神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう

文字の大きさ
119 / 201
【番外編】それぞれの……

【番外編26】僕の歩く路

しおりを挟む
 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(一人称/バラヌ視点)

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 僕はずっと、自分は駄目な子なんだ、役立たずの子なんだって思っていた。
 魔力のない僕は、エルフの里でいらない子ども扱いで。

 だから、あの時。
『闇』に襲われて殺されそうになった時。
 僕は逃げようという気持ちがわかなかった。

 そんな僕を、お母さんが突き飛ばして助けてくれた。
 だけど、代わりにお母さんが刺されて死んだ。

 なんで、お母さんがそんなことをしたのか、僕には分からなかった。

 ---------------

 パドお兄ちゃんは、僕に魔力がなくてもできることがあるって教えてくれた。
 僕に生きる意味をくれたのはパドお兄ちゃんだ。

 僕の体には半分人族の血が流れている。
 パドお兄ちゃんと同じお父さんの血が。

 会ったことはないけれど、お父さんの名前はバズというらしい。
 僕の名前が、エルフとしては珍しく『バ』という濁る音から始まるのは、きっとお母さんがバズお父さんの名前からとったからだろう。

 パドお兄ちゃんがエルフの里から去る時、僕は言った。

「僕はお兄ちゃんと一緒に行きたい」

 深く考えたわけじゃない。
 エルフの里に、魔力を持たない僕の居場所はないと思っていたし、僕に生きる意味を教えてくれたのはパドお兄ちゃんだからだ。

 だけど、その先に待っていたのは――

 ---------------

 目の前の血みどろな光景に、僕は悲鳴を上げた。
 その直前に武器を持った兵士に追いかけられて、今度は部屋の中が血まみれで、もう、他にできることはなかった。

 エルフの里はかなり平和な世界だ。
 エルフ同士で殺し合うなんてことはない。
『闇』の襲来でたくさんのエルフが殺されたけど、それまでは本当に平和だった。

 僕は虐められていたけど、でも殺し合いなんていうのは考えたこともない話だった。

 その、殺し合いが、ここでは起きたのだ。

「ぎ、ぎやぁぁぁぁ」

 部屋の中に悲鳴が響き渡る。
 誰が上げた悲鳴か、なぜ悲鳴が上がったのか、僕には分からない。
 目をギュッと閉じて、耳を両手で塞いでいたから。
 それでも、その悲鳴は恐ろしいほどに僕の耳に入ってきて。

(もう嫌だ)

 たぶん、僕には刺激的すぎる状況で。
 だから、気がついたら僕はパドお兄ちゃんの腕の中で気を失っていた。

 ---------------

 しばらくして目を覚まして。
 パドお兄ちゃんとリラお姉ちゃんが真剣な口調で話をしていた。
 僕はどうしても口を出せなくて、だから気を失ったふりをし続けた。

「きっと、この後ももっともっと血は流れるわ」

 リラお姉ちゃんはそう言って、パドお兄ちゃんも同意した。

 これからももっと血が流れる。
 僕はきっと耐えられない。
 リラお姉ちゃんやパドお兄ちゃんも辛そうだけど、僕は2人以上に弱い。

 ――ああ、そうか。結局僕は、パドお兄ちゃんにとっても足手まといなんだな。

 そう思うと、悔しくて、悲しくて、心の中がジクジクと痛んだ。

 ---------------

「バラヌ、これから話すことをしっかりと聞いてほしい」

 そう言ってパドお兄ちゃんは僕に話をした。
 僕を教会っていうところに預けようと思っていると。

 正直、その時の僕は教会がどういう所なのかいまいち分かっていなかった。
 エルフは龍族と自然を奉っているけど、宗教という概念を持っていない。

 だから、僕に分かったのは、パドお兄ちゃんが『僕をこれ以上連れて行くのは無理だ』と判断したんだってことだけだった。

「僕はやっぱり、お兄ちゃんにとっても邪魔な子なの?」

 そう問いかけた僕に、パドお兄ちゃんは一瞬困った顔をして、だけどすぐに否定してくれた。

「そうじゃないよ。バラヌ。むしろ、君にとても大切なことを頼みたいんだ」

 それから、パドお兄ちゃんは語り出した。
 正直、半分以上は意味が分からなかった。
 それでも、僕が教会に行って頑張れば、パドお兄ちゃんやリラお姉ちゃんの役に立てるかもしれないってことは分かった。

 たぶん、このままパドお兄ちゃんについて行っても、僕は役立たずだ。
 それに、きっとさらに流れるという血に耐えることもできない。

 でも、僕にもできることがあると、パドお兄ちゃんは言ってくれた。
 僕に、これからのみちを示してくれた。
 お母さんも、ルアレさんも、エルフのおさ様も、誰も教えてくれなかった路を。

 だから僕は深く頷いて答えた。

「わかった。僕、頑張る」

 その先に、何が待っているかなんて分からなかったけど、自分が役立たずじゃないって言ってくれたパドお兄ちゃんの役に立ちたかったから。

 ---------------

「ラミサルさんは教会の偉い人なんでしょう? 色々勉強したいんです」

 そう言った僕を、パドお兄ちゃんとラミサルさんはビックリした様子で見た。
 パドお兄ちゃんはちょっと寂しそうにすら見えた。

 でも、僕は少しでも勉強したいと思った。
 パドお兄ちゃんの役に立つために。教会の中で力を付けるために。
 今はまだ何も分からないけど。

---------------

 パドお兄ちゃん達が王都に旅立つとき、僕はラミサルさん――いや、ラミサル様と共に見送った。

「バラヌ、ごめんな」

 パドお兄ちゃんは、そう言って僕を抱擁してくれた。
 なんでパドお兄ちゃんが僕に謝るんだろう。
 そう思ったけど、黙っていた。

「僕、頑張るよ。お兄ちゃん」

 僕がそうにパドお兄ちゃんの腕の中で言うと、パドお兄ちゃんは涙を流しだした。
 なぜか、僕も一緒になって泣いてしまった。

 ---------------

 それからしばらくの間、僕はラミサル様の元で修行させてもらった。

 ラミサル様は優しかった。
 甘やかしてはくれなかったけど、何もできない僕に、ちょっとずつ役目をくれた。
 それは、たとえば書類を隣の部屋に持って行くとか、誰かを呼んでくるとか、お水をくんでくるとか、そういった雑用ていどのことだ。

 そういうちょっとした仕事でも、僕はなかなか上手くこなせなかった。
 書類を運ぼうとして転んでぐちゃぐちゃにしてしまったり、誰かを呼びに行って迷子になってしまったり、お水をくもうとして廊下にこぼしてしまったり、そんなことを繰り返した。

 ラミサル様はそんな僕を叱った。

「どうして、自分で持ちきれないほどの書類を一度に運ぼうとするのですか? 二度に分けようとは思わなかったのですか?」
「道がわからないなら、もっとちゃんと確認してから行動しなさい」
「ほら、慌てて走るからです。もっとゆっくり落ち着いて行動する癖を身につけなさい」

 ラミサル様は甘い人じゃない。でも、決して理不尽に怒ったりもしない。
 魔無子まなこと言われ、役立たずと罵られることはない。
 代わりに、5歳だからと甘やかしてもくれない。
 僕が仕事をできるようになるまで、何度でも教えてくれるけれど、同じ失敗を2度も3度もしたら叱ってくれる。

 だんだんと、僕は思い知る。
 自分にはできないことがたくさんあるのだと。

 エルフの里にいたころは、自分に魔力が無いからダメなんだと思っていた。
 そして、魔力がないのは自分のせいじゃないんだから仕方がないじゃんかと、ある意味開き直ってもいた。

 だけど、書類を運ぶのにも、人を探すのにも、お水を運ぶのにも魔力は関係ない。
 ラミサル様がやっている、文字を書いたり、計算をしたり、人に指示を与えたりするお仕事だってそうだ。

 だけど、僕はラミサル様みたいには動けない。
 僕はできないことだらけで、それは決して魔力が無いからじゃない。
 そんな言い訳は通用しない。
 だって、ラミサル様はともかく、他の人族のほとんどは魔力なんて無くてもちゃんと仕事が出来ているんだから。

 ---------------

 僕は自分の力のなさをいやってほど知った。
 だけど、ここに来てできるようになったこともある。
 パドお兄ちゃんと別れて、15日くらい経った今では、書類を運ぶのには慣れたし、館の中で迷子になることもなくなったし、コップのお水をこぼすこともなくなった。

 そして、今日、僕はラミサル様と共に王都に旅立つ。
 僕はこれから、王都で洗礼を受け、その後しんがつこうに入学して、神父になるための本格的な勉強を始める。

「では行きましょう、バラヌ」
「はい」

 僕はそう言って、ラミサル様の後に続く。

「自信を持ちなさい、バラヌ。あなたはその幼さで十分に立派なのですから」
「そうでしょうか」

 僕にはよく分からない。
 この15日、結局僕は足手まといにしかなっていなかったと思うし。
 パドお兄ちゃんやリラお姉ちゃんのように立派な行動ができているとも思えない。

「世の5歳児は、そうやって敬語で話して頭を下げることすらできないものですよ。あなたはとても優秀な子です。この15日、よく頑張りましたね」

 ラミサル様はそういって、僕の頭をそっと撫でてくれた。

 そして、僕は歩み始める。
 僕の歩むべきみちを。

 パドお兄ちゃんが示し、ラミサル様が導いてくれたその先へ。

 ――だけど。

 僕らを王都で待っていたのは、想像もしない大事件だったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...