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第3章
第59話 セイランからの相談
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「メアリィ殿、少し相談があるのだが」
仕事が終わって、セイランが私を呼び止めた。何か深刻な話なのか顔が曇っている。1階にある応接室で話を聞いてみる。
「実は国元より連絡がきて、次の船で帰って来るように言われている」
セイランは、アルガルド大陸の鬼人族が治めるモリオン国から来ている。技術や商業の進んだ王国を視察するため、わざわざこの国へと渡って来た。
「いつか帰ってしまうのは分かっていたけど、次の船というと、あと何日後なの」
「2週間後となる」
ポツリとセイランが言う。新大陸への貨物船は年8回、1ヵ月に1度定期的に王都近くの港から出ている。
「拙者は、メアリィ殿とユイト殿に命を助けられた。おふた方に仕えるつもりでいたが、そうもいかないようだ」
「なに言ってるのよ。今まででも十分に私達の役に立ってくれたじゃない。国が帰って来いって言ってるなら、そうしないと。それがあなたの仕事なんでしょう」
セイランは今までも仕事として、船が出るたびに王国視察の報告書を国へ送っていたという。
「拙者はこのまま、この国に居られるものと勘違いをしていたようだ」
「故郷には御家族もいるんでしょう」
「親兄弟はいるが、この国へ行くことが決まった際に別れは済ませてある」
遠い大陸への旅は安全ではない。現にセイランが乗ってきた船は嵐で座礁し沈没してしまっている。船が海の魔物に襲われたと言う話も聞く。
「故郷に帰れるんだから、そんな暗い顔しないで、これからの事を考えましょう。お店の事は何とかなるから」
セイランが抜けると、お店としては痛手だ。でもそんな事は言ってられない。
「セイランが辞める前に新しい従業員を雇うわ。その指導をしてくれるかしら」
「承知した。それとユイト殿のお父上ともう一度お会いしたいのだが都合はつくだろうか」
「そうね、ユイトに聞いてみないといけないけど、たぶん大丈夫じゃないかしら」
キイエ様に乗せてもらえるなら1日で行くことができるから、お店の方は何とかなるわ。
船に乗るだけなので、他に準備するような事はあまりないそうだ。出発の1日前に退社する事にして、都合の良い日に休みを取ってユイトと一緒にシャウラ村に行ってもらう事になった。
翌日。みんなにセイランがお店を辞めることを伝える。
「えぇ~。セイラン辞めちゃうの~」
「すまぬな。ユイト殿」
「そうよ、国での仕事があるんだから、無理に引き留めたら返って迷惑になるわ」
「折角仲良くなれたのに、あたしも寂しいです」
「拙者もミルチナ殿の料理が食べれなくなると思うと、残念でならない」
「まあ、まあ、そうは言ってもまだ2週間ありますからね。社長、今日にも従業員の募集をしておきますね」
「そうね。セイランの代わりになるような剣士は見つからないかもしれないけど、ユイト以上に働ける人ならいくらでもいるでしょう」
「ええ~。それって酷いよね。ボクちゃんと働けてるよね」
「はい、はい。まあ、そう言う事にしておきましょう」
その3日後、私のお店で働きたいと言う人がやって来た。
「役所で聞いて来たんだが、魔獣討伐の仕事があるそうだな」
「ええ、あなたは魔獣討伐の経験はあるのかしら」
「俺は、町の間を運行している旅馬車の護衛をしていた。魔獣は今まで何匹も倒している」
私がこの王都に初めて来た時に乗った馬車の護衛さんの仕事ね。あの時も魔獣を鮮やかに倒していたわね。
この人は町を渡り歩く仕事を辞めて一つの町で生活したいと、王都にやって来たそうだ。経験者ならちょうどいいわ。
「早速明日、街道沿いの魔獣討伐の仕事があるのよ。来てくれるかしら」
「ああ。じゃあ準備して明日の鐘2つ半に、ここに来ればいいんだな」
「ええ、お願いするわ」
一応、アルバイトとして雇って、様子を見てから社員として雇うという事にした。案外早く見つかって良かったわ。
