騎士姫は地方騎士になりたい(仮題)

暁月りあ

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2それは実技試験で

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 この学園では大きく分けて4つの学部が存在する。
 魔法を主に得意とし、軍用魔法等を学びながらいづれ世界各国の魔法研究者として、または各国にある優秀な魔法使いが住まう魔法塔へ入塔するか。時として治療師、呪術師に進むなど幅が広く、学科も多い魔法学部。
 要人警護、各国の騎士として学ぶことを主とし、また、過去の戦争における戦術、暗殺方法、果てはサバイバル術など。幅広く守護の達人となれるよう鍛錬を積む騎士学部。
 大陸の地理から歴史、そして商業から各国の過去における人口、収益に至るまで、主に国を運営する上で必要なことを学び、将来は文官、外交官として活躍することを期待される文官学部。
 そして、貴族の淑女達が国の歴史や地理など文官学部に含まれる内容が簡略化されたものと貴族としてのマナーを学ぶとされている総合学部。 
 細やかに分けられた学科は多く、故に王都にあると言えどほぼ王都に隣接している学園街と言って過言ではない広さを誇っている。
 試験も学部によって違い、魔法学部は魔法に関する知識を主にした筆記と魔法実技。文官学部は文官、外交官としての基礎の筆記、面談。総合学部は基本的なマナーと面談。そして騎士学部は戦いにおける基礎や応用の筆記と実技試験となる。
 どの学部も一定以上の教育を受けていることが合格ラインとなるのだろう。それが筆記にしろ、実技にしろ。

「そこまで!」

 そんな取り留めもないことを考えつつ、実技試験で割り当てられた受験生の首筋に届くぎりぎりのところで剣先を止める。慌てたように止めた試験官と、感嘆の息を吐く試験官の二手に分かれたが、試合終了の合図がなくともここで止めただろう。
 悔しげに睨みつけて来る受験生は整った身なりからして貴族であることが伺える。
 試合開始直後からだらだらと自分がどれ程強い者に師事しているか、強いのかを演説するところを聞いていると、早く始めるように試験官から激が飛んだ。初撃はくれてやるというので遠慮なく始めたのだが、3合も交わすことがなく終わった。

「ひ、卑怯な手を使ったんだ。そうじゃなきゃ平民に僕が負けるはず……!」

 そう負け惜しみを言って今にも斬りかかりそうな受験生に、リウスは眉を顰めた。今が戦場なら、彼の口上を聞くような時間はなく、また初撃で彼は死んでいる。すぐに終われば恨みを買うかもしれないと3合は交わしたが、もう少し長引かせる方がよかったのだろうか。
 再び勝負し、彼から仕掛けてきたとしても負けることはないだろうと推測できた。

「見苦しいぞ。力量の差は明確だろうに」

 先程感心していた大柄な試験官がそう嗜めると、彼の勢いが削がれた。先程の口上にも平民を見下すような発言をしていたので、選民意識の塊だろう彼が言い返せないということは、彼の家では太刀打ちできない地位なのは確かだ。
 大柄な試験官はリウスを見て、不敵な笑みを浮かべる。

「なんなら、俺と模擬戦をして実力を示すか」

 そんな試験官に対して、周囲の空気が揺れた。
 王都に来たばかりのリウスではこの試験官が誰かわからない。他の試験官まで騒ぐということは、リウスの予想以上に地位が高いのも想像出来るが。

「恐れながらウェンディオス騎士団長。彼等の試験は終わりです」
「しかしそれでは禍根を残すだろう。それに、見ている限り一定数は勘違いをしている者もいるようだ」

 先程の受験生を横目で見やりながら、騎士団長は苦々しくそう言い返した。

「模擬剣を2本寄越せ。なに……」

 慌てて模擬剣を持って来た教師に剣を預け、リウスに向かって笑う。

「今から見られるのは、誰にとってもいい経験だろう」

 ぞわりとした感覚に、リウスは覚えがあった。
 かつて、両親がリウスに稽古をつけた時、初めて魔物と戦った時、そして森で強いとされるグリズリーンという巨大な熊型の魔物と対峙した時。常にあった、けれども両親が死んでからは久しい感覚に、リウスの口端も自然と上がる。
 強敵との対峙。それがこの感覚を生み出していることはわかっていた。
 しかし、リウスは普段二本の剣を愛用している。一本でも戦えないことはないが、折角の機会に愛剣ではなく、いつもと違う型で戦うことが残念でならない。
 そう考えていると、騎士団長はリウスに二本の剣のうち、一本を投げ渡して来た。

「構えろ。殺すぞ・・・

 瞬間、リウスは予め持っていた模擬剣で騎士団長の攻撃を受け、頭上に落ちて来たもう一本を見ることなく掴んで振り下ろす。
 両者の口元には笑みが浮かび、突如として始まった戦いに試験場は騒然となった。
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