竜太のドラゴンライダー学園

ななくさ ゆう

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入学試験と俺たちの契約

第5話 相棒ドラゴンとの契約

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 龍の教会。その最奥にある契約の間。
 ドラゴンの卵の前で、恵と一太が膝をついて嘆いていた。

「どうしてよ? どうしてなのよ!?」
「ちくしょう、なんでだよ、なんでなんだよ!?」

 ドラゴンとの契約ができず不合格となった二人の嘆きの声は、ただただむなしく響いていた。


――十五分前。


 最後の試験はドラゴンとの契約することだ。
 契約の間に連れてこられた俺たち受験生の前には三つの卵が置かれていた。
 好きな卵を選び、契約できれば入試は合格。
 ここまで案内してくれたシスターにミカが尋ねる。

「卵は三つだけ?」
「はい。今年神から当教会に与えられた卵は全部で十二個。そのうち、ドラゴンライダーの相棒としての力を持つのは三つだけです」

 ドラゴンの中でも過酷な競龍に耐えられる個体は半分にも満たない。
 ということは……
 俺は他の残る受験生をあらためて見る。
 龍矢、ミカ、恵、一太、そして俺。少なくとも二人は不合格ということだ。
 乱獅子先生が俺たちを促した。

「自分の思う卵と契約するがいい」

 契約の方法は簡単。卵に触って『相棒になってくれ』と願うだけだという。
 チャンスは一回だけ。
 契約できなかったからといって、他の卵に鞍替えは許されない。
 それ以上の説明は一切無かった。
 俺たちは動けなかった。
 シンプルな手順だからこそ、どの卵を選べば良いのか分らない。
 なにしろ、見た目はほとんど同じ。
 鶏の卵の十倍ほどの大きさだが、色は真っ白。選ぶ基準が分らない。
 そんな俺たちに、乱獅子先生が言う。

「どうした、早い者勝ちだぞ?」

 そう。早い者勝ちだ。
 早い者勝ちかつ一発勝負。

(みんなはどう考えているんだろう?)

 最初に動いたのは恵と一太だった。
 恵は右の卵に手をのせる。

「私は契約するのよ。翔汰のためにも」

 一太もまた、左の卵に手を置く。

「俺だって、ここまで来て終わってたまるか」

 二人はそう言って目を閉じて念じる。

 それから五分も経っただろうか。
 ミカがつぶやく。

「何もおこらない?」

 契約ができれば、卵が割れて赤ちゃんドラゴンが出てくるはず。
 乱獅子先生の声が冷たく契約の間に響く。

「どうやら、お前たちは選ばれなかったようだな」

 そして、二人は膝をついて嘆くのだった。



 卵は三つ。残る受験生も三人。
 ならば全員合格……なんてことはもちろんなく。
 俺たちも選ばれなければそれまでだ。

(ゴクリ)

 知らず知らずのうちに、俺は唾を飲み込んでいた。
 どうしたらいい?
 どの卵を選べばいいんだ?
 こんなの、判断材料が……

 と。

 龍矢が「なるほど」と小さくつぶやき、中央の卵へと進む。

「お前か、俺の相棒は」

 龍矢は卵に触れた。
 すると、ピキピキという音が響く。
 同時に卵にゆっくりとひびが入っていく。
 そして産まれてきたのは小さなレッドドラゴンの赤ちゃん。
 俺たち十二歳児の頭ほどの大きさのドラゴンは、「きゅいぃ」とかわいらしく声をあげ、小さな小さな翼を羽ばたかせ、龍矢の胸に飛びついた。
 龍矢は強く抱きしめて、レッドドラゴンの頭を撫でる。

「ふんっ、俺の相棒か。俺と共に来るならば生半可な道ではない。だが、その先には必ず頂点がある。お前の名前はラドンだ」

 龍矢の言葉に、レッドドラゴン――ラドンは大きな声で『望むところだ』とばかりに「きゅぃぃ」と鳴いた。

 乱獅子先生が言う。

「やはり、一番手に合格するのはお前だったな。高力龍矢」
「当然だ」

 彼はそう言って崩れ落ちて嘆く恵と一太、それに残る俺とミカを順にながめる。

「さて、俺以外に契約できるヤツはいるのやら」

 くそっ。
 悔しいが、ドラゴンと契約できなければ、俺たちはアイツに何かを言う資格すらない。
 残る受験生は俺とミカの二人。そして、卵の残りも二つ。

 どうする?
 どちらを選べばいい?

