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第5章 眷属の里
第3話 眷属の里3
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「さて。体も温まったし、そろそろ出ようか。夕食も用意しているよ」
「そうなのね。楽しみだわ」
フカフカのバスタオルで体を拭いて、脱衣所の椅子に座って髪の毛を乾かす。エルフィも温風魔法を使えるから自分で長い髪を乾かして、腰まである金髪が風でなびく。
「これがリンスの効果かしら。すごく軽くてサラサラになるのね」
「そうだろう。里のご婦人方にすごく好評なんだよ」
そのせいか短い髪の人も伸ばすようになって、里では長髪にする人が多くなっている。
「バスタオルと汚れた服はそこの籠の中に入れておいてくれるかい。後で一緒に洗濯するよ」
「洗ってくれるの? ありがとう」
髪を乾かしたリビティナは、ボディスーツだけ着て裸足のまま廊下に出る。その後ろから下着姿で部屋着のショートパンツをはいたエルフィが続く。
「お風呂の後でも体がポカポカしてるから、この格好でちょうどいいわね」
「そうなんだよね。でも体を冷やし過ぎてはダメだからね。寝間着は持ってきてるんだろう」
「ええ、途中の町で買った可愛いのがあるわ」
保護したエルフィには伯爵から支度金が出ている。この里でしばらく滞在するつもりのエルフィは、伯爵が住んでいるタリストの町で日用品や服などを買っていた。
まあ、一週間ぐらいで生まれ故郷である妖精族の村に送っていくつもりだけど。
その廊下の先、いい匂いが台所からしている。夕食の用意ができているようだね。
「よう、嬢ちゃんも風呂上がりか」
「キャー、なんでネイトスがここに居るのよ!」
ドアを開け、食堂へと入るなりエルフィが悲鳴を上げ、胸を押さえて廊下へと飛び出した。
「言ってなかったかな。ネイトスもここに住んでいるんだよ」
「そんなの、聞いてないわよ! ちょっと待ってよ、服着るから! そこの鞄を取ってよ」
部屋の隅にあった鞄を渡すと慌てて上着を取り出して頭から被る。部屋着になっても胸を隠し腰をかがめながら食堂に入って来た。
「俺はリビティナ様の身の回りのお世話をしているからな。ここで一緒に住んでるんだ」
「そ、そうなのね。リビティナ! あんたもそんな格好してないで、何か服を着なさいよ」
「え~~」
そんなエルフィには構わず、ネイトスは料理をテーブルの上に置いていく。
「リビティナ様。食事の用意ができてます。俺は先に風呂に入ってきやす」
「ああ、ご苦労だったね。ネイトスもゆっくりしておいでよ」
ネイトスを送り出してテーブルに着く。
「さあ、エルフィも食事をしようか」
エルフィは出て行ったネイトスを目で追った後、やっとテーブルに着いた。食卓に並ぶ料理は、他の町とは違ってこの里で採れたり加工したものが多い。
エルフィは見慣れない料理に戸惑いながらも、まずはスープに手を付ける。
「このスープ変わっているわね。この白くて四角い物は何かしら」
「それは豆腐と言って、豆を加工したものだよ。これはみそ汁と言うスープさ」
「変わった味だけど美味しいわね」
他にも川魚に大根おろしと醤油。うん、うん。この里に帰って来たな~って思える料理だよ。でもまだお米が無いからね、ご飯の代わりに蒸しパンを用意してもらっている。味噌も麦味噌と豆味噌だし、お米が手に入ったらもっと美味しいお味噌ができるんだけどね。
こういう食事はお箸で食べるものだけど、エルフィは少し食べにくそうにしているね。身をほぐしてフォークで食べられるようにしておく。フォークやナイフを渡したけど、それも珍しそうに見ている。妖精族はこんな食器を使わないのかな?
