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第六部 少年はかくて勇者と呼ばれけり 第三章 神様、ちょっとチートがすぎませんか?
1.かつて勇者と呼ばれた少年だった者
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ドラゴン形態となったリラと共に、僕は『闇の女王』の口へと突き進む。
『闇の女王』の口は開いたままだ。
僕達が侵入するのを歓迎しているかのように。
そうだ。
お前は歓迎しているんだろう。
ルシフ。
いや、ルシフと僕らに名乗った者。
その正体を、今の僕は知っている。
大神が僕の脳に与えた情報の中にハッキリと存在している。
ルシフ。
お前には同情する。
確かにお前にはこの世界や神に復讐する権利があるのかもしれない。
だけど。
それでも、僕はそれを許さない。
僕の仲間を、人々をこれ以上殺させはしない。
僕の弟達を殺させはしない。
お前が世界に復讐する権利を持っているのと同じように、僕もお前から大切な家族や友達を護る権利がある!
---------------
『闇の女王』の口の中に飛び込むと、そこは暗闇が支配する世界だった。
僕は幾度となくこの世界にやってきている。
そしてルシフと何度も邂逅した。
だが、その時僕は魂だけの存在だった。
今は違う。
肉体ごとこの世界に入ってきた。
だから、あの時とは違って声を出すこともできる。
「どこだ!? どこにいる!!」
僕は叫ぶ。
今さら隠れる意味なんて無い。
そうだろう?
案の定、ルシフは僕らの前に姿を現わした。
「うるさいなぁ。そんなに怒鳴らなくても出て行くよ。パドお兄ちゃん」
未だ幼き日の稔の姿のままのルシフが、まるでワープでもしたかのように、突然僕らの前に現れた。
「まだその姿なのか?」
「結構気に入っているんだよね」
「ふざけるなよ。お前の本当の姿になれよっ」
僕の言葉に、ルシフがにやりと笑う。
「本当の姿? ボクの正体をパドお兄ちゃんは知っているの?」
「ああ、知っているさ」
「ほう」
ボクの返事に、ルシフは満足げに笑った。
「いい加減に正体を現わせ、勇者キダン!!」
僕がルシフを怒鳴りつけると、ルシフはこれまでで1番邪悪な笑顔を浮かべた。
「勇者か。久しぶりだな、そんな呼ばれ方をするのは
……わかったよ。パドお兄ちゃん……いや、パドよ」
ルシフの声が、壮年の男のものとなり、口調も変わる。
そして、ルシフの姿も壮年の男へと変化した。
その姿はまさに勇者といった様相だ。
頭には王冠をかぶり、腰には剣をぶら下げている。
「それが、お前の真の姿か?」
「そうだ。厳密に言えば、500年前の俺の姿だがな」
ルシフ――いや、キダンはそう言ってニヤリと笑う。
さて、どうするか。
いきなり戦いを始めてもいいが、少しは話をしたいとも思う。
それはキダンも同じだったようで、やたら饒舌に語り出す。
「500年前、この世界に地球の開拓民の船が転移させられた。1人の神の手によってな」
それはもう知っている。知っているが、あえて僕は口を挟まず話を聞く。
この際だ、全部聞いてやろうじゃないか。
なぜ、勇者と呼ばれた少年が闇に堕ちたのか。
大神の知識ではなく、本人の口から。
「神としては本当に転移させたかったのは俺1人だったらしい。事実、ヤツは俺にだけ接触してきた。
ヤツは俺にこの世界の『闇』を退治しろと命じた。
地球では全く活きなかったが、俺には元々強力な魔力が備わっていたらしいからな」
その理由は分からない。
おそらく、神にも分からないのだろう。
僕の200倍の魔力をも遙かに超える、1000倍の魔力を持つ少年。