 こんなの、ただの運試しじゃないか。
 そもそもどちらを選んだって、契約できない可能性もある。
 俺と同じく悩むミカをチラッと見る。
 先にミカに選ばせるべきか?

(ダメだ)

 そんな消極的な方法俺らしくない。
 だけど、どうしたらいいんだ。
 龍矢はどうやって選んだ?
 そうだ。龍矢は『お前か、俺の相棒は』と言った。
 何か確信があったんだ。

 おそらくは……

 俺はゆっくりとまぶたを閉じた。
 すると、俺の心に何かの鳴き声が聞こえた。

『がおぉぉぉん』

 それは微かな声。
 幻聴かもしれない。
 だけど、俺は、俺と未来の相棒を信じる。
 さあ、教えてくれ。俺の相棒。お前は、どこにいる。

『がおぉぉぉーん』

 俺の頭の中にかわいくて、しかし力強い声が響いた。
 そして、俺は確信する。

 俺の相棒は――

 俺は目を開けて右の卵に手を置いた。
 あったかい。
 力強い。
 間違いない。
 俺の相棒はコイツだ。

 さあ、出てこい。
 俺の相棒!

 卵にひびが入る。赤ん坊なのに元気あふれるドラゴン――輝くその姿が現れた。

 シスターが驚きの声をあげる。

「まさか、ゴールデンドラゴン!? 高力昇龍以外に、未だ誰も契約できていない至高のドラゴン……」

 そう。
 現れたのはあのゴルデンと同じ、輝く金の皮膚を持ったゴールデンドラゴンだった。
 まだまだ小さなゴールデンドラゴンは俺の胸に力強く飛び込んできた。
 空手で鍛えた俺の体がちょっとよたつくくらいに力強く。

