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第3章
第58話 帝国から逃げてきた兵士2
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町に行っていた、ミルチナ達がエアバイクに乗って戻って来た。服や食料など買って来てくれている。
「言われた通り別の依頼で、メアリィさんが町を出るって言ってきました」
ここからなら、急げばリザードマンが住む町まで半日で行けるだろう。今夜か明日の朝には着ける。そこから引き返して明日中にはここに戻ってこれるはず。それまでミルチナには調査の続きと言って町に残ってもらう。
「ティノス。支度ができたらこれに乗りなさい。すぐに出発するわよ」
「エアバイクか……。よくこんな物を個人が所有できるものだな」
まあ、借り物でお店に置いている物だけどね。 ティノス兄妹はあまり食事もしてなかったようだけど、ミルチナがバイクに乗りながらでも食べられる物を買って来てくれている。
妹さんを私の後ろに、サイドカーにティノスを乗せて出発する。
「速いな。エアバイクとはこんなにも速く走れるものなのか」
帝国軍にもエアバイクはあるらしいけど、乗った事は無いと言っている。魔道具も一般家庭だとランプぐらいしかないらしい。
その日は町に着けず、街道近くで野営した。身の上を聞くとやはり帝国での生活は苦しいらしい。それでも兵士であるティノスはましな方だと言う。
私も王国の行政の仕組みなどを教えたけど、難民などを扱う部署は知らない。
でもこれで怪しまれず宿屋に泊まる程度はできるでしょう。
「リザードマンが多い町だけど、慎重に事を進めないとすぐ捕まっちゃうわよ」
「ありがとうございました。後は私達で何とかやってみます」
妹さんが笑顔で応えてくれた。
翌朝、町に到着して私は、病気の親御さんを見舞うために急遽二人を運んできたと言って町に入った。
「ありがとうございました」
妹さんは、お礼を言って頭を下げたけど、ティノスは金を払ったんだから当然だと言っている。まあ、いいわ。
「頑張りなさいよ」
そう言って別れて、私はミルチナの待つ町へ向かう。今日中に帰って本当の依頼の方を片付けないとね。
その後は予定通り、川の水や土などのサンプルを王都に持ち帰った。
お店に帰ってシンシアに、王国に逃げてきた帝国兵の兄妹の事を話した。
「まあ、そんな事があったの。でもね社長! そんなリスクを冒して帝国兵士を匿うなんて事を今後はしないでくださいね」
「ごめんね、シンシア。村人達が殺されるかもしれないと聞いて、どうしてもね」
「まあ、社長がそういう人だというのは知ってはいますけど。実際にミルチナちゃんも人質に取られて脅されたのは事実ですので、衛兵が来ても私達は被害者だと言い張る事はできますけど」
「え~。衛兵が来ちゃうの」
「送り届けたヌンキの町で、その元帝国兵が捕まって全部話しちゃうと、そうなりますね」
これはまずいわね。でも人の命には代えられないし……。
「私も新婚旅行中、帝国の良くない噂は聞いたわ。帝国内は相当荒れているようですよ。レグルス国の人は、昔みたいに帝国が攻めてくるんじゃないかって言う人もいたのよ」
レグルス国は東にあるダークエルフ族の国と同盟を結んでいる。王国とも友好的な関係なので帝国が攻めてくる事は無いと思うけど、情勢が不安定になると、レグルス国も影響はあるでしょうね。
「シンシア。グランと相談できないかな。こういう話は元貴族のグランの方が詳しいでしょう」
「そうね、グランなら今回の事も秘密にしてくれると思うし、今晩、家に来る?」
シンシアの言葉に甘えて、今後、あの子達がどんなふうになるのか聞いてみよう。シンシアの家で食事をしながら相談をする。
「なるほどな。メアリィ店長も知っていると思うが帝国と王国は一切の付き合いがない。王国がその帝国の国民を受け入れることはないな」
