神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう

文字の大きさ
64 / 201
第二部 少年と王女と教皇と 第二章 決意の時

10.闇を切り裂き、駆け抜けろ!!

しおりを挟む
 ルシフに一方的に呼び出され、一方的に元の世界に戻った僕。

 ――今後もことあるごとにあの世界に連れ込まれるんじゃないだろうな。

 そんな心配も頭に浮かぶが、今はそれどころではない。
 アル王女達や、リラたちが『闇の獣』とでも呼ぶべき存在に囲まれていた。
 おそらく、『闇』と同じく剣は効かない相手だろう。

 ――どうする?

 確かにルシフの言うとおり、2ヶ所同時に助けることは今の僕には難しい。
 どちらを優先するか。
 命に優先順位なんてつけたくないけれど、それでも僕にとってはお母さんやリラやお師匠様の方が大切だ。
 それに、アル王女たちは大人だし、お母さんのように心を失っているわけじゃない。倒せないまでも逃げるくらいはできるかもしれない。

 ――よし。

 僕はリラ達の元へ駆け出し……
 
 ……しかし、すぐに足を止めざるをえなかった。
 僕の行く手を阻むように、10匹以上の『闇の獣』達が姿を現したのだ。

 ――どうする? 迂回するか!?

 が、気がついたときにはすでに前後左右囲まれていた。

 ――くそ、こいつら一体何のつもりだ!?

 考えるまでもない。ルシフの指示だ。
 僕をリラ達のところに行かせないための足止め。

『わかった。なら好きにしろ。そして後悔するがいい』

 ルシフが最後に言っていた台詞。

 ――こういうことかよっ!!
 リラ達の元へ帰り着いたとき、もはやお師匠様もリラもお母さんも『闇の獣』に食い殺され、僕は絶望する。それがヤツのやりたい演出!!

「ざっけんなぁぁぁ」

 僕は叫んで、『闇の獣』の中に飛び込む。

「うらぁぁぁぁ!!」

 襲いかかる『闇の獣』を殴って蹴って放り投げる。

 ――が。
 僕が暴れると周囲の木々が倒れる。

 それで冷静になる。

 ――だめだ。
 ――感情に身を任せるな。
 ――考えろ。考え抜け。
 ――今自分に何ができて、何をすべきなのか。
 お師匠様は何度もそう言っていたじゃないか。

 僕は大きく息を吸い込み、そして吐く。
 少しだけ冷静になれた。

 今すべきことはお師匠様達を助けること。
 ここで大暴れすることじゃない。

 ――だったら。

 僕は膝を折り曲げ、跳び上がる。
『闇の獣』達には羽がない。ならば上空から行けばいい。
 前後左右を封鎖されたからといって、迂回できないと考えるのは馬鹿だ。
 僕にはこの跳躍力があるんだから。

 よし。
 このまま小屋までひとっ跳び……

 ……と思った次の瞬間。

 目の前に、黒い影がたくさん現れる。

 ――カラス?

 瞬間、前世の世界の鳥を思うが、すぐに違うと気づく。
 確かに黒い鳥だが、大きさも形も様々だ。
 コックを真っ黒にしたようなヤツから、鷹を真っ黒にしたヤツもいる。

 ――つまり。

「『闇の鳥』か」

 人型の『闇』、四足歩行の『闇の獣』がいたのだ。だったら『闇の鳥』がいたっておかしくはない。
 だがどうする。空中では身動きがほとんど取れない。

 ――しかたない!!

 僕は左手から漆黒の刃を伸ばし、ヤツラの群れを切り開く!!
 何匹かは消滅し、何匹かは地面に落ちる。

 だが、多勢に無勢。すぐに僕の四方八方から『闇の鳥』が襲いかかる。
 尖ったくちばしで突かれ、鋭い爪で引っかかれ、僕の軌道は大きくずれて地面に落下する。

「くそっ」

『闇』に刺された右腕も、『闇の鳥』につけられた傷も、落下の衝撃も、全部痛かった。
 でも、まだだ。
 まだ耐えらえる。

 僕は周囲を見回す。
 見覚えはある。
 3ヶ月走り回った場所だ。
 小屋まで全力で走れば5分もかからない。
 周囲に『闇の獣』はいない。『闇の鳥』達も上空を旋回しているだけだ。

 ――なら、今度は地上を駆ける!!

 そう思って、僕が走り出そうとしたときだった。

 小屋の方から、ものすごい光が広がった。

 ---------------

 その光はとてもまぶしかった。
 その光はとても神々しかった。
 その光はとても力強かった。
 その光はとても熱かった。
 その光は、命の輝きだった。

 ――なに?
 ――何が起きているの?

 僕の胸の中に、なぜだかとても嫌な予感が漂う。

「くそっ」

 ――リラ、お母さん、お師匠様、無事でいて!!

 僕は森の中を駆ける。
 光は徐々に弱まっていく。
 先ほどまでの力強さはすでになく、儚く消えていく。

 急げ。
 急げ。
 急げ、急げ、急げ。

 僕は駆ける。

 小屋まであと1キロ。
 偶然、アル王女達と合流した。
 どうやら無事だったらしい。
 彼女たちも、あの光を見て急ぎやってきたようだ。

「パドか、一体何があった!?」
「分かりません。とにかく急がないと」

 僕は言って駆け出す。
 アル王女とキラーリアさんがそれに続く。

 枢機卿ラミサルさんや教皇さんはついてこれないスピードだったので、少し遅れる。
 悪いけどかまっていられない。
 2人が『闇の獣』に襲われたら申し訳ないけど、今はリラ達の方が心配。

 それにしても、アル王女やキラーリアさんはすごい。
 僕の200倍の力をつかった走りに平気で着いてくる。
 アル王女は10倍の力を持っているらしいが、だとしても素晴らしい脚力だ。
 むしろ、僕がおいていかれそう。

 やがて、小屋にたどり着いたとき。

 僕の目に飛び込んできたのは倒れたお師匠様にすがりついて泣くリラと、その後ろで沈痛な面持ちをしているレイクさんだった。

 僕はふらふらした足取りでお師匠様に近づく。

「お師匠様? どうしたの、リラ、これ……」

 リラは答えない。
 ただ、涙を流し続けている。

「レイク殿、一体何が?」

 やっと追いついたらしきラミサルさんが、レイクさんに尋ねる。

「アラブシ先生は、命を燃やされました」

 ――命を燃やす。
 あの光は、お師匠様が命を燃やした光。
 理屈や原理なんて分からない。
 だけど、理解できることは――

「お師匠様!!」

 僕は叫んでお師匠様の顔を触る。
 リラは泣きながらお師匠様の顔をのぞき見る。

「……なんて顔をしているんだい、この馬鹿弟子どもが」

 言ったお師匠様の声は、今にも消え入りそうだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...