6 / 16
本編
嵐が近づいている
しおりを挟む
悪夢とも言えるメロヴィング家での社交も終わり、ハルとの距離が少し近くなったようなそうでもないような?
それでも確かに穏やかな日々を送れていた……はずだった。
「レオベルト様。メロヴィング家からのお手紙がレオベルト様宛に届いております。」
「め、メロヴィング…?」
何かやらかしたのか?
この前の交流会で俺は何の粗相もして無いはずだ。しつこく話しかけてきたアランを遠回しに避けたぐらいで…まさか避け方が露骨だったとか?
でもそんな事で手紙なんて送り付けないよな……
開けたくはないが、開けるしか無さそうだ。
ゆっくりと手紙開けて見てみると
『レオベルト・エンフィア様へ
この前の交流会に出席してくれて、どうもありがとう!とっても楽しかったよ!
それでね、良かったらまた僕のお家に来てくれないかな…?
ほら!僕の家のシェフのご飯美味しかったでしょ?食べに来て欲しいし……それに君と仲良くなりたいなって思って。
だから、空いてる日があったら僕にまた連絡して欲しいな!絶対絶対会いたいから!
絶対手紙送ってね!
アラン・メロヴィングより』
……好意的な内容。粗相はしてないようで一安心……ともいかない。
ここまで好かれているのも不気味だし、そもそもあんまり関わりたくない。
でも絶対に手紙を送れという圧を感じる…
それとなく断わりの手紙を書くか?
勉強が忙しいとか言って社交にしばらく出なかったら解決じゃないか?
いや、それもだめだな。
俺のお父様は堕落しきった親としても人としても駄目な人だが、公爵家というプライドは無駄にあるせいで外ヅラは異常に気を使う人だ。
愛人のために多額のお金をつぎ込んで本館よりも豪華な別荘を建てたくせして、愛人の存在を隠し、病弱な妻を気遣う当主を演じるという反吐が出るような性根を持っているのだ。
自分の息子が美形だったという話はそろそろ別荘にも届いた事だろう。これから馬車馬の様に社交界に引っ張り出されるにちがいない。
そんなお父さんに、もしメロヴィング家と仲良くなるチャンスが舞い込んだとバレたら、絶対に仲良くさせようとするだろうし、断ったとバレたらお母様に何をするか分からない。
下手したらお母