「がおぉぉん」

 そう鳴く、お前の……俺の相棒の名前は。

「お前はガオだ。よろしくな、俺の相棒」

 俺はガオを掲げる。
 金色のドラゴンは「がぉぉぉぉぉん」といななく。
 その声は、俺には「ヨロシクな、竜太」と言っているように聞こえた。

――一方。

「私も聞こえたわ」

 ミカが最後の卵に手を置いた。ゆっくりと殻が割れ、ピンクドラゴンが飛び出して、ミカに飛びついた。
 ミカがピンクドラゴンを抱きしめる。

「生まれてきてくれてありがとう。あなたはリンリンよ」

 あらたな相棒と交流する俺たちに、乱獅子先生が言った。

「合格者は高力龍矢、大空竜太、そして風粉ミカの三人だな」

 こうして、俺たちの入学試験は終わった。
 俺たち三人に、恵が涙を流しながらも言った。

「おめでとう」

 一太も同じく俺たちにいう。

「お前たちの活躍を祈るよ」

 二人はニッコリ笑顔を見せた。その笑顔は、やっぱり悔しそうで、無理やり浮かべているんだろう俺にも分る。
 それでも、二人は俺たちを祝福してくれた。

 ミカが「あの……」と二人に何か言いかけるが、龍矢がそれを止める。

「勝者が敗者にヘタな同情など見せるな」

 龍矢の乱暴な物言いに、ミカがにらみ返す。
 だが、俺はミカに言った。

「ミカ、今回だけは龍矢が正しい」

 俺の言葉に、龍矢が「ほぅ」と声をあげる。

「お前は多少の道理をわきまえているようだな」
「俺は空手をやっていたからな。自分が倒した相手に慰めの言葉なんて、かえって失礼だって分っている」

 残酷だけどそうなんだ。
 合格した俺たちが、不合格になった二人にヘタクソな慰めなんてしちゃいけない。
 一太がうなずいた。

「そうだな。竜太と龍矢の言う通りだ。悔しいけど、俺は力が及ばなかった。ミカ、同情はいらない。でも、ありがとうな」

 恵も言う。

「ま、結果は結果だしね。私は次の目標を探す。きっと、翔汰も同じだと思う」

 二人はそう言って、その場から去った。
 同情はしない。不合格になった四人の分まで、全力でがんばるだけだ。



 試験が終わり、俺たち合格者三人は再びドラゴンライダー学園の校門前へと戻ってきた。
 俺は相棒のガオを、龍矢はラドンを、ミカはリンリンを抱えている。三匹は卵から出るのに疲れたとばかりにすやすやと寝ている。
 龍矢が俺に言う。

「まさか、お前のようなモブザコキャラがゴールデンドラゴンと契約するとはな」
「なんだ、うらやましいか?」
「まさか。俺の相棒はラドンだ。俺はコイツと共に父を超えるドラゴンライダーになるだけだ」

 それは決して負け惜しみではないだろう。
 俺も契約してみて分った。
 ドラゴンとドラゴンマスターの間には親兄弟よりも強い絆が生まれる。
 それはもう、絶対に切れることのない繋がりだ。
 龍矢もラドンに対してそういう感情を持っているはずだ。

「ま、お前がせっかくのゴールデンドラゴンを腐らせないことを祈るだけだな」

 ミカはいつの間にやらピンクのウィッグをつけてランミカスタイルに。スマホで自分と俺たちを撮影中。

「っていうわけで~ここにいる三人があらたなるドラゴンライダー候補として第一歩を踏み出しました♡ みなさ~ん、応援よろしく♪ ついでにチャンネル登録とイイネもお願いね!」

――ちなみにこの日撮影したランミカの動画は、小学生リューチューバーの一日の再生数として歴代最高記録をたたき出したらしい。
 撮影を終えミカは俺たちに言った。

「じゃあね、二人と四月に無事再会できることを祈っているわ」

 俺はうなずく。

「ああ、俺はガオを立派に育ててみせる」

 ドラゴンとの契約し俺たちは無事合格したと思った。
 が、先生からまだ俺たちは仮合格に過ぎないと知らされた。
 ドラゴンライダー学園の入学式までに与えられた試練。
 それはドラゴンの育て方を学び、無事成長したドラゴンを連れて来ることだ。

 万が一ドラゴンを育てることに失敗したら、合格は取り消される。
 ドラゴンの育て方は教えてもらえなかった。
 そのくらい自分で調べられないならば、ドラゴンライダーになどなれないと言われてしまえば返す言葉もなかった。

 実際の所、龍矢とミカは自信満々。
 二人はドラゴンの育て方を学んできているらしい。
 もちろん、オレだって負けてられない。
 まずは山さんに聞いて、それから図書館とかネットとかでも調べてみよう。
 もちろん、ミカに聞く手だってある。
 絶対にガオを世界一のドラゴンに育ててみせる!



――そして、四月。



 俺は新入生として再びドラゴンライダー学園へとやってきた。
 俺の頭の上では、入試の日より一回り大きくなったガオが元気に飛び回っていた。

「竜太、おっはよー」

 リンリンを抱きかかえたミカが走り寄って来た。
 その後ろには龍矢とラドンの姿もあった。
 ガオとラドンはじゃれ合うように俺たちの上空で飛び回っている。
 そんな二匹に触発されたのか、リンリンもミカの腕の中から飛び出した。
 ミカはカバンからウィッグ取り出してランミカスタイルに変身。

「さーて、それじゃあ新入生がそろったところで! 小学生リューチューバーあらため、中学生リューチューバーランミカの動画、はっじまるよ~♪」

 こうして、俺たちのドラゴンライダー学園での生活が始まったのだった。
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