翌日。新人さんをみんなに紹介して軍用列車に乗り込む。
「ほう、こんな列車に乗せてもらえるのか」
町への移動は馬車しか知らないようで、列車に興味津々のようだ。
「今日は、軍の人と一緒のお仕事だから乗せてもらえるのよ」
ユイトはキイエ様と一緒に、先に現地へ向かってもらっている。セイランとミルチナと今日の打ち合わせを列車内でする。
新人さんは鎧に大きな盾とショートソードを持った前衛タイプだ。今までも3人1組で護衛をしていて、チームで連携して魔獣を倒していたと言っている。
「一番後ろでミルチナに監視をしてもらうわ。その前に私が位置して指示を出すから、あなたは前で魔獣たちを食い止めてくれる」
「俺はこの鬼人の代わりをすればいいのだろう」
「今日は拙者が横に付く。ユイト殿と前を任せるのでよろしく頼む」
「ああ、任しておけ。今までと同じ様な仕事だ」
「無茶して怪我しないようにしてね。今日は前衛や私達の動きをしっかりと見てくれたらいいから」
ベテランのようだし、ある程度任せても大丈夫なようね。
現地に到着して、軍から任された区画に行って早速討伐を始める。先に到着していたキイエ様を見て驚いていたわね。そりゃ初めて見るドラゴンですものびっくりするわよね。
そして横にいた機動甲冑に目を留める。
「お、おい。このでかい鉄の塊のような鎧はなんだ」
「朝会ったユイトよ。この甲冑を着て戦っているのよ」
「あの、人族の小さな小僧なのか」
ユイトが仮面を跳ね上げて顔を見せる。まあ、驚くのも無理ないけど、只の大きな甲冑と同じよ。
「左の方に、ファウンドウルフが8匹。右の奥にも大型の牛の魔獣が3頭います」
ミルチナが、森の中の魔獣を見つけてくれた。
「じゃあ、先にファウンドウルフを左の平原に誘導するわ。牛魔獣を刺激しないようにしましょう。ミルチナはキイエ様の足元で監視をお願いね」
打ち合わせ通り前衛3人で行動してもらう。
「じゃあ、セイラン達は前の平原に移動してくれる」
配置についたところで、森に向かって魔法を放つ。予定通り魔獣を前衛に誘導する。セイランとユイトが魔弾で攻撃するけど、そういえば新人さんは魔弾銃を持ってなかったわね。
「まあいいわ。盾代わりになってくれるなら」
数は減らしたけど4匹が前衛に襲い掛かる。セイランは新人さんに指示しているけど直接戦闘には加わっていない。
ユイトが2匹、新人さんが2匹を相手にする。
「何とか持ちこたえてるわね。後は魔法で倒していけば……」
「右から牛の魔獣! 3頭が接近しています」
こちらの戦闘の音に驚いて森から出てきたようね。
「セイラン、ユイト! 右をお願い」
ファウンドウルフは残り3匹。それよりも先に牛を止めないと。
ユイトが高速で走り先頭の牛を食い止めた。セイランが走ってくる牛の首をひと振りで斬り飛ばす。
「グランドシールド!」
もう1頭の目の前に土の壁を出現させる。でも牛の勢いが強い。シールドを破壊して新人さんの方に近づいて行く。
私はジェットブーツで魔獣に近づき、側面から目を狙い魔法攻撃する。魔獣はこちらに攻撃目標を変えたようね。
スピードでは負けないわ。走りながら攻撃しているとユイトが駆けつけてくれた。大きな剣を振り回して牛魔獣を倒してくれる。
新人さんはファウンドウルフを2匹倒して、もう1匹と格闘している。魔法で牽制して新人さんから離す。
セイランが新人さんの援護に向かってくれて、最後の1匹を倒してくれた。
「大丈夫? 怪我はない」
「ああ、俺はかすり傷程度だ」
肩で息をしている新人さんに、治療しているとミルチナが魔獣を見つけたようだ。
「この先の森に灰色熊の魔獣がいるの。あなたは付いて来れるかしら」
「いや、少し休憩したい。すまんな」
まあ、まだ慣れていないものね。キイエ様をここに呼んでミルチナと一緒に監視してもらいましょう。
「ここなら安全だから、待っていてちょうだい」
3人で森に入り、熊の魔獣を倒してキイエ様の近くまで運ぶ。魔獣の解体は新人さんも手伝ってくれて助かったわ。やっぱり人手があるとスムーズに仕事が運ぶわね。このまま、社員になって欲しいものだわ。
