【改訂版】目指せ遥かなるスローライフ!~放り出された異世界でモフモフと生き抜く異世界暮らし~

水瀬 とろん

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第6章 帝国編 ~最終章~

第166話 北部戦線1

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「やっぱりもう戦闘は始まっているみたいね」

 賢者シルス様に借りた、空飛ぶ魔道具で共和国と帝国の国境付近まで来た。さて、これからどうするか……。
 このまま帝国の上空を飛行して、人族の国まで行くか。眼下には帝国軍と誰かが戦っている。あれに巻き込まれる訳にはいかないわ。ふと前を見る。

「うわっ、あれは本物の真っ赤なドラゴン! こっちにやってくるわ。どうしましょう」

 その赤いドラゴンは、目の前をものすごいスピードで飛び去ったかと思うとUターンして横に並んだ。よく見ると人を乗せた、私と同じ空飛ぶ魔道具だわ! この機体よりも小さいけど、すごく速く飛んでいた。

「中に乗っているのは小さな子供じゃない。下に降りろと言っているようね」

 そこには広くて真っ直ぐなきれいな道があった。ここは共和国部隊の基地のようね。沢山の人達が集まって戦闘の準備をしているのね。すごく騒がしいわ。

「おい! 敵の西部隊に対して追加攻撃だ。部隊編成急げよ」
「補給物資を運んできたんですが……」
「それなら奥の倉庫だ。倉庫横のテントで伝票を見せてくれ」

 魔道具から降りて辺りを見渡したけど、知っている人はいないわね。さっき私をここに連れて来た空飛ぶ魔道具の方に行こうとしたら、後ろから声を掛けられた。

「あら、あなたは黄金冒険者のメルフィルさんじゃなくって」
「あなた……カリンと一緒だった人ね」

 アルヘナでスタンピードの勝利を祝った時に、ユヅキの隣にいた娘だわ。

「ええ、アイシャよ。やっぱりあれは王国の空飛ぶ魔道具だったのね。どうしてここへ?」
「人族と帝国が争っていると聞いて、カリンの様子を見に来たのよ」
「まあ、わざわざ心配して来てくれたのね。カリンは今、南の方で戦っているわ」

 やはりそうなのね。あの子は無事なのかしら。

「人族の人達と一緒に戦っているって聞いたわ。ユヅキさんも一緒だから大丈夫だと思うんだけど」
「で、あなた達は一体ここで何をしているの」

 確かこの娘はユヅキと結婚しているって聞いたわ。カリンがユヅキと一緒にいて、なぜこんな共和国で戦っているのかしら。

「ここで戦うことが、ユヅキさんやカリンの手助けになるんですって。ダークエルフ族の独立と、商業の自由のために戦っている人のお手伝いをしているのよ」
「確かに、この北で戦えば南の支援にはなるけど……。指揮している代表の人はいるのかしら」
「代表かは分からないけど、いつもあそこの人達と相談しているわ」

 アイシャがひときわ大きなテントを指差す。
 テントの中に入ると大きな地図が張り出されていて、味方と敵の部隊の位置が色を変えて貼り付けてある。何人もの人が忙しく動き回ったり、相談などをしている。

「あの、総司令官はいますか」
「そんなのは居ね~よ。あんた、どこのグループだ」
「いえ、私は今来たところで……」
「また、新しい奴かよ。ユヅキの知り合いか? それともダークエルフ関係か?」
「いえ、私はカリンの様子を見に王国から来ました」
「王国からなら、あそこの王国冒険者の連中に話してみな」

 ここは見るからに作戦指令所だ。それも本格的な。でも司令官がいないの?
 聞いた王国の冒険者がいると言う場所に行ってみる。

「あんた、メルフィルさんじゃないか。覚えてないかな、俺はニックだ」

 声を掛けてきたのは大柄の虎族の獣人。どこかで見た覚えはあるけどよく知らない人ね。

「今、アルヘナでブロックスさんやシルマーンさんと一緒に仕事している」
「まあ、するとあなたが新しい黄金冒険者」
「ああ。メルフィルさんも戦ってくれるなら、俺達の北西部戦線に入ってくれないか」

 まあ、それはいいんだけど……北西部戦線? ここには総司令官はいないと言ってたわ。あの帝国相手に、まともに戦えるんでしょうね。

「まあ、俺らはユヅキの知り合いで、たまたまここで会って戦っているだけなんでな」
「でもあの地図だと、東に大きな部隊がいるようだけど」
「あれは、北東部戦線。共和国軍の第1師団だな。国として動いているんだが、師団長の知り合いのタティナという人が、ユヅキと一緒に戦っているそうだ」

 それぞれのグループ別々で戦っているようだけど、ちゃんと連絡は取り合っているみたいね。
 私ひとりが南に行くより、ここで戦った方が支援になるかしら。南には人族の部隊がいるようだし、帝国に二正面作戦を強いた方が得策ね。

「分かったわ、ここで戦いましょう。私にはシルス様の空飛ぶ魔道具があるわ。それを活用してくれるかしら」
「それは助かる。セルンやキイエの負担が減りそうだな」
「ニックさん。西部隊への爆撃終わりました」

 さっき空で会った小さな女の子が、テントに入ってきて報告してきた。この小さな子も実戦で帝国軍と戦っているようね。

「セルン、ありがとう。この人が空飛ぶ魔道具を持ってきてくれて、一緒に戦ってくれるそうだ」
「さっきの方ですね。私セルンって言います。よろしくお願いします」

 フワフワの灰色の頭をぺこりと下げて挨拶してくる。なかなか可愛い娘ね。

「私はメルフィルよ。あなたの空飛ぶ魔道具は誰が作ったのかしら」
「あれはお師匠様のエアバイクで、ユヅキおじ様が改造してくれたんです」
「お師匠様? ユヅキが改造? もしかしてお師匠様というのはカリンのことを言っているの」
「ええ、そうです。お師匠様のお知り合いですか。会えて光栄です」

 あいつ、また私より先に弟子を取っていたなんて。どこまでも生意気なやつね。まあ、いいわ。この弟子の実力を見てやろうじゃないの。
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