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第二章
第26話 マラカ、シャウラ、ナル
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「おや、起きたのかい」
「ウミャ~ン。久しぶりにゆっくり寝れました。ありがとうナルおばさん」
「おばさんじゃなくて、お姐さんって呼びなさい」
「そうよ、マラカ。ナル姐さんを怒らせないようにしなさいよ。怒らせると恐いんだからね」
ボクに寄り添ってくれているナルお姐さんは、死んだお母さんよりも年上に見えるけどお姐さんだって言うならそうなんだろう。
「私はこんな小さい子に怒ったりはしないわよ。それよりシャウラはいい大人なんだからあまり寄りかからないでよ。重いんだから」
「そんな事言わないでよ。ナル姐さん、温かくて気持ちいいもの」
シャウラさんは、ナルお姐さんが嫌がるのも気にせず頬ずりしている。
「ここはマラカの家なんだね、今の御主人様とどうやって出会ったんだい」
「ボク、お母さんも兄弟も車に轢かれて死んじゃって、外を歩いてる時に人間に拾われたんです。こことは別の家なんですけど、その家に今のあるじ様が来てくれて、僕をこの家に連れてきてくれたの」
ナルお姐さんは少し暗い顔をしてボクに話しかけてくれた。
「そうなの、苦労したのね。でもそういう事は、まあまあある事なんだよ。気を落とさずしっかりと生きていきなさい」
そう言ってボクの顔を優しく舐めてくれた。
「ナルお姐さんは、どうやって今の家に行ったんですか」
「私はあんた位の時に親離れして、しばらくはノラをしてたんだけど、人間の子供が乗っている自転車に轢かれてしまってね。足を引きずって歩いているところを前の御主人様に拾われたのよ」
「やっぱり外は怖いですね」
外を勢いよく走っている自動車。あれは今でも怖い。前に家にいたお爺さんは外の世界のほうがいいって言ってたけど、ボクはこの家で暮らす方がいいや。
「ねえ、ねえ、マラカ。こっちにある木の棒は何?」
「途中にある板に登って遊ぶ物なんですよ。シャウラさんもやってみますか」
タワーと言う遊び道具をあるじ様が部屋の隅に作ってくれた、ボクはまだ一番上まで登れないけど、シャウラさんは勢いよくタワーに飛びついてどんどん上まで昇っていく。
「うひゃ~。これ面白いわね。こんな所にブラブラ動く物もあるじゃない」
「大丈夫ですか。一番上は小さな板だから注意してくださいね」
「大丈夫、大丈夫よ。……うっ、うわ~」
一番天辺にいたシャウラさんがタワーごと倒れてきた。空中で体を捻って何とかシャウラさんは着地したけど、タワーは大きな音と共にバラバラになってしまった。
「何やってんの、シャウラ! あんたは本当にそそっかしいわね」
「ごめんなさい。マラカもごめんね、せっかくの遊び道具が壊れちゃった」
「いえ、いいです。どのみち上まで登れなかったし、このお気に入りの箱は壊れてませんから」
中間にあった穴の開いた箱。この中で丸くなるのがボクのお気に入り。床に落ちちゃったけど中に入る事はできそうだ。
それに遊び道具は他にもある。
「シャウラさん、こっちにも面白いものがあるんですよ」
丸い球が三段重なっている遊び道具。丸い板の間に挟まっている球を突っつくとクルリと反対側に逃げていく。
「へえ~、これも面白そうね。この球を叩くのかしら。エイッ、エイッ」
パンチした球は反対側にクルリと移動していく。シャウラさんは三段ある球を全部弾いたり、反対に移動した球を追いかけ飛び跳ねている。
「ここには色んなおもちゃがあるようだね」
「はい、あるじ様が一人で居るボクが寂しくないようにと、置いていってくれました」
あるじ様は昼間ここに居ない時が多い。何処にいるのかよく知らないけど、朝ここを出て夜に帰って来る。
「私の御主人様も夜しか帰ってこないけど、その時に遊んでくれるから私はそれで十分だけどね」
「ボクのあるじ様も帰って来た時は一緒に遊びますよ。時々お風呂にも一緒に入りますし」
「お風呂って、あの水がいっぱい入った箱の事! そんなのに一緒に入ってるの!」
あれ、ナルお姐さんはお風呂には入らないのかな?