食事も進み、話も弾む。
「ねえ、ねえ、あんた。ネイトスとどういう関係なのよ」
「ネイトスが言ったように、色々と世話してもらっているよ」
「使用人みたいなもの?」
「共同で生活している感じかな。料理や洗濯などの家事も、お互い時間のある方がするしね」
「結婚してるとかじゃないの」
なんだ、そう言う事を気にしてたのか。
「ボク達は一緒に住んでいるけど、夫婦といった関係じゃないんだよ。それに眷属とは子供が出来ないしね」
眷属同士やヴァンパイアとの間で子供が生まれることはない。何回か実験したけどダメだったね。
「じ、実験って! あんた、ネイトスとそんなことしたの……」
「性交の事かい。何回もしているよ。でも受精すらしないようなんだよ」
「あんた、よく平気な顔で……。で、最初は痛いって言うけど、どうだったのよ……」
声が小さくなって、耳元で囁くように言ってくる。
「ああ、どうだったかな。昔のことであんまり覚えてないや。でも確かにあれは気持ちのいいものだよ」
エルフィはまだ経験がないようだね。妖精族は人口が少ないと言うし、獣人で言うと十八歳とか言ってたから普通なのかもしれないけど。そう言う事に興味を持つ年頃なのかな。
「エルフィはキスの経験はあるのかい」
「キ、キス! キスぐらいならあるわよ……昔のことで忘れちゃったわ」
「ほほう~。じゃあ、ネイトスを貸してあげるから練習してみるかい」
「れ、練習って何よ! そんな事は好きになった者同士でする事でしょう」
「いや~、でも経験は早めに済ませた方がいいと思うよ~」
真っ赤な顔で、モジモジとしているエルフィもなかなか可愛いものだね。
「リビティナ様、なんだか楽しそうですね。何の話ですか?」
「ひょうれは、りゃめで$%!!」
言葉になっていない声で、エルフィが叫ぶ。お風呂上がりでズボンにシャツ姿のネイトスがキョトンとした顔で部屋に入って来た。
「いや、今ねネイトスの事を……」
「あんた、何言ってんのよ! それよりも今日寝る場所を案内しなさいよ」
腕を取られて、無理やり廊下に連れ出されてしまったよ。
---------------------
【あとがき】
お読みいただき、ありがとうございます。
【設定集】を更新しています。
小説の参考になさってください。
タイトル
【設定集】転生ヴァンパイア様の引きこもりスローライフ。お暇なら国造りしませんか
設定・地図(第5章 1話以降)
「そうなのね。楽しみだわ」
フカフカのバスタオルで体を拭いて、脱衣所の椅子に座って髪の毛を乾かす。エルフィも温風魔法を使えるから自分で長い髪を乾かして、腰まである金髪が風でなびく。
「これがリンスの効果かしら。すごく軽くてサラサラになるのね」
「そうだろう。里のご婦人方にすごく好評なんだよ」
そのせいか短い髪の人も伸ばすようになって、里では長髪にする人が多くなっている。
「バスタオルと汚れた服はそこの籠の中に入れておいてくれるかい。後で一緒に洗濯するよ」
「洗ってくれるの? ありがとう」
髪を乾かしたリビティナは、ボディスーツだけ着て裸足のまま廊下に出る。その後ろから下着姿で部屋着のショートパンツをはいたエルフィが続く。
「お風呂の後でも体がポカポカしてるから、この格好でちょうどいいわね」
「そうなんだよね。でも体を冷やし過ぎてはダメだからね。寝間着は持ってきてるんだろう」
「ええ、途中の町で買った可愛いのがあるわ」
保護したエルフィには伯爵から支度金が出ている。この里でしばらく滞在するつもりのエルフィは、伯爵が住んでいるタリストの町で日用品や服などを買っていた。
まあ、一週間ぐらいで生まれ故郷である妖精族の村に送っていくつもりだけど。
その廊下の先、いい匂いが台所からしている。夕食の用意ができているようだね。
「よう、嬢ちゃんも風呂上がりか」
「キャー、なんでネイトスがここに居るのよ!」
ドアを開け、食堂へと入るなりエルフィが悲鳴を上げ、胸を押さえて廊下へと飛び出した。
「言ってなかったかな。ネイトスもここに住んでいるんだよ」
「そんなの、聞いてないわよ! ちょっと待ってよ、服着るから! そこの鞄を取ってよ」
部屋の隅にあった鞄を渡すと慌てて上着を取り出して頭から被る。部屋着になっても胸を隠し腰をかがめながら食堂に入って来た。