地球では魔法というもの自体がないから彼自身も認識していなかったようだが。
「さらに、神は俺に常人1000倍の力も与えた」
1000倍の力ね。
なかなかに苦労しそうだ。
「ああ、実際苦労したよ。普通に歩くだけで地面に穴があくんだからな。何度も思ったさ『神様、ちょっとチートがすぎませんか?』ってな」
「だろうね」
200倍の力でも操るのが大変なのだ。さらにその5倍の力をもらっても持て余すに決まっている。
「まったく、神というのは手加減を知らない」
「本当だね」
つい、苦笑してしまう僕。
「ちょっと、和んでいる場合なの?」
口を挟むリラの意見はもっともだ。
「今いいところなんで邪魔しないでくれるかな」
彼がそう言って、僕らを一睨みすると、ドラゴン形態のリラが消えた。
「リラ!?」
「心配しなくても、『闇の女王』の外に戻しただけだ。
せっかく仲間と話せるんだから、邪魔されたくないしね」
「仲間だと?」
いつ、僕とお前が仲間になったっていうんだ。
「俺とお前は神様にいらない力をもらった仲間じゃないか」
「ある意味、同類であることは認めるよ、仲間だとは思いたくないけど」
「俺は13歳の船乗り見習いだった。未知の世界で、俺は力と魔法を駆使して人々を導き、『闇』と戦った」
キダンは楽しげに語る。
誰かに聞いてほしかったのだと言わんばかりに。
「龍族の長《おさ》はそのころ『闇』なんていなかったって言っていたけど」
「ヤツはまだ子龍だったから知らないだけさ。当時、龍族は『闇』と戦い、負けそうだったんだぜ」
「獣人を虐殺したとも聞いたけど」
「ま、最初期に、獣の力を持つ者を『闇』と誤解した馬鹿な部下どもがいたことは認めるよ。それに関しては割とガチで申し訳なかったなと今でも思っている」
異世界から持ち込まれた銃は『闇』には通じないが、獣人には通じてしまった。
獣人を『闇』の眷族だと誤解した者達の中には、銃で虐殺してしまった者達もいたのだ。
少年だった彼――キダンは、人々を導く英雄になり、勇者と呼ばれるようになった。
「女剣士ミリスとか僧侶グリカードとか賢者ブランドとかはどこで出てくるんだ?」
「ああ、あいつらか。ま、開拓民の中でそこそこ強かったヤツや魔法の才能があったヤツらだな。他にも何人かいたが。
伝説は大げさに伝わっているだけで、当時はほとんど俺1人で戦っていたぜ」
キダンの口調は心なしか自慢げに聞こえる。
まさに神様からもらったチートで暴れる転移者ってやつか。
だが、勇者と呼ばれた少年はその後、『闇』に染まることになる。
『闇の女王』の口は開いたままだ。
僕達が侵入するのを歓迎しているかのように。
そうだ。
お前は歓迎しているんだろう。
ルシフ。
いや、ルシフと僕らに名乗った者。
その正体を、今の僕は知っている。
大神が僕の脳に与えた情報の中にハッキリと存在している。
ルシフ。
お前には同情する。
確かにお前にはこの世界や神に復讐する権利があるのかもしれない。
だけど。
それでも、僕はそれを許さない。
僕の仲間を、人々をこれ以上殺させはしない。
僕の弟達を殺させはしない。
お前が世界に復讐する権利を持っているのと同じように、僕もお前から大切な家族や友達を護る権利がある!
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『闇の女王』の口の中に飛び込むと、そこは暗闇が支配する世界だった。
僕は幾度となくこの世界にやってきている。
そしてルシフと何度も邂逅した。
だが、その時僕は魂だけの存在だった。
今は違う。
肉体ごとこの世界に入ってきた。
だから、あの時とは違って声を出すこともできる。
「どこだ!? どこにいる!!」
僕は叫ぶ。
今さら隠れる意味なんて無い。
そうだろう?