「そうでしょうね。じゃああの子達はどうなるのかしら」
「可哀想だが帝国に送り返すことになる」
すると、村人達は帝国内を逃げ回る事になるわね。
「しかし、メアリィ店長が連れて行ったヌンキという町の町長は、元帝国貴族の家系の者だ。町は代々その者達によって治められている」
「だからリザードマンが多いのね」
「政策は公平で元帝国人のための町ではないが、住民の半数位はリザードマンだな。その町長とは王都で何度か会っているが立派な方だったな」
グランは、王都で行われた貴族のパーティーに出席していた町長と話をしたそうだ。軍人気質で物事をはっきりと言う人のようで、グランとは気が合ったという。
「ヌンキの町長か町の誰かが、その逃げてきた者達の身元引受人となって一時保護して、その後レグルス国に送り出すことは可能かもしれんな」
王国で難民を受け入れることは無いけど、レグルス国は今も帝国からの難民を受け入れている。
「そんな事ができるの?」
「あくまで、緊急避難としてヌンキの町長と国が了解してくれたらの話だ。まあ、少し調べてみるよ」
「ありがとう。グラン」
やはり元貴族と言うだけあって、こういう事は頼りになるわね。シンシアも尊敬のまなざしで見てるわよ。いい点数稼ぎになるんだからグランには頑張ってもらいたいわね。
その後、グランの頑張りもあったお陰か、国境に居た帝国の村人たちは保護されて、無事レグルス国へ入れたと言う。
「この国は平和だけど、余所じゃそうでもないのね」
「拙者の国も紛争は絶えんな。国境付近での小さな争いは毎度のことだ。王国のように平和で発展した国になりたいものだ」
「あの兄妹の人、幸せに暮らせるといいんですけど」
ミルチナは妹さんと話して気が合ったみたいね。
無事レグルス国に入ったとしても難民としての暮らしが待っている。住む所も食料も最低限で、暮らしていくのは大変かもしれないわね。
「妹さんもしっかりしていたし、兄妹、力を合わせて何とかやっていくでしょう」
折角助かったんだから、幸せに生きて欲しいわね。
「言われた通り別の依頼で、メアリィさんが町を出るって言ってきました」
ここからなら、急げばリザードマンが住む町まで半日で行けるだろう。今夜か明日の朝には着ける。そこから引き返して明日中にはここに戻ってこれるはず。それまでミルチナには調査の続きと言って町に残ってもらう。
「ティノス。支度ができたらこれに乗りなさい。すぐに出発するわよ」
「エアバイクか……。よくこんな物を個人が所有できるものだな」
まあ、借り物でお店に置いている物だけどね。 ティノス兄妹はあまり食事もしてなかったようだけど、ミルチナがバイクに乗りながらでも食べられる物を買って来てくれている。
妹さんを私の後ろに、サイドカーにティノスを乗せて出発する。
「速いな。エアバイクとはこんなにも速く走れるものなのか」
帝国軍にもエアバイクはあるらしいけど、乗った事は無いと言っている。魔道具も一般家庭だとランプぐらいしかないらしい。
その日は町に着けず、街道近くで野営した。身の上を聞くとやはり帝国での生活は苦しいらしい。それでも兵士であるティノスはましな方だと言う。
私も王国の行政の仕組みなどを教えたけど、難民などを扱う部署は知らない。
でもこれで怪しまれず宿屋に泊まる程度はできるでしょう。
「リザードマンが多い町だけど、慎重に事を進めないとすぐ捕まっちゃうわよ」
「ありがとうございました。後は私達で何とかやってみます」
妹さんが笑顔で応えてくれた。
翌朝、町に到着して私は、病気の親御さんを見舞うために急遽二人を運んできたと言って町に入った。
「ありがとうございました」
妹さんは、お礼を言って頭を下げたけど、ティノスは金を払ったんだから当然だと言っている。まあ、いいわ。
「頑張りなさいよ」
そう言って別れて、私はミルチナの待つ町へ向かう。今日中に帰って本当の依頼の方を片付けないとね。
