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第三章
第38話 引っ越し祝い2
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「最近太ってきたせいかお腹のたるみが気になってな。早瀬さんはどうだ?」
「私も少し気になりますね。もう若くはないですし」
「佐々木はどうだ」
「な、なに言ってんのよ! 女性にそんな事聞くなんて失礼ですよ、班長!」
佐々木が自分のお腹を両手で隠しながら、顔を赤くして怒っている。
「バ、バカ! お前の事じゃねえよ。猫……マラカの事だよ!」
「へっ?」
ナルが野良猫生活して激やせした後に体重が戻って、お腹に脂肪が付いたのはいいんだが、お腹の皮がたるんできている。普通に歩いているだけで、余ったお腹の皮が左右に揺れる。
「本当だ。ナルちゃんのお腹、左右にプランプランしてるわね。おもしろ~い」
「佐々木先輩。元々猫はお腹の皮は余裕があって、体を伸ばしたり捻ったりしても大丈夫なようになっているんです。マラカは子供なのであまり目立ちませんが」
「そうなんだ。マラカ、こっちにおいで」
佐々木がマラカを呼んで膝の上に座らせて、お腹の辺りを撫で回している。
「このプヨンプヨンが、お腹のたるみか~。ヤワヤワで気持ちいいわね」
「先輩。あんまりお腹を触りすぎちゃ駄目ですよ。猫の一番弱いところですから、嫌がられますよ」
「大丈夫よ。マラカは大人しくて、あたしを信頼しているもの」
確かに信頼した人じゃないとお腹は触らせないと言うが、あれはマラカが随分と我慢している感じだな。わがままな飼い主に付き合わされているマラカも大変だろうな。
「そういえば篠崎班長。ナルちゃん、そろそろワクチン接種しないといけなかったんじゃないんですか」
「そうなんだよ。引っ越しでばたばたしてたからな。早いうちにこの近くの動物病院を探して打ちに行かんとな」
ここ最近、ナルがいなくなったりと色んなことがあって、ワクチン接種が延び延びになっている。前の病院でした検査では今のところ感染症にはかかっていないようだが、ワクチンは健康なうちに打っておかないとな。
「早瀬さんとこのシャウラは三種混合か五種混合かどっちを打ってるんだ」
「シャウラは室内飼いなので三種混合ワクチンを打ってますよ」
「うちのマラカは五種混合を打ったって言ってたよ」
マラカは野良猫から飼い猫になる際に、動物保護団体が事前に五種混合のワクチンを打ってくれたと言っている。シャウラも最初に五種混合ワクチンを二回連続で接種して、その後は三種混合ワクチンを年一回打っているそうだ。
「広島で飼っていた室内飼いの猫は、三種混合を三年に一回接種してて問題なかったから、シャウラも来年は打たないつもりです」
ずっと室内飼いの猫なら、感染リスクも少ないからな。一回五千円程すると言うし必要ないなら毎年打たなくてもいいだろう。前に早瀬さんから慌てなくてもいいと聞いていたが、俺がナルを飼い始めて一年半ほど経つ。前にいつ打ったのか知らないから、ちょうど今ぐらいの時期に打てばいいんじゃないだろうか。
猫の話に夢中になっていたら、そろそろ帰る時間になったようだ。
「佐々木。お前の作った飯は美味かったが、俺じゃなくて今度は彼氏にでも食べさせてやるんだな」
「えっ、あっ、やだな~。あたしまだ彼氏なんていませんよ。さ、先に車取りに行ってるんでマラカをお願いしますね」
何だか照れたように佐々木が部屋の外へ出て行った。佐々木もいい歳なんだから、俺になんぞ構っていないで、ちゃんとした彼氏を見つけてもらいたいものだ。
マラカを入れたキャリーバッグを持って俺は非常階段を降りて、早瀬さんにはエレベーターで一階の玄関まで降りてもらった。
