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第8章 ノルキア帝国戦争
第76話 魔国の反転攻勢1
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【前書き】
時は少し遡り、魔族軍の砲撃部隊が帝国の飛行隊によって攻撃されたところから、リビティナ視点で話が始まります。
---------------------
「ルルーチア、怪我していないか!」
「兄さま、私は大丈夫よ。でも怖かったわ、こんな後方を狙ってくるなんて」
初陣のフィフィロとルルーチア。比較的安全な砲撃部隊を任せているけど、攻撃されたのは初めてで、少し慌てたようだね。
でもウィッチアと共に攻撃してきた飛行部隊は撃退した。やはりウィッチアは厄介だ。
「リビティナ様。あれが敵の飛行部隊ですか」
「弾道ミサイルを防いでいるのも、あの部隊なんだ。何とかしたいけど……」
――いくらボクでも単独で、大部隊の上空にいる飛行隊を落としに行く事はできないだろうね。
「ルルーチア達の砲撃部隊は、この位置から少し移動してくれるかい」
「はい、リビティナ様」
見つからないように林の中から砲撃しているけど、ここを探り当てられたからね。移動して隠れてもらおう。でも今回のような小規模の攻撃なら対応できそうだ。自陣の防衛もあるから、こちらに大量の飛行部隊を投入する事もできないでいるのかな。
それなら。
「フィフィロ君。最前線に移動してくれないか」
「でも、ルルーチアの砲撃部隊を守らないと」
「そのためにも、君が前に出るほうがいいんだよ」
この場所には、魔術師と弓部隊を増やそう。敵も飛び越えてここに来ることはできても、攻撃の際には魔法射程の位置まで降りて来る。そこを集中攻撃すればここは守られるさ。それはウィッチアも分かっているだろうし、次に敵が打つ手は……。
フィフィロと一緒に最前線へ移動すると、エルフィが出迎えて謝りに来た。
「フィフィロ、砲撃部隊が攻撃を受けたそうね。ごめんね。飛行部隊が飛んで行くのを見つけられなくて」
「いえ、高い所を飛んでましたし、オレ達も攻撃を受けるまで気づきませんでしたから」
エルフィには敵の様子を常に監視してもらっている。今回は少人数だったし見つけるのは無理だったかな。
「エルフィ。今度はこの最前線に敵の総攻撃がありそうなんだ」
「えっ、そうなの!」
「君はシームに乗って、後方に下がっていてくれるかい」
二日後。
「リビティナ様。敵が土塁に向かって突っ込んできます」
「それは後方の砲撃部隊に任せて、君達は今までと同じように土塁近くにいる敵に集中攻撃をしてくれ」
何組かは土壁のある所まで到達したようだね。
「リビティナ様。あれを!!」
「フィフィロ君! 氷魔法で対抗してくれ、最大魔力だ!!」
「は、はい!」
右手の一角で火属性の超巨大魔術が発動している。こちらも弓や魔術で攻撃しているけど炎の塊は大きくなる一方だ。ウィッチアか!
発動は遅れたけど、氷の生成速度はフィフィロの方が速い。超巨大魔術の炎が発射されると同時に、巨大に成長した氷の塊が飛んで行く。
上空でぶつかった超巨大魔術が相殺されていく。戦場の誰もが、その光景に目を見張り言葉を失う。
魔術が完全に相殺され辺り一帯が急に暗くなった。その静寂の戦場に、味方一万人の兵達による怒号のような勝ちどきの声がこだまする。
これなら勝てると、各部隊は前進して土塁の先にいる敵兵に向かって、攻撃を浴びせる。
「フィフィロ君! 大丈夫かい」
「だ、大丈夫です……リビティナ様。これでルルーチア達を守れましたか?」
「ああ、君のお陰だ」
魔力を使い果たしたフィフィロがリビティナの肩にもたれ掛かる。彼を救護兵に預けてリビティナも攻撃に参加する。
土塁近くにいた敵兵が全て後退した後、ネイトスを呼んだ。
「お城にいるブクイットに連絡を入れてくるよ。ネイトスは砲撃部隊に、最前線近くまで移動するように指示してくれ」
「へい、了解しました」
あれがウィッチアの切り札なんだろう。それを防いだ今、こちらの好機だ。
お城とオリハルコンの鏡で通信を行なう。
「リビティナ様。飽和攻撃をするんですね」
お城にいるアルディアと話をすると既に準備は終わっているらしい。単体で防がれるミサイルの運用を考えてアルディアが飽和攻撃を提案したそうだ。さすが転生者だ、対抗手段は知っていたようだね。
お城では敷地いっぱいに弾道ミサイルを設置し、同時に発射できる体勢になっている。後は東西の敵部隊への配分を決めて、お城に運んだ全ミサイルを明日の総攻撃で使い切ろう。
翌日の昼過ぎ、全ての準備は整った。お城からのミサイル攻撃と同時に前線部隊が土塁まで前進し敵陣に攻撃を仕掛ける。敵が乱れたところに、砲撃部隊のカノン砲五十門による一斉射撃を行う。
