神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう

文字の大きさ
178 / 201
第五部 時は流れゆく 第三章 楽園の崩壊

8.2度目のさよなら

しおりを挟む
 時が止まった世界で、デオスが僕に尋ねたのは単純な質問だった。

「そなたは一体何が望みなのだ?」

 何をどう答えたらいいのか分からないくらい純粋すぎる質問だ。
 ちょっと悩んで、僕は素直に答えた。

「家族や友達と幸せに暮らすことだよ」
「つまらん答えだな」
「神様から見ればそうかもね」
「そのつまらん願いのために、一つの世界を滅ぼしたとでも言うのか?」

 だから、そんなつもりはない。

「僕にそんなつもりはないよ」
「だが、現にあちらの世界は滅びようとしている」
「僕のせいじゃない」

 僕に責任の一端はあるのかもしれない。
 だけど、それをいうならば……

「あなたにだって責任はあるんじゃないんですか?」
「人の身で神の罪を問おうといのか?」
「少なくとも、僕が今まで出会った神様は尊敬すべき対象じゃなかったんで」

 ギャル女神も、金髪少年も、茶髪少年も、目の前の白髪巨人もね。

「よく言いよるな。たかが100年も生きられぬ存在が」
「そりゃあどうも。で、いまさらデオス様が僕に何のようなの?」

 ああ、ダメだ。
 どうも、神様連中やルシフを相手にすると僕は言葉遣いが乱暴になる。
 この圧倒的上から目線にイライラしてしまうのだ。

「さてな。世界を滅ぼした目的を問いたかっただけだ」
「だから、そんなつもりはないっていうのに」

 あ、やばい。どんどんムカついてきた。
 なんなんだ、この神様連中の人を見下しまくった物言いは。

 こんな相手と話しても僕には何の得も……
 と、そこまで考えて思い立つ。

「ルペース達をこっちの世界に送り込んだのがあなただっていうなら、僕を……僕やリラを向こうの世界に送ることも可能なのか?」
「それは可能だ」

 なるほど。

「なら、僕とリラを向こうの世界に戻してほしい」
「何のために?」
「責任をとってやるためさ」
「どういう意味だ?」
「僕が世界を救ってやるよ」

 それはもう、半ばやけっぱちのセリフだった。
 向こうの世界に戻るための言い訳に近い。
 だが、口に出してみると、今僕がやるべきことはそれではないかと感じた。

 デオスは少し沈黙した。
 言葉に詰まっているようにも見える。

「ただの人間が世界を救うというのか?」
「ああ、救ってみせるさ。それこそ、そう。500年前の勇者と同じように」

 自分で口にしながら、何を言っているんだと思った。

「僕の200倍の力と魔力、その全てを使って、向こうの世界を救う。それでいいだろ!?」

 無茶苦茶だ。
 200倍の力やら魔力やらだけで、世界を救うなんてできるわけがない。
 冷静な自分がそう心の中で悲鳴を上げていたが、それでも僕は不敵に言い続けた。

 そんな僕を見て、デオスは嘲笑するように笑った。

「ふっ、いいだろう、できるというならばやってみせろ」

 その後、デオスは僕とリラの帰還の手伝い、僕の両手とリラの足の治療、さらには世界を救うための最低限の魔法の提供を約束したのだった。

 ---------------

 そして、午後23時55分。
 デオスとの約束の時間まで、あと5分。

 僕とリラ、それに稔は診療所の外の林の中にいた。
 バスティーニとルペースも縛り上げて横に転がしてある。

「もうそろそろだね」

 稔の言葉に、僕は頷く。

「世界を渡るか。いったいどうやるのか、興味深いね」

 稔はそんなことを言う。
 僕より先に、リラが言った。

「サヨナラ、ミノル」

 リラもこの半年でずいぶん日本語を覚えたのだ。
 それに対して、稔が発した言葉に、僕は驚くことになる。

『さようなら、リラちゃん』 

 それは向こうの世界の言葉だった。
 カタコトではあるけれど。

「稔、お前いつの間に……」
「2人の世界の言葉はオランダ語が元になっている。半年研究してようやくわかったよ。厳密に言うと、中世のオランダ語を現在のオランダで使われている形とは異なる方向で発展させたような言語だね」

 ああ、そうか。
 向こうの世界の人族の祖先はオランダ人だったんだ。

「何故オランダ語が異世界で使われているのかは分からないけどね」

 そういえば、稔には向こうの世界の人族の由来を話していなかったな。

「それは、たぶん向こうの世界の人々は500年前にこっちから転移した人たちだからだよ」
「なるほど、そういうことか」

 稔はにやっと笑う。

 あと2分くらいか。
 ぽつりと稔が言う。

「僕も一緒に行こうかと、少し思った」
「そりゃあ無茶だろ?」
「まあね。でも、異世界転移してこの世界の医学知識チートで人々を救うなんていうのも、面白そうじゃない」

 稔はそう言って、笑う。
 その時、僕、リラ、ルペース、バスティーニの体が発光し始める。

「お別れなんだね、兄さん」
「ああ、そうだな」
「さようなら、元気で」
「稔も」

 そこまで言ったときだった。

「待ってっ!!」

 稔の家から駆け出してきたのはお母さんだった。

「お母さん?」
「行かないでっ!!」

 叫ぶお母さん。

「また私を置いていかないで。勇太!」
「お母さん!?」

 今なんて!?

「勇太なんでしょう? あなたは!?」

 お母さん、気がついて……

「お母さんっ!!」

 僕は叫ぶ。
 だけど、その時にはもう、僕の目の前は揺らぎ始めていて。

「ゆうたぁぁぁぁ」

 お母さんの声が遠のいていく。

 だから、僕は再び叫んだ。
 信頼している弟に。
 あの時と同じように。
 今度は声に出して。

「稔、お母さんを頼むぞ!!」

 そして、僕らは再び世界を渡る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...