻れば、対岸の者達がこちらに渡ってくるはずだ。敵である人族が集まる場所は怖いと思うが、まずはここを降りて港に向かおう。

「ユヅキさん~。無事でしたか~」

 港ではハルミナが元気な姿を見せてくれて、俺達を出迎えてくれた。

「奇襲作戦は上手くいったみたいだな」
「はい、この子達がすごく頑張ってくれたんですよ」

 ハルミナの周りには、人族の魔術師部隊のメンバーがそろっていた。ハルミナが魔術師として育てた16歳が中心の少年、少女達だ。
 みんな魔力を使いすぎて疲れた顔をしているが、勝利したことに喜んでいる。
 その横では、ここの司令官が各部隊に指示を出していた。

「第15から第25戦車小隊は、撤退した帝国軍の監視任務に当たれ。他の者は休憩後、昼に送られてくる物資搬入の準備だ」

 ここでの戦いは勝利したが、今後の戦いに備えた行動をもう開始しているようだな。

「すまんが、対岸に居た獣人はどうなるか分かるか」
「君はユヅキ君だね。昼の物資と共にこちらにやってくる。その者達の対応を君にお願いしたい」

 聞くと総司令本部を含む対岸の物資をこちらに運び込んで、ここを基地化するようだ。

「まずはみんなが落ち着ける場所を探そう」

 近くの焼け焦げた一角をカリンにならしてもらい、平らになった場所にシートを敷き座ってもらう。水や食料を置けるように木箱を積み、簡単な食事もしてもらう。
 するとこの作戦に参加していた獣人が、俺達の様子を見てやって来た。家族の顔を見つけ抱き合って喜んでいる者もいる。

「ユヅキさん、住民達を無事保護してくれたんだな。ありがとう」
「隊長さんに聞いたら、軍の仕事はいいから家族の元に行ってやれと言ってくれたんだ」

 ここで戦った獣人達800人程は軍に雇用されている状態だ。今はこの港を整備する仕事をしているが、休憩時間ももらえると喜んでいる。帝国軍で無理やり働かされていた時と、全く違うと言っていた。

 昼になり、対岸からも獣人達が上陸してきた。これで帝国に捕らえられていた者達が一堂に会することになる。
 喜びの再会をする獣人達の中から、各種族5人程が集まって俺の元に来て礼を言った後、こんな提案をしてきた。

「あんたら人族には恩義がある。だからこの港整備の仕事は喜んでしよう。だが一部の者達で、帝国兵に占領されている町の解放をしに行きたい。協力してもらえないだろうか」

 自分達の住んでいた町や村は、今も帝国兵に占領されて、住民は働かされたり人質のように捕らえられていると言う。全員で行く訳にもいかないが、協力してほしいと言ってきた。

 雇用契約を結んだ獣人達の戦力は人族も当てにしている。獣人達全員を連れて、大々的な作戦行動はできない。これは少し司令部と話をしたほうがいいな。

「今、司令部の人達と相談してきた、聞いてくれ」
「俺達の町を助けに行けるのか」
「残念だが戦争中の人族が、君達の町を助けに行くことはできないそうだ」

 それを聞いた獣人達は落胆の色を示すが、希望が無い訳でもない。

「基本的に君達は帝国の国民だ。これは帝国国内の問題だからな」
「我々の町を占領した帝国など信用できるか」
「だから町を解放するには、自分達の手で行なわないといけない」

 人族として、今は戦火を広げる訳にはいかない。この前線基地を整備し、東に後退した帝国軍を追撃しないと、戦力を整えた帝国軍が再度ここに攻め込んでくる。
 そこで俺は少数精鋭部隊を出すことを提案した。司令部はそれなら軍としても協力できると言ってくれた。

「俺達は冒険者だ」

 ここにはカリンやタティナもいる。その胸には冒険者プレートが掲げられている。

「人族は大きな戦闘を終えたばかりだ。軍はすぐに動くことはできない。だが冒険者への依頼という事なら俺達が受けてもいい」
「そうね、あなた達が困っているというなら、助けてあげなくもないわね」
「そうだな。だがあたい達だけで占領している帝国軍をなんとかできるものではない。あんたらに戦う意思があるならその手助けをしよう」

 軍ではなく動くのは冒険者と住民、その方が素早く自由に行動できる。俺達への報酬は住民達が支払う。いつも町でしていたのと同じだ。

「自分達の町の事だ、当然俺達も戦う」
「分かった。まずはここから西側の町を助けに行くつもりだ」
「じゃあ、俺達犬族の町は見捨てるのか!」

 西側には山ヤギ族と猫族の町がある。当然東側にいる犬族などの住民から不満が出る。

「今、帝国の主力は東の海岸地帯の方に撤退している。東に行って帝国の主力部隊と戦うことはできないと言っているだけだ。無駄死にすればお前の家族も悲しむ」
「だが戦場になれば、町が燃やされてしまう」

 帝国では内戦になると、食料の強奪や焼き討ちが頻発したそうだ。東の住民達も心配でたまらないのだろう。俺は地図を広げて皆に説明する。

「帝国軍の主力は森を避け、北の砂漠地帯付近を東に撤退するようだ。そのルート上に君達の町や村は無い」

 北に広がる砂漠地帯の東端。緑地帯になっている場所に大きな町がある。そこが後方基地になっているのか、帝国軍はそこに向かい撤退している。
 人族はそれに追撃を掛けるのだが、東の町に関しては軍の進行度合いに合わせたものになる。俺の説明にしぶしぶながらも、犬族の住民は納得してくれたようだ。

 西の町の救出に向かうのは、町の事に詳しい猫族などの獣人から選抜する。町へ向かう馬車や馬などは全員で準備していく。
 今は救出に行けない犬族の人達も、自分事として考え協力してくれる。猫族も自分の町が解放されたら、犬族の町の解放に協力すると言ってくれた。

 準備は順調に進み、明日の明け方にはここを出発できそうだ。この港が陥落したことはまだ伝わっていないはずだが、何日も軍からの連絡が無ければ、敵も警戒する。できるだけ早く行動した方がいい。
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