ちょうど佐々木の車が来たようだ。
「お世話になりました。篠崎班長」
「それじゃ、班長。また来週、会社で」
「ああ、気を付けて帰れよ」
佐々木たちを見送り、キッチンなどの片付けを終えた後、俺はこの近くの動物病院をネットで検索する。明日の日曜日、もし病院が開いていたら早速ナルにワクチン接種をしようと思っている。
この近くの動物病院は二つ。一つは幹線道路沿いの割と大きな病院だ。駐車場には十台の車が停められるスペースがあり、クリーム色のタイル張りの綺麗な病院。病院内部の設備や医師やスタッフの顔写真なども紹介されていた。
もう一つ、距離的には同じぐらいだが路地にある病院で、ネットでは診察日などの最小限の情報しか載っていないな。写真が無くて外観も分からないが、多分小さな病院なんだろう。
どちらも明日の日曜日は診察しているようだし行ってみようと思うが、このホームページではワクチンの料金などは分からない。こういう治療費は自由診療なので病院ごと、勝手に値段を決めていい事になっている。至れり尽くせりの病院だと、ちょっとした治療でも数万円かかる所もあるらしい。
動物の医療保険に入っていれば、五割負担だとか三割負担だとかに軽減されるが俺は入っていない。まあ、ワクチン接種は医療保険に入っていても全額自己負担になってしまうしな。何かあって病院に行けば必ず五千円はかかると思っていればいい。
「一度、電話で聞いてみるか」
道路沿いの大きな病院は、今も開いているようだ。電話で聞いてみると、三種混合で五千円、五種で六千五百円だそうだ、初診料もいるから千円程高くなるが、相場と言ったところか。早瀬さんから聞いていた料金もこれぐらいだったな。
ワクチン料金すら教えてくれないような、ぼったくりの病院には行きたくはないし、これから先お世話になる病院だ、よく調べてから決めよう。まあ、駄目なら一駅先になるが前の病院もあるしな。
もう一つの病院は、今日の午後は休診のようだ。明日実際に行ってみてから決めればいいだろう。
「私も少し気になりますね。もう若くはないですし」
「佐々木はどうだ」
「な、なに言ってんのよ! 女性にそんな事聞くなんて失礼ですよ、班長!」
佐々木が自分のお腹を両手で隠しながら、顔を赤くして怒っている。
「バ、バカ! お前の事じゃねえよ。猫……マラカの事だよ!」
「へっ?」
ナルが野良猫生活して激やせした後に体重が戻って、お腹に脂肪が付いたのはいいんだが、お腹の皮がたるんできている。普通に歩いているだけで、余ったお腹の皮が左右に揺れる。
「本当だ。ナルちゃんのお腹、左右にプランプランしてるわね。おもしろ~い」
「佐々木先輩。元々猫はお腹の皮は余裕があって、体を伸ばしたり捻ったりしても大丈夫なようになっているんです。マラカは子供なのであまり目立ちませんが」
「そうなんだ。マラカ、こっちにおいで」
佐々木がマラカを呼んで膝の上に座らせて、お腹の辺りを撫で回している。
「このプヨンプヨンが、お腹のたるみか~。ヤワヤワで気持ちいいわね」
「先輩。あんまりお腹を触りすぎちゃ駄目ですよ。猫の一番弱いところですから、嫌がられますよ」
「大丈夫よ。マラカは大人しくて、あたしを信頼しているもの」
確かに信頼した人じゃないとお腹は触らせないと言うが、あれはマラカが随分と我慢している感じだな。わがままな飼い主に付き合わされているマラカも大変だろうな。
「そういえば篠崎班長。ナルちゃん、そろそろワクチン接種しないといけなかったんじゃないんですか」
「そうなんだよ。引っ越しでばたばたしてたからな。早いうちにこの近くの動物病院を探して打ちに行かんとな」
ここ最近、ナルがいなくなったりと色んなことがあって、ワクチン接種が延び延びになっている。前の病院でした検査では今のところ感染症にはかかっていないようだが、ワクチンは健康なうちに打っておかないとな。
「早瀬さんとこのシャウラは三種混合か五種混合かどっちを打ってるんだ」
「シャウラは室内飼いなので三種混合ワクチンを打ってますよ」
「うちのマラカは五種混合を打ったって言ってたよ」
マラカは野良猫から飼い猫になる際に、動物保護団体が事前に五種混合のワクチンを打ってくれたと言っている。シャウラも最初に五種混合ワクチンを二回連続で接種して、その後は三種混合ワクチンを年一回打っているそうだ。
「広島で飼っていた室内飼いの猫は、三種混合を三年に一回接種してて問題なかったから、シャウラも来年は打たないつもりです」
ずっと室内飼いの猫なら、感染リスクも少ないからな。一回五千円程すると言うし必要ないなら毎年打たなくてもいいだろう。前に早瀬さんから慌てなくてもいいと聞いていたが、俺がナルを飼い始めて一年半ほど経つ。前にいつ打ったのか知らないから、ちょうど今ぐらいの時期に打てばいいんじゃないだろうか。
猫の話に夢中になっていたら、そろそろ帰る時間になったようだ。
「佐々木。お前の作った飯は美味かったが、俺じゃなくて今度は彼氏にでも食べさせてやるんだな」
「えっ、あっ、やだな~。あたしまだ彼氏なんていませんよ。さ、先に車取りに行ってるんでマラカをお願いしますね」
何だか照れたように佐々木が部屋の外へ出て行った。佐々木もいい歳なんだから、俺になんぞ構っていないで、ちゃんとした彼氏を見つけてもらいたいものだ。
マラカを入れたキャリーバッグを持って俺は非常階段を降りて、早瀬さんにはエレベーターで一階の玄関まで降りてもらった。
ちょうど佐々木の車が来たようだ。
「お世話になりました。篠崎班長」
「それじゃ、班長。また来週、会社で」
「ああ、気を付けて帰れよ」
佐々木たちを見送り、キッチンなどの片付けを終えた後、俺はこの近くの動物病院をネットで検索する。明日の日曜日、もし病院が開いていたら早速ナルにワクチン接種をしようと思っている。
この近くの動物病院は二つ。一つは幹線道路沿いの割と大きな病院だ。駐車場には十台の車が停められるスペースがあり、クリーム色のタイル張りの綺麗な病院。病院内部の設備や医師やスタッフの顔写真なども紹介されていた。
もう一つ、距離的には同じぐらいだが路地にある病院で、ネットでは診察日などの最小限の情報しか載っていないな。写真が無くて外観も分からないが、多分小さな病院なんだろう。
どちらも明日の日曜日は診察しているようだし行ってみようと思うが、このホームページではワクチンの料金などは分からない。こういう治療費は自由診療なので病院ごと、勝手に値段を決めていい事になっている。至れり尽くせりの病院だと、ちょっとした治療でも数万円かかる所もあるらしい。
動物の医療保険に入っていれば、五割負担だとか三割負担だとかに軽減されるが俺は入っていない。まあ、ワクチン接種は医療保険に入っていても全額自己負担になってしまうしな。何かあって病院に行けば必ず五千円はかかると思っていればいい。
「一度、電話で聞いてみるか」
道路沿いの大きな病院は、今も開いているようだ。電話で聞いてみると、三種混合で五千円、五種で六千五百円だそうだ、初診料もいるから千円程高くなるが、相場と言ったところか。早瀬さんから聞いていた料金もこれぐらいだったな。
ワクチン料金すら教えてくれないような、ぼったくりの病院には行きたくはないし、これから先お世話になる病院だ、よく調べてから決めよう。まあ、駄目なら一駅先になるが前の病院もあるしな。
もう一つの病院は、今日の午後は休診のようだ。明日実際に行ってみてから決めればいいだろう。
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