案の定、ルシフは僕らの前に姿を現わした。
「うるさいなぁ。そんなに怒鳴らなくても出て行くよ。パドお兄ちゃん」
未だ幼き日の稔の姿のままのルシフが、まるでワープでもしたかのように、突然僕らの前に現れた。
「まだその姿なのか?」
「結構気に入っているんだよね」
「ふざけるなよ。お前の本当の姿になれよっ」
僕の言葉に、ルシフがにやりと笑う。
「本当の姿? ボクの正体をパドお兄ちゃんは知っているの?」
「ああ、知っているさ」
「ほう」
ボクの返事に、ルシフは満足げに笑った。
「いい加減に正体を現わせ、勇者キダン!!」
僕がルシフを怒鳴りつけると、ルシフはこれまでで1番邪悪な笑顔を浮かべた。
「勇者か。久しぶりだな、そんな呼ばれ方をするのは
……わかったよ。パドお兄ちゃん……いや、パドよ」
ルシフの声が、壮年の男のものとなり、口調も変わる。
そして、ルシフの姿も壮年の男へと変化した。
その姿はまさに勇者といった様相だ。
頭には王冠をかぶり、腰には剣をぶら下げている。
「それが、お前の真の姿か?」
「そうだ。厳密に言えば、500年前の俺の姿だがな」
ルシフ――いや、キダンはそう言ってニヤリと笑う。
さて、どうするか。
いきなり戦いを始めてもいいが、少しは話をしたいとも思う。
それはキダンも同じだったようで、やたら饒舌に語り出す。
「500年前、この世界に地球の開拓民の船が転移させられた。1人の神の手によってな」
それはもう知っている。知っているが、あえて僕は口を挟まず話を聞く。
この際だ、全部聞いてやろうじゃないか。
なぜ、勇者と呼ばれた少年が闇に堕ちたのか。
大神の知識ではなく、本人の口から。
「神としては本当に転移させたかったのは俺1人だったらしい。事実、ヤツは俺にだけ接触してきた。
ヤツは俺にこの世界の『闇』を退治しろと命じた。
地球では全く活きなかったが、俺には元々強力な魔力が備わっていたらしいからな」
その理由は分からない。
おそらく、神にも分からないのだろう。
僕の200倍の魔力をも遙かに超える、1000倍の魔力を持つ少年。
地球では魔法というもの自体がないから彼自身も認識していなかったようだが。
「さらに、神は俺に常人1000倍の力も与えた」
1000倍の力ね。
なかなかに苦労しそうだ。
「ああ、実際苦労したよ。普通に歩くだけで地面に穴があくんだからな。何度も思ったさ『神様、ちょっとチートがすぎませんか?』ってな」
「だろうね」
200倍の力でも操るのが大変なのだ。さらにその5倍の力をもらっても持て余すに決まっている。
「まったく、神というのは手加減を知らない」
「本当だね」
つい、苦笑してしまう僕。
「ちょっと、和んでいる場合なの?」
口を挟むリラの意見はもっともだ。
「今いいところなんで邪魔しないでくれるかな」
彼がそう言って、僕らを一睨みすると、ドラゴン形態のリラが消えた。
「リラ!?」
「心配しなくても、『闇の女王』の外に戻しただけだ。
せっかく仲間と話せるんだから、邪魔されたくないしね」
「仲間だと?」
いつ、僕とお前が仲間になったっていうんだ。
「俺とお前は神様にいらない力をもらった仲間じゃないか」
「ある意味、同類であることは認めるよ、仲間だとは思いたくないけど」
「俺は13歳の船乗り見習いだった。未知の世界で、俺は力と魔法を駆使して人々を導き、『闇』と戦った」
キダンは楽しげに語る。
誰かに聞いてほしかったのだと言わんばかりに。
「龍族の長《おさ》はそのころ『闇』なんていなかったって言っていたけど」
「ヤツはまだ子龍だったから知らないだけさ。当時、龍族は『闇』と戦い、負けそうだったんだぜ」
「獣人を虐殺したとも聞いたけど」
「ま、最初期に、獣の力を持つ者を『闇』と誤解した馬鹿な部下どもがいたことは認めるよ。それに関しては割とガチで申し訳なかったなと今でも思っている」
異世界から持ち込まれた銃は『闇』には通じないが、獣人には通じてしまった。
獣人を『闇』の眷族だと誤解した者達の中には、銃で虐殺してしまった者達もいたのだ。
少年だった彼――キダンは、人々を導く英雄になり、勇者と呼ばれるようになった。
「女剣士ミリスとか僧侶グリカードとか賢者ブランドとかはどこで出てくるんだ?」
「ああ、あいつらか。ま、開拓民の中でそこそこ強かったヤツや魔法の才能があったヤツらだな。他にも何人かいたが。
伝説は大げさに伝わっているだけで、当時はほとんど俺1人で戦っていたぜ」
キダンの口調は心なしか自慢げに聞こえる。
まさに神様からもらったチートで暴れる転移者ってやつか。
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