その後は予定通り、川の水や土などのサンプルを王都に持ち帰った。
お店に帰ってシンシアに、王国に逃げてきた帝国兵の兄妹の事を話した。
「まあ、そんな事があったの。でもね社長! そんなリスクを冒して帝国兵士を匿うなんて事を今後はしないでくださいね」
「ごめんね、シンシア。村人達が殺されるかもしれないと聞いて、どうしてもね」
「まあ、社長がそういう人だというのは知ってはいますけど。実際にミルチナちゃんも人質に取られて脅されたのは事実ですので、衛兵が来ても私達は被害者だと言い張る事はできますけど」
「え~。衛兵が来ちゃうの」
「送り届けたヌンキの町で、その元帝国兵が捕まって全部話しちゃうと、そうなりますね」
これはまずいわね。でも人の命には代えられないし……。
「私も新婚旅行中、帝国の良くない噂は聞いたわ。帝国内は相当荒れているようですよ。レグルス国の人は、昔みたいに帝国が攻めてくるんじゃないかって言う人もいたのよ」
レグルス国は東にあるダークエルフ族の国と同盟を結んでいる。王国とも友好的な関係なので帝国が攻めてくる事は無いと思うけど、情勢が不安定になると、レグルス国も影響はあるでしょうね。
「シンシア。グランと相談できないかな。こういう話は元貴族のグランの方が詳しいでしょう」
「そうね、グランなら今回の事も秘密にしてくれると思うし、今晩、家に来る?」
シンシアの言葉に甘えて、今後、あの子達がどんなふうになるのか聞いてみよう。シンシアの家で食事をしながら相談をする。
「なるほどな。メアリィ店長も知っていると思うが帝国と王国は一切の付き合いがない。王国がその帝国の国民を受け入れることはないな」
「そうでしょうね。じゃああの子達はどうなるのかしら」
「可哀想だが帝国に送り返すことになる」
すると、村人達は帝国内を逃げ回る事になるわね。
「しかし、メアリィ店長が連れて行ったヌンキという町の町長は、元帝国貴族の家系の者だ。町は代々その者達によって治められている」
「だからリザードマンが多いのね」
「政策は公平で元帝国人のための町ではないが、住民の半数位はリザードマンだな。その町長とは王都で何度か会っているが立派な方だったな」
グランは、王都で行われた貴族のパーティーに出席していた町長と話をしたそうだ。軍人気質で物事をはっきりと言う人のようで、グランとは気が合ったという。
「ヌンキの町長か町の誰かが、その逃げてきた者達の身元引受人となって一時保護して、その後レグルス国に送り出すことは可能かもしれんな」
王国で難民を受け入れることは無いけど、レグルス国は今も帝国からの難民を受け入れている。
「そんな事ができるの?」
「あくまで、緊急避難としてヌンキの町長と国が了解してくれたらの話だ。まあ、少し調べてみるよ」
「ありがとう。グラン」
やはり元貴族と言うだけあって、こういう事は頼りになるわね。シンシアも尊敬のまなざしで見てるわよ。いい点数稼ぎになるんだからグランには頑張ってもらいたいわね。
その後、グランの頑張りもあったお陰か、国境に居た帝国の村人たちは保護されて、無事レグルス国へ入れたと言う。
「この国は平和だけど、余所じゃそうでもないのね」
「拙者の国も紛争は絶えんな。国境付近での小さな争いは毎度のことだ。王国のように平和で発展した国になりたいものだ」
「あの兄妹の人、幸せに暮らせるといいんですけど」
ミルチナは妹さんと話して気が合ったみたいね。
無事レグルス国に入ったとしても難民としての暮らしが待っている。住む所も食料も最低限で、暮らしていくのは大変かもしれないわね。
「妹さんもしっかりしていたし、兄妹、力を合わせて何とかやっていくでしょう」
折角助かったんだから、幸せに生きて欲しいわね。
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