仕事が終わって、セイランが私を呼び止めた。何か深刻な話なのか顔が曇っている。1階にある応接室で話を聞いてみる。
「実は国元より連絡がきて、次の船で帰って来るように言われている」
セイランは、アルガルド大陸の鬼人族が治めるモリオン国から来ている。技術や商業の進んだ王国を視察するため、わざわざこの国へと渡って来た。
「いつか帰ってしまうのは分かっていたけど、次の船というと、あと何日後なの」
「2週間後となる」
ポツリとセイランが言う。新大陸への貨物船は年8回、1ヵ月に1度定期的に王都近くの港から出ている。
「拙者は、メアリィ殿とユイト殿に命を助けられた。おふた方に仕えるつもりでいたが、そうもいかないようだ」
「なに言ってるのよ。今まででも十分に私達の役に立ってくれたじゃない。国が帰って来いって言ってるなら、そうしないと。それがあなたの仕事なんでしょう」
セイランは今までも仕事として、船が出るたびに王国視察の報告書を国へ送っていたという。
「拙者はこのまま、この国に居られるものと勘違いをしていたようだ」
「故郷には御家族もいるんでしょう」
「親兄弟はいるが、この国へ行くことが決まった際に別れは済ませてある」
遠い大陸への旅は安全ではない。現にセイランが乗ってきた船は嵐で座礁し沈没してしまっている。船が海の魔物に襲われたと言う話も聞く。
「故郷に帰れるんだから、そんな暗い顔しないで、これからの事を考えましょう。お店の事は何とかなるから」
セイランが抜けると、お店としては痛手だ。でもそんな事は言ってられない。
「セイランが辞める前に新しい従業員を雇うわ。その指導をしてくれるかしら」
「承知した。それとユイト殿のお父上ともう一度お会いしたいのだが都合はつくだろうか」
「そうね、ユイトに聞いてみないといけないけど、たぶん大丈夫じゃないかしら」
キイエ様に乗せてもらえるなら1日で行くことができるから、お店の方は何とかなるわ。
船に乗るだけなので、他に準備するような事はあまりないそうだ。出発の1日前に退社する事にして、都合の良い日に休みを取ってユイトと一緒にシャウラ村に行ってもらう事になった。
翌日。みんなにセイランがお店を辞めることを伝える。
「えぇ~。セイラン辞めちゃうの~」
「すまぬな。ユイト殿」
「そうよ、国での仕事があるんだから、無理に引き留めたら返って迷惑になるわ」
「折角仲良くなれたのに、あたしも寂しいです」
「拙者もミルチナ殿の料理が食べれなくなると思うと、残念でならない」
「まあ、まあ、そうは言ってもまだ2週間ありますからね。社長、今日にも従業員の募集をしておきますね」
「そうね。セイランの代わりになるような剣士は見つからないかもしれないけど、ユイト以上に働ける人ならいくらでもいるでしょう」
「ええ~。それって酷いよね。ボクちゃんと働けてるよね」
「はい、はい。まあ、そう言う事にしておきましょう」
その3日後、私のお店で働きたいと言う人がやって来た。
「役所で聞いて来たんだが、魔獣討伐の仕事があるそうだな」
「ええ、あなたは魔獣討伐の経験はあるのかしら」
「俺は、町の間を運行している旅馬車の護衛をしていた。魔獣は今まで何匹も倒している」
私がこの王都に初めて来た時に乗った馬車の護衛さんの仕事ね。あの時も魔獣を鮮やかに倒していたわね。
この人は町を渡り歩く仕事を辞めて一つの町で生活したいと、王都にやって来たそうだ。経験者ならちょうどいいわ。
「早速明日、街道沿いの魔獣討伐の仕事があるのよ。来てくれるかしら」
「ああ。じゃあ準備して明日の鐘2つ半に、ここに来ればいいんだな」
「ええ、お願いするわ」
一応、アルバイトとして雇って、様子を見てから社員として雇うという事にした。案外早く見つかって良かったわ。
翌日。新人さんをみんなに紹介して軍用列車に乗り込む。
「ほう、こんな列車に乗せてもらえるのか」
町への移動は馬車しか知らないようで、列車に興味津々のようだ。
