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第7章 新たな種族

第59話 種族遺伝子2

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「あの、リビティナ様。子供を作る実験に協力してほしいと聞いてきたんですけど」

 数日して、家に来てくれたのは里の奥様達だった。

「眷属になって子供が産めないと分かっていましたが、もし夫との間に子供が授かれる可能性があるなら、協力したいのですが」

 獣人の時から夫婦だったり、この里で結婚して二人で暮らしている眷属も多い。その人達が今回の話を聞いてやって来た。
 サンプルは多いほうがいいし、協力してくれるのは嬉しいね。あくまで実験なので、どうなるか分からないと説明して血を吸わせてもらう。

 既婚者が三名と、未婚者でも協力したいと言う娘が一名の四人のサンプルが集まった。でもこれからが大変なんだよね。
 吸った血や皮膚の細胞から、リビティナの体内で万能細胞を作り出して、その後に卵子に分化誘導しないといけない。
 実験のため一人につき百個以上の卵子が必要になる。それを作り出すだけでも一週間はかかってしまうだろうね。

「おっと、フィフィロ君にも了解を取っておかないと」

 肝心な事を忘れていたよ。早速、彼の家に行って説明しよう。

「あ、あの。兄さまとリビティナ様が性交すると言う事ですか?」
「そうしてもらうと、助かるんだけどね」

 フィフィロの血から精子を作り出すこともできるんだけど、受精のタイミングやらややこしんだよね。卵子の寿命は短い。卵子四百個をリビティナの子宮にとどめて、手っ取り早くセックスして受精させてもらうのが一番だよ。

「それがこの里のためになるなら、オレ協力します」

 ルルーチアはなんだか複雑そうな顔をしていたけど、フィフィロは物分かりが良くて助かるよ。

「それじゃ、準備ができたら呼びに来るよ」

 一週間後にまた来ると言って家に帰ると、今度はネイトスが複雑な顔をしている。

「リビティナ様。フィフィロとの間に子供を作ると聞いたのですが」

 里で噂になっているようだね。

「どうしたんだい、ネイトス。嫉妬でもしたのかい」
「い、いや、俺は……フィフィロはまだ子供ですし」
「もう体は大人だよ。それにこれは実験だしね」

 そういや、最近はネイトスともご無沙汰しているね。少しは構ってあげてもいいんだけど、こういうネイトスも面白い。

「フィフィロ君は初めてだからね。このボクが直々に性教育をしてあげるんだよ」
「そ、そういうのは、学校で習うだけで十分じゃないですかね」
「いや、実地教育は大事だからね。こういうチャンスは逃さないようにしないと」
「チャンス……リビティナ様、なんだか嬉しそうですね」
「初体験の子とするのは、ボクも初めてだし興味はあるよね」

 フッフッフと含み笑いをする。

「俺をからかって、遊んでませんか」

 おや、バレてしまったかな。

 何はともあれ、実験する事は決まった。順調に卵子四百個もできて、フィフィロを自分の部屋に呼ぶ。

「さて、今夜はボクと一緒にここで寝るんだよ」
「は、はい。リビティナ様」
「緊張しているようだね。君は初めてだし、女の子の扱いというのも一緒に勉強してもらうよ」
「女の子の扱い方?」

 ただ単に性交すればいいと言うものじゃないからね。女の子を雑に扱ってもらっては困る。

「女の子はデリケートだからね。ちゃんと順番を踏んでもらわないと。フィフィロ君は、好きな娘はいるのかい」
「い、いえ。まだいません」
「将来好きな娘ができた時のために、勉強をしていた方がいいからね。まずはキスからしてみようか」

 一から文字通り手取り足取り教えながら、その日の夜は暮れていった。



「で、どうだったのよ、リビティナ」
「どうって、すごく良かったよ。初々しくて、やっぱり若い子はいいよね」
「何言ってんのよ。そんな事じゃないわよ。実験は成功したのかって聞いてるのよ。あんた本当にショタ好きだったのね」

 エルフィに怒られちゃったけど、実験は成功してるよ。

「ちゃんと受精したけど、これから全部の受精卵について調べるからね。結果が出るまで少し時間がかかるよ」

 なにせ四百個の遺伝子を、全部詳細に調べないといけないんだよ。

 受精した遺伝子を調べると、内殻遺伝子は両性が混じり合っているけど、細胞の外に外殻遺伝子の残骸がいくつか確認されただけだった。やはり一方に外殻遺伝子が無いからだろうか、受精卵に定着できないようだね。

「で、次はエルフィにも協力してほしんだ」

 今度は、外殻遺伝子を持つ者同士で実験をしてみたい。

「えっ、イヤよ。フィフィロとの間に子供を作るなんて」
「そう言わずにさ~。ダメだと言うなら、まだ眷属になっていない獣人の子供に頼んでみるよ」
「十歳にもなっていない子供を実験に使うの!」
「まだ成熟してなくても、万能細胞にしちゃえば同じ事だからね」
「そんなのダメよ。なに考えてんのよ」
「だったら、エルフィが協力してよ~」

 そんな押し問答をしていたら、ルルーチアが家にやって来た。

「リビティナ様。今度は私と兄さまの子供を作ってください!」
「えっ、ルルーチア。ダメよ、あなた達兄妹じゃない」

 慌てて、エルフィがルルーチアを説得する。

「いや、別に兄妹でも大丈夫だよ」
「そんなのダメに決まってるじゃない」
「ダメって誰が決めたんだい?」
「神様よ。昔からそう決まっているわよ」
「あの神様が、そんな事言うはずないじゃないか」

 面倒くさそうにしてた空の神様。そんな細かな事まで決めてるはずないよ。

「遺伝子異常が発生する可能性が高いってだけで、別に子供を作っても大丈夫だよ」

 代が重なれば重篤な遺伝子異常が発生するけど、初代での確率はそれほど高くない。受精卵の遺伝子検査もしているしね。
 おや、遺伝子異常? 突然変異? これは今回の実験で求めていた事じゃないか?

 フィフィロの外殻遺伝子を完全なものにするための突然変異、あるいは補完できる遺伝子の追加。遺伝子の近いルルーチアの方がいいように思える。

「ルルーチアちゃん、是非協力してくれないかい」
「はい、リビティナ様」
「えぇ~。そんなのいいの~」
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