今日、キミを卒業します。

桃乃 茉凛

文字の大きさ
19 / 30

約束

しおりを挟む
「何だよ、琴美ことみー、出ないから浮気してんのかと思ったw」

あたしは慌ててたかしの電話に出れば、ベッドにぼふっと座る。
「んなワケ無いでしょ!? こっちは色々大変だったんだからっ!」
あたしはさっきの愛実まなみたちのことを一通り話す。

「あーあ、悪い先輩を持つとコレだからw」
「貴に言われたく無いよw」
なんて2人で笑い合う。
最近、年末のせいか貴は忙しいらしくて、前より少し会う機会は減っていた。
でも、毎日の電話は日課だったから、そこまで寂しくは無かった。

「そー言えばさ、琴美、X'masはどーすんの? 冬休みいつから?」
「あー……」

あたしは言葉を濁してしまう。
即答出来ないのは、去年のコトがあるから。
怖いんだよ。
会えない環境になるコトが…
また、去年みたいに気持ちが離れてしまわないか…

「…琴美?」
電話口の貴の声。
あたしは正直に話そうと思った。
事実は事実で変わらない。
冬休みになって、閉寮してしまったら、嫌でも実家に帰らないといけないんだから…

「実は…22日が終業式なの…」
あたしは勇気を振り絞ってそー告げる。
「だから…次の日から冬休みになっちゃって…実家に帰らないといけなくて…」
そこまで話すと、あたしは涙が零れそーになってしまう。

貴と離れたくないよ。
少しでも傍に居たいよ。
会えない距離になんて居たく無いよ。
気持ちが離れるの…怖いよ…

「そっか。実はオレ、イヴが仕事でさ? 今仕事忙しいから、会えるか分かんなくてw それもあったんだよな」
「うん… 仕事のコトは分かってる……」
でも……
あたしの瞳から涙が零れ落ちる。

「そんなだから…X'masもお正月もこっちには居れなくて… 貴と会えないの、怖いよ…」
あたしは泣きながらそー伝える。
「もー、何で泣いてんだよw 別に会えなくても、変わらねぇじゃん? オレらはさ?」
「そーだけど……」
あたしは意を決して口を開く。

「あたし…それで去年、冬休み中に浮気されて… 冬休み明けに振られちゃったの…」

もー涙が止まらない。
また、あーなってしまったら…
貴と離れてしまったら…
怖くて仕方ないよ……

「琴美?」
泣きじゃくるあたしに、貴の優しい声。
「オレは大丈夫だから。離れてても、琴美のことちゃんと想ってるから」
「……うん…」
貴……
あたしはそれでも涙が止まらない。

「じゃーさ? 寮には22日の夜に帰るって言って、ウチ来いよ。オレ、23日半休取るから、琴美のこと、車で送ってくよ。親には23日に帰りのチケット手配してもらえばいーじゃんw」

え……
「そんな…忙しいのに大丈夫なの…?」
あたしの涙はウソみたいにピタッと止まってしまう。
「忙しいからこそ、半休取るんだよw ギリギリになって体調不良的なこと言っといて、午前中に病院行きます、って言えばさすがに休ませてくれんだろ?」
「あ、なるほど…」
あたしは妙に納得してしまった。

「だからさ…それで22日早めに切り上げて途中まで迎えに行くからさ。ウチでになっちゃうけど、2人でX'masしよーぜ?」

貴……っ!
あたしは貴の提案に、また泣き出してしまう。
「もー…今日の琴美は泣き虫だなw それじゃあダメか?」
「ううんっ? 全然嬉しいっ!!」
あたしは電話しながらぶんぶんと顔を横に振る。
まさか、貴がそんな提案してくれるなんて…
今度は嬉し涙が止まらない。

「去年のそいつがどんなヤツかは知らねぇし、知りたくもねぇけど、オレは年末年始、仕事で忙しいから琴美は実家でゆっくりして来いよ」
「…浮気…しない…?」
あたしは恐る恐る聞いてみる。
「んなヒマねぇよw」
なんて、貴が笑う。

良かった…
貴はやっぱり違う。
大人の余裕があるよ。
あたしよりもひとまわりもふたまわりも全然…

「だから安心してろよ? 離れてたからって、気持ちが離れたりなんかしねぇから」

真剣な貴の声。
「約束…してくれる…?」
あたしは泣き笑いで聞いてみる。

「もちろん。約束するよ」

貴……
良かった…
X'mas当日は会えなくても、貴の家で2人だけでのX'masが過ごせる。
世間よりも一足早いX'masに、貴と2人っきり。
それだけでも充分過ぎるのに、さらに帰るのに送ってくれるなんて…

「琴美? 少しは落ち着いた?」
いつもの貴の優しい声。
「うん、もー平気w 安心しちゃった…」
「なら良かったw」
また2人で笑い合う。

あたしは幸せでいっぱいだった。
この時が今思えば幸せの絶頂だったのかもしれない…

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白椿の咲く日~遠い日の約束

紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに姉の稚子(わかこ)と会う。真由子の母、雪江は妻を亡くした水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。当時、実之には俊之、稚子、靖之の三人の子がいた。 稚子と話をしているうちに真由子は、庭の白椿の木は子どもの頃なついていた兄、靖之が植えたものだと知る。 白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

Lucia(ルシア)変容者たち

おまつり
恋愛
 人は、ときに自分の中に「もう一人の自分」を抱えて生きている。  それがもし、感情の揺らぎや、誰かとの触れ合いによって、男女の姿を入れ替える存在だったとしたら――。  カフェ『リベラ』を営むリアと、雑誌編集者の蓮。  二人は、特定の感情を抱くと性別が変わる「性別変容者」だった。  誰にも明かせない秘密を抱えながら生きてきた彼らは、互いの存在に出会い、初めて“同類”として心を通わせていく。  愛が深まるほど、境界は曖昧になる。  身体と心の輪郭は揺らぎ、「自分とは何者なのか」という問いが、静かに迫ってくる。  一方、過去に囚われ、自分自身を強く否定し続けてきたウェディングプランナー・景子と、まっすぐすぎるほど不器用な看護学生・ユウ。  彼らもまた、変容者として「変わること」と「失うこと」の狭間で、避けられない選択を迫られていく。  これは、誰の記憶にも残らないかもしれない“もう一人の自分”と共に生きながら、 それでも確かに残る愛を探し続けた人々の、静かなヒューマンドラマ。 ※毎日20時に1章ずつ更新していく予定です。

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

処理中です...