「今日は、軍の人と一緒のお仕事だから乗せてもらえるのよ」
ユイトはキイエ様と一緒に、先に現地へ向かってもらっている。セイランとミルチナと今日の打ち合わせを列車内でする。
新人さんは鎧に大きな盾とショートソードを持った前衛タイプだ。今までも3人1組で護衛をしていて、チームで連携して魔獣を倒していたと言っている。
「一番後ろでミルチナに監視をしてもらうわ。その前に私が位置して指示を出すから、あなたは前で魔獣たちを食い止めてくれる」
「俺はこの鬼人の代わりをすればいいのだろう」
「今日は拙者が横に付く。ユイト殿と前を任せるのでよろしく頼む」
「ああ、任しておけ。今までと同じ様な仕事だ」
「無茶して怪我しないようにしてね。今日は前衛や私達の動きをしっかりと見てくれたらいいから」
ベテランのようだし、ある程度任せても大丈夫なようね。
現地に到着して、軍から任された区画に行って早速討伐を始める。先に到着していたキイエ様を見て驚いていたわね。そりゃ初めて見るドラゴンですものびっくりするわよね。
そして横にいた機動甲冑に目を留める。
「お、おい。このでかい鉄の塊のような鎧はなんだ」
「朝会ったユイトよ。この甲冑を着て戦っているのよ」
「あの、人族の小さな小僧なのか」
ユイトが仮面を跳ね上げて顔を見せる。まあ、驚くのも無理ないけど、只の大きな甲冑と同じよ。
「左の方に、ファウンドウルフが8匹。右の奥にも大型の牛の魔獣が3頭います」
ミルチナが、森の中の魔獣を見つけてくれた。
「じゃあ、先にファウンドウルフを左の平原に誘導するわ。牛魔獣を刺激しないようにしましょう。ミルチナはキイエ様の足元で監視をお願いね」
打ち合わせ通り前衛3人で行動してもらう。
「じゃあ、セイラン達は前の平原に移動してくれる」
配置についたところで、森に向かって魔法を放つ。予定通り魔獣を前衛に誘導する。セイランとユイトが魔弾で攻撃するけど、そういえば新人さんは魔弾銃を持ってなかったわね。
「まあいいわ。盾代わりになってくれるなら」
数は減らしたけど4匹が前衛に襲い掛かる。セイランは新人さんに指示しているけど直接戦闘には加わっていない。
ユイトが2匹、新人さんが2匹を相手にする。
「何とか持ちこたえてるわね。後は魔法で倒していけば……」
「右から牛の魔獣! 3頭が接近しています」
こちらの戦闘の音に驚いて森から出てきたようね。
「セイラン、ユイト! 右をお願い」
ファウンドウルフは残り3匹。それよりも先に牛を止めないと。
ユイトが高速で走り先頭の牛を食い止めた。セイランが走ってくる牛の首をひと振りで斬り飛ばす。
「グランドシールド!」
もう1頭の目の前に土の壁を出現させる。でも牛の勢いが強い。シールドを破壊して新人さんの方に近づいて行く。
私はジェットブーツで魔獣に近づき、側面から目を狙い魔法攻撃する。魔獣はこちらに攻撃目標を変えたようね。
スピードでは負けないわ。走りながら攻撃しているとユイトが駆けつけてくれた。大きな剣を振り回して牛魔獣を倒してくれる。
新人さんはファウンドウルフを2匹倒して、もう1匹と格闘している。魔法で牽制して新人さんから離す。
セイランが新人さんの援護に向かってくれて、最後の1匹を倒してくれた。
「大丈夫? 怪我はない」
「ああ、俺はかすり傷程度だ」
肩で息をしている新人さんに、治療しているとミルチナが魔獣を見つけたようだ。
「この先の森に灰色熊の魔獣がいるの。あなたは付いて来れるかしら」
「いや、少し休憩したい。すまんな」
まあ、まだ慣れていないものね。キイエ様をここに呼んでミルチナと一緒に監視してもらいましょう。
「ここなら安全だから、待っていてちょうだい」
3人で森に入り、熊の魔獣を倒してキイエ様の近くまで運ぶ。魔獣の解体は新人さんも手伝ってくれて助かったわ。やっぱり人手があるとスムーズに仕事が運ぶわね。このまま、社員になって欲しいものだわ。
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