「アタシもご主人と時々お風呂に入るわよ。あれは温かくて気持ちいいわよね、マラカ」
シャウラさんも入ってるんだ。良かったボクだけじゃなかったんだ。
「バカだね。そんなの入ったら体中水に濡れて死んじゃうんだから」
「そんなことないですよ。入った後、体を拭いてちゃんと乾かしてくれるし」
「そうよね。あの温かい風で隅々まで乾くし、体中撫でてくれて気持ちいいしね」
「温かい風って、あの大きな音のする機械でしょう。あんたたち、よく平気でいられるわね」
「もう、慣れちゃいましたよ」
「そうなの? 最近の若い子はよく分からないわね」
ナルお姐さんは不思議そうな顔をしてたけど、お風呂って気持ちいいんだけどな。
その後も、一緒に遊んだり色んな事を教えてもらった。噛んだり叩いたりするのも手加減がいるとか、爪を研ぐ場所も決まったところで研がないとダメだと教えてくれた。
「でもね、嫌な事はちゃんと嫌だって言うのよ。猫は猫らしく生きるのよ」
何でもかんでも人間の言う通りにする必要は無いと言ってくれた。自分らしく自由に生きるのが猫なんだと。
そんなボクに近寄って来てシャウラさんが体を舐めてくれる。くすぐったいけど気持ちいい。
ボクに寄り添ってくれているナルお姐さんにシャウラさん。死んだお母さんや姉弟たちが居たらこんな感じだったのかな。
「ウミャ~ン。久しぶりにゆっくり寝れました。ありがとうナルおばさん」
「おばさんじゃなくて、お姐さんって呼びなさい」
「そうよ、マラカ。ナル姐さんを怒らせないようにしなさいよ。怒らせると恐いんだからね」
ボクに寄り添ってくれているナルお姐さんは、死んだお母さんよりも年上に見えるけどお姐さんだって言うならそうなんだろう。
「私はこんな小さい子に怒ったりはしないわよ。それよりシャウラはいい大人なんだからあまり寄りかからないでよ。重いんだから」
「そんな事言わないでよ。ナル姐さん、温かくて気持ちいいもの」
シャウラさんは、ナルお姐さんが嫌がるのも気にせず頬ずりしている。
「ここはマラカの家なんだね、今の御主人様とどうやって出会ったんだい」
「ボク、お母さんも兄弟も車に轢かれて死んじゃって、外を歩いてる時に人間に拾われたんです。こことは別の家なんですけど、その家に今のあるじ様が来てくれて、僕をこの家に連れてきてくれたの」
ナルお姐さんは少し暗い顔をしてボクに話しかけてくれた。
「そうなの、苦労したのね。でもそういう事は、まあまあある事なんだよ。気を落とさずしっかりと生きていきなさい」
そう言ってボクの顔を優しく舐めてくれた。
「ナルお姐さんは、どうやって今の家に行ったんですか」
「私はあんた位の時に親離れして、しばらくはノラをしてたんだけど、人間の子供が乗っている自転車に轢かれてしまってね。足を引きずって歩いているところを前の御主人様に拾われたのよ」
「やっぱり外は怖いですね」
外を勢いよく走っている自動車。あれは今でも怖い。前に家にいたお爺さんは外の世界のほうがいいって言ってたけど、ボクはこの家で暮らす方がいいや。
「ねえ、ねえ、マラカ。こっちにある木の棒は何?」
「途中にある板に登って遊ぶ物なんですよ。シャウラさんもやってみますか」
タワーと言う遊び道具をあるじ様が部屋の隅に作ってくれた、ボクはまだ一番上まで登れないけど、シャウラさんは勢いよくタワーに飛びついてどんどん上まで昇っていく。
「うひゃ~。これ面白いわね。こんな所にブラブラ動く物もあるじゃない」
「大丈夫ですか。一番上は小さな板だから注意してくださいね」
「大丈夫、大丈夫よ。……うっ、うわ~」
一番天辺にいたシャウラさんがタワーごと倒れてきた。空中で体を捻って何とかシャウラさんは着地したけど、タワーは大きな音と共にバラバラになってしまった。
「何やってんの、シャウラ! あんたは本当にそそっかしいわね」
「ごめんなさい。マラカもごめんね、せっかくの遊び道具が壊れちゃった」
「いえ、いいです。どのみち上まで登れなかったし、このお気に入りの箱は壊れてませんから」
中間にあった穴の開いた箱。この中で丸くなるのがボクのお気に入り。床に落ちちゃったけど中に入る事はできそうだ。
それに遊び道具は他にもある。
「シャウラさん、こっちにも面白いものがあるんですよ」
丸い球が三段重なっている遊び道具。丸い板の間に挟まっている球を突っつくとクルリと反対側に逃げていく。
「へえ~、これも面白そうね。この球を叩くのかしら。エイッ、エイッ」
パンチした球は反対側にクルリと移動していく。シャウラさんは三段ある球を全部弾いたり、反対に移動した球を追いかけ飛び跳ねている。
「ここには色んなおもちゃがあるようだね」
「はい、あるじ様が一人で居るボクが寂しくないようにと、置いていってくれました」
あるじ様は昼間ここに居ない時が多い。何処にいるのかよく知らないけど、朝ここを出て夜に帰って来る。
「私の御主人様も夜しか帰ってこないけど、その時に遊んでくれるから私はそれで十分だけどね」
「ボクのあるじ様も帰って来た時は一緒に遊びますよ。時々お風呂にも一緒に入りますし」
「お風呂って、あの水がいっぱい入った箱の事! そんなのに一緒に入ってるの!」
あれ、ナルお姐さんはお風呂には入らないのかな?
「アタシもご主人と時々お風呂に入るわよ。あれは温かくて気持ちいいわよね、マラカ」
シャウラさんも入ってるんだ。良かったボクだけじゃなかったんだ。
「バカだね。そんなの入ったら体中水に濡れて死んじゃうんだから」
「そんなことないですよ。入った後、体を拭いてちゃんと乾かしてくれるし」
「そうよね。あの温かい風で隅々まで乾くし、体中撫でてくれて気持ちいいしね」
「温かい風って、あの大きな音のする機械でしょう。あんたたち、よく平気でいられるわね」
「もう、慣れちゃいましたよ」
「そうなの? 最近の若い子はよく分からないわね」
ナルお姐さんは不思議そうな顔をしてたけど、お風呂って気持ちいいんだけどな。
その後も、一緒に遊んだり色んな事を教えてもらった。噛んだり叩いたりするのも手加減がいるとか、爪を研ぐ場所も決まったところで研がないとダメだと教えてくれた。
「でもね、嫌な事はちゃんと嫌だって言うのよ。猫は猫らしく生きるのよ」
何でもかんでも人間の言う通りにする必要は無いと言ってくれた。自分らしく自由に生きるのが猫なんだと。
そんなボクに近寄って来てシャウラさんが体を舐めてくれる。くすぐったいけど気持ちいい。
ボクに寄り添ってくれているナルお姐さんにシャウラさん。死んだお母さんや姉弟たちが居たらこんな感じだったのかな。
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