敵部隊の方が多いとはいえ、空と地上からの総攻撃には耐えられなかったようだね。
転進する敵に追撃を開始する。ここでもウィッチアが攻撃してきて進軍を妨害してくる。でも、こちらも一万の兵がいる、そうそう止められるものじゃないよ。
国境付近まで来ると、敵の国境防衛隊が駐屯していた。防衛隊からの攻撃を受けたけど、反撃するとあっさりと退却して行った。
「余りにも、脆すぎるね。何かの罠かな。ネイトスはどう思う」
「敵の戦力も少なかったですし、足止めするだけで精一杯なんじゃないでしょうかね」
「まあ、東西の敵軍も退却中だし、後ろを取られる事はないと思うけど……。国境を越えて前進するか、お城と相談してみようかな」
オリハルコンの鏡が設置してあるのは、土塁のある防御陣がある場所、そこまで飛んで行って、お城のブクイット達の司令本部と協議する。
「そうですな。主力の中央部隊が壊滅状態なら、国境を越えて進軍するのも良いかもしれませんな」
ブクイットは戦況全体を見て、進軍は可能だと言う。アルディアに至っては、今こそ国境を越えるべきだと主張する。
「リビティナ様。弾薬や物資の供給は国境を越えても大丈夫です。進軍するべきです」
「外交上はどうかな、エリーシア」
「攻め込んできたのはノルキア帝国ですので、国境を越えても問題ないでしょう。行ける所まで進軍してから、停戦交渉に臨めば良いと思います」
今後、帝国に攻め込ませないためにも、代償を払わせた方がいいだろうと言っている。
「でも、リビティナ様。怪我だけはなさいませんように」
「そうだね。里の人や徴兵の国民も戦場に出て来てもらっているからね。できるだけ犠牲が出ないようにするよ」
今回の戦争では、国民総動員令を出している。実際に戦場に出ない人も軍需物資の生産や運搬に携わっている。今後戦争を起こさせないためにも、ここは少し頑張って帝国に攻め込んだ方がいいだろうね。
時は少し遡り、魔族軍の砲撃部隊が帝国の飛行隊によって攻撃されたところから、リビティナ視点で話が始まります。
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「ルルーチア、怪我していないか!」
「兄さま、私は大丈夫よ。でも怖かったわ、こんな後方を狙ってくるなんて」
初陣のフィフィロとルルーチア。比較的安全な砲撃部隊を任せているけど、攻撃されたのは初めてで、少し慌てたようだね。
でもウィッチアと共に攻撃してきた飛行部隊は撃退した。やはりウィッチアは厄介だ。
「リビティナ様。あれが敵の飛行部隊ですか」
「弾道ミサイルを防いでいるのも、あの部隊なんだ。何とかしたいけど……」
――いくらボクでも単独で、大部隊の上空にいる飛行隊を落としに行く事はできないだろうね。
「ルルーチア達の砲撃部隊は、この位置から少し移動してくれるかい」
「はい、リビティナ様」
見つからないように林の中から砲撃しているけど、ここを探り当てられたからね。移動して隠れてもらおう。でも今回のような小規模の攻撃なら対応できそうだ。自陣の防衛もあるから、こちらに大量の飛行部隊を投入する事もできないでいるのかな。
それなら。
「フィフィロ君。最前線に移動してくれないか」
「でも、ルルーチアの砲撃部隊を守らないと」
「そのためにも、君が前に出るほうがいいんだよ」
この場所には、魔術師と弓部隊を増やそう。敵も飛び越えてここに来ることはできても、攻撃の際には魔法射程の位置まで降りて来る。そこを集中攻撃すればここは守られるさ。それはウィッチアも分かっているだろうし、次に敵が打つ手は……。
フィフィロと一緒に最前線へ移動すると、エルフィが出迎えて謝りに来た。
「フィフィロ、砲撃部隊が攻撃を受けたそうね。ごめんね。飛行部隊が飛んで行くのを見つけられなくて」
「いえ、高い所を飛んでましたし、オレ達も攻撃を受けるまで気づきませんでしたから」
エルフィには敵の様子を常に監視してもらっている。今回は少人数だったし見つけるのは無理だったかな。
「エルフィ。今度はこの最前線に敵の総攻撃がありそうなんだ」
「えっ、そうなの!」
「君はシームに乗って、後方に下がっていてくれるかい」
二日後。
「リビティナ様。敵が土塁に向かって突っ込んできます」
「それは後方の砲撃部隊に任せて、君達は今までと同じように土塁近くにいる敵に集中攻撃をしてくれ」
何組かは土壁のある所まで到達したようだね。
「リビティナ様。あれを!!」
「フィフィロ君! 氷魔法で対抗してくれ、最大魔力だ!!」
「は、はい!」
右手の一角で火属性の超巨大魔術が発動している。こちらも弓や魔術で攻撃しているけど炎の塊は大きくなる一方だ。ウィッチアか!