「俺はリビティナ様の身の回りのお世話をしているからな。ここで一緒に住んでるんだ」
「そ、そうなのね。リビティナ! あんたもそんな格好してないで、何か服を着なさいよ」
「え~~」
そんなエルフィには構わず、ネイトスは料理をテーブルの上に置いていく。
「リビティナ様。食事の用意ができてます。俺は先に風呂に入ってきやす」
「ああ、ご苦労だったね。ネイトスもゆっくりしておいでよ」
ネイトスを送り出してテーブルに着く。
「さあ、エルフィも食事をしようか」
エルフィは出て行ったネイトスを目で追った後、やっとテーブルに着いた。食卓に並ぶ料理は、他の町とは違ってこの里で採れたり加工したものが多い。
エルフィは見慣れない料理に戸惑いながらも、まずはスープに手を付ける。
「このスープ変わっているわね。この白くて四角い物は何かしら」
「それは豆腐と言って、豆を加工したものだよ。これはみそ汁と言うスープさ」
「変わった味だけど美味しいわね」
他にも川魚に大根おろしと醤油。うん、うん。この里に帰って来たな~って思える料理だよ。でもまだお米が無いからね、ご飯の代わりに蒸しパンを用意してもらっている。味噌も麦味噌と豆味噌だし、お米が手に入ったらもっと美味しいお味噌ができるんだけどね。
こういう食事はお箸で食べるものだけど、エルフィは少し食べにくそうにしているね。身をほぐしてフォークで食べられるようにしておく。フォークやナイフを渡したけど、それも珍しそうに見ている。妖精族はこんな食器を使わないのかな?
食事も進み、話も弾む。
「ねえ、ねえ、あんた。ネイトスとどういう関係なのよ」
「ネイトスが言ったように、色々と世話してもらっているよ」
「使用人みたいなもの?」
「共同で生活している感じかな。料理や洗濯などの家事も、お互い時間のある方がするしね」
「結婚してるとかじゃないの」
なんだ、そう言う事を気にしてたのか。
「ボク達は一緒に住んでいるけど、夫婦といった関係じゃないんだよ。それに眷属とは子供が出来ないしね」
眷属同士やヴァンパイアとの間で子供が生まれることはない。何回か実験したけどダメだったね。
「じ、実験って! あんた、ネイトスとそんなことしたの……」
「性交の事かい。何回もしているよ。でも受精すらしないようなんだよ」
「あんた、よく平気な顔で……。で、最初は痛いって言うけど、どうだったのよ……」
声が小さくなって、耳元で囁くように言ってくる。
「ああ、どうだったかな。昔のことであんまり覚えてないや。でも確かにあれは気持ちのいいものだよ」
エルフィはまだ経験がないようだね。妖精族は人口が少ないと言うし、獣人で言うと十八歳とか言ってたから普通なのかもしれないけど。そう言う事に興味を持つ年頃なのかな。
「エルフィはキスの経験はあるのかい」
「キ、キス! キスぐらいならあるわよ……昔のことで忘れちゃったわ」
「ほほう~。じゃあ、ネイトスを貸してあげるから練習してみるかい」
「れ、練習って何よ! そんな事は好きになった者同士でする事でしょう」
「いや~、でも経験は早めに済ませた方がいいと思うよ~」
真っ赤な顔で、モジモジとしているエルフィもなかなか可愛いものだね。
「リビティナ様、なんだか楽しそうですね。何の話ですか?」
「ひょうれは、りゃめで$%!!」
言葉になっていない声で、エルフィが叫ぶ。お風呂上がりでズボンにシャツ姿のネイトスがキョトンとした顔で部屋に入って来た。
「いや、今ねネイトスの事を……」
「あんた、何言ってんのよ! それよりも今日寝る場所を案内しなさいよ」
腕を取られて、無理やり廊下に連れ出されてしまったよ。
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【あとがき】
お読みいただき、ありがとうございます。
【設定集】を更新しています。
小説の参考になさってください。
タイトル
【設定集】転生ヴァンパイア様の引きこもりスローライフ。お暇なら国造りしませんか
設定・地図(第5章 1話以降)
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