神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう

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第四部 少年少女と王侯貴族達 第三章 王位継承戦

7.御前の戦い その6 ナゼ、許スノ?

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 ルシフ。
 どこかで介入してくるかもしれないとは思っていた。
 だが、どこで介入してくるか、見当がついていなかった。

 そもそもヤツの目的は、世界を滅ぼすこと。
 ならば、むしろ王位継承戦を複雑化させる方向で動くのではないかと思っていた。
 どちらかといえば、フロール王女かテキルース王子の裏にルシフがいるのではないかと。

 だが、違った。
 ルシフが介入していた相手はテミアール王妃だったのだ。

 考えてみれば。

 アル王女に僕の神託を教えたのは彼女だ。
 しかも、アル王女達が教皇や異端審問官とほぼ同日にたどり着くという、今考えればあり得ない偶然。
 すべてはテミアール王妃が裏で調節していたからなのか。

 いや、違う。
 操っていたのはテミアール王妃じゃない。
 その裏にいる存在だ。

『闇』と化したテミアール王妃。
『彼女』がまず狙うのは誰だ!?

 自分の子どもを殺した、テキルース王子か、フロール王女か、それとも助けてくれなかった国王陛下か。
 いや、違う。
 ルシフとの契約で必要なのはっ!!

 僕は駆ける。
 先手を取るのだ。
『彼女』の。

 ルシフとの契約は、愛する者の死が必要。
 リリィはダルトさんを殺した。

 ならば、テミアール王妃は。
『彼女』の指が突き進む。

 彼女の実父――教皇に向かって。
 僕は教皇の前に立つ。

「ダメだっ!!」

 僕は叫び、右手に漆黒の刃を発現する。
 教皇へと迫る指を切り落とす。

 自分の娘が『闇』と化すのをみて、さすがに教皇も混乱している様子だ。

「パドくん。これは一体!? テミアールは……まさか、『闇』とは」

 そういえば、教皇は知らなかったんだっけ。

「『闇』は人です。愛する者を殺すという契約をルシフとしたものだけがなる、そういう存在」
「そんな……」

 教皇は震える。

 だが、『彼女』の行動はさらに続く。

 部屋の中央に浮かび上がり、10本の指を四方八方――いや、十方に伸ばす。

 ――惨劇。
 まさに、そうとしか言い様がない。
 その場にいた貴族達が次々と『彼女』の指に貫かれていく。

 アル王女は無事。だが、アル王女は今回ルシフからもらった大剣を持っていない。
 レイクさんはキラーリアさんに庇われている。『闇』への対抗手段を持たないのに、キラーリアさんは相変わらず人間をやめた動きで、『彼女』の指を躱す。
 なぜだか、国王陛下とテキルース王子、フロール王女も無事だ。『彼女』はまず有象無象の貴族を殺すことを選んだらしい。

 ――そうだ、リラは!?

「パドっ!!」

 どうやら、リラも無事らしい。『彼女』を警戒しつつ、こちらに駆け寄ってくる。

「一体、これ、どういうことなの!?」
「わからないよっ!!」

 僕は『彼女』を睨む。

 血の惨劇現場と化した謁見の間。

 僕は叫ぶ。

「レイクさん、結界魔法で皆を」

 今、この場で『闇』に対抗できるのは僕の漆黒の刃、リラの浄化の炎、それにレイクさんと教皇の結界魔法だけだ。

「教皇も結界魔法で身を守ってください」

 僕は『彼女』を睨んだまま言う。

「ですが……」
「僕とリラで、『彼女』を……」

 言いかけ、僕は口を紡ぐ。
 彼女――テミアール王妃を殺すと教皇に言うのか? テミアール王妃は教皇の娘なのに?

 迷う僕。
 だが、教皇は苦しげに言った。

「戻す方法は、ないのでしょう?」
「……はい」
「ならば、テミアールを……私の娘をお願いします」

 ああ、そうか。
 やっぱりこうなるのか。

 リリィの時と同じように。

 僕は漆黒の刃を『彼女』に――テミアール王妃のなれの果てに向けて構えた。

 ---------------

「パドっ!!」

 叫ぶアル王女は、すでにレイクさんの結界魔法の中にいた。

「今回は、僕がやります」

 今のアル王女は『闇』への対抗手段を持たない。

「リラ、援護を頼む」

 僕の言葉に、リラはこくりと頷く。

 漆黒の刃の魔法は長くは持たない。現状、もしも僕の魔力が切れたら、それはつまり負けってことだ。
 リラの浄化の炎だけでは、人型の『闇』は倒せない。

『彼女』が僕に向けてツッコんでくる
 僕は漆黒の刃でそれを牽制。そこにリラの浄化の炎が走る。

「ナゼ、タタカウノ?」

 漆黒の刃を指で受け止め、浄化の炎から逃れつつ、『彼女』は尋ねる。

「一緒ニ、コノ世界ヲ滅ボシマショウ」

 ――冗談じゃない。

「アナタタチハ、憎クナイノ?」

『彼女』が僕とリラに問いかける。

「何のことだ!?」
「コノ世界ガ、憎クナイノ?」

 ――何を言っているんだ、『彼女』は!?
 世界を憎むなんて、そんなこと、僕は……

 だが。

 リラは僕の考えとは別の言葉を言った。

「憎いわよ」

 ――リラ。

「お父さんを殺した世界が、お母さんを殺した世界が、禁忌の子と呼ぶ世界が、憎いわよ」

 君はまだ、世界を憎んでいたの?

「でも、好きだから。パドと一緒に旅したこの世界が好きだから。どんなに憎くても、好きだから。だから、私はルシフと契約なんて絶対にしない。
 リリィやあなたみたいに負けたりしない」

 この時になって、ようやく僕は思い立つ。
 もしかして、ルシフはリラにも契約を迫っていたのか!?
 リラはそんなことおくびにも出さなかったけど。

「ナゼ? ナゼ、許スノ?」

 まるで、リラの出自を――あるいは僕の出自も知っているかのような『彼女』
 いや、ルシフと契約をしたというならば、知っていてもおかしくないか。

「許してなんかいない。それでも私は、あなたのように『闇』に染まりはしない。この世界には許せないことと同じくらい、楽しいこともあるから。パドがそれを教えてくれたから」

 リラはそう叫び、浄化の炎を吐き出す。
 僕はその炎に付き従うかのごとく、『彼女』に迫る。

 漆黒の刃を振り上げ――

 ――次の瞬間。

『彼女』の口が開き、そこから真っ黒な火の玉――『闇の火炎球』とでも言うべきものが吐き出された。
 これまでの『闇』にはなかったその攻撃に、僕は完全に不意を突かれ、『闇の火炎球』をまともに右肩に受けたのだった。
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