発動は遅れたけど、氷の生成速度はフィフィロの方が速い。超巨大魔術の炎が発射されると同時に、巨大に成長した氷の塊が飛んで行く。
上空でぶつかった超巨大魔術が相殺されていく。戦場の誰もが、その光景に目を見張り言葉を失う。
魔術が完全に相殺され辺り一帯が急に暗くなった。その静寂の戦場に、味方一万人の兵達による怒号のような勝ちどきの声がこだまする。
これなら勝てると、各部隊は前進して土塁の先にいる敵兵に向かって、攻撃を浴びせる。
「フィフィロ君! 大丈夫かい」
「だ、大丈夫です……リビティナ様。これでルルーチア達を守れましたか?」
「ああ、君のお陰だ」
魔力を使い果たしたフィフィロがリビティナの肩にもたれ掛かる。彼を救護兵に預けてリビティナも攻撃に参加する。
土塁近くにいた敵兵が全て後退した後、ネイトスを呼んだ。
「お城にいるブクイットに連絡を入れてくるよ。ネイトスは砲撃部隊に、最前線近くまで移動するように指示してくれ」
「へい、了解しました」
あれがウィッチアの切り札なんだろう。それを防いだ今、こちらの好機だ。
お城とオリハルコンの鏡で通信を行なう。
「リビティナ様。飽和攻撃をするんですね」
お城にいるアルディアと話をすると既に準備は終わっているらしい。単体で防がれるミサイルの運用を考えてアルディアが飽和攻撃を提案したそうだ。さすが転生者だ、対抗手段は知っていたようだね。
お城では敷地いっぱいに弾道ミサイルを設置し、同時に発射できる体勢になっている。後は東西の敵部隊への配分を決めて、お城に運んだ全ミサイルを明日の総攻撃で使い切ろう。
翌日の昼過ぎ、全ての準備は整った。お城からのミサイル攻撃と同時に前線部隊が土塁まで前進し敵陣に攻撃を仕掛ける。敵が乱れたところに、砲撃部隊のカノン砲五十門による一斉射撃を行う。
敵部隊の方が多いとはいえ、空と地上からの総攻撃には耐えられなかったようだね。
転進する敵に追撃を開始する。ここでもウィッチアが攻撃してきて進軍を妨害してくる。でも、こちらも一万の兵がいる、そうそう止められるものじゃないよ。
国境付近まで来ると、敵の国境防衛隊が駐屯していた。防衛隊からの攻撃を受けたけど、反撃するとあっさりと退却して行った。
「余りにも、脆すぎるね。何かの罠かな。ネイトスはどう思う」
「敵の戦力も少なかったですし、足止めするだけで精一杯なんじゃないでしょうかね」
「まあ、東西の敵軍も退却中だし、後ろを取られる事はないと思うけど……。国境を越えて前進するか、お城と相談してみようかな」
オリハルコンの鏡が設置してあるのは、土塁のある防御陣がある場所、そこまで飛んで行って、お城のブクイット達の司令本部と協議する。
「そうですな。主力の中央部隊が壊滅状態なら、国境を越えて進軍するのも良いかもしれませんな」
ブクイットは戦況全体を見て、進軍は可能だと言う。アルディアに至っては、今こそ国境を越えるべきだと主張する。
「リビティナ様。弾薬や物資の供給は国境を越えても大丈夫です。進軍するべきです」
「外交上はどうかな、エリーシア」
「攻め込んできたのはノルキア帝国ですので、国境を越えても問題ないでしょう。行ける所まで進軍してから、停戦交渉に臨めば良いと思います」
今後、帝国に攻め込ませないためにも、代償を払わせた方がいいだろうと言っている。
「でも、リビティナ様。怪我だけはなさいませんように」
「そうだね。里の人や徴兵の国民も戦場に出て来てもらっているからね。できるだけ犠牲が出ないようにするよ」
今回の戦争では、国民総動員令を出している。実際に戦場に出ない人も軍需物資の生産や運搬に携わっている。今後戦争を起こさせないためにも、ここは少し頑張って帝国に攻め込んだ方がいいだろうね。
応援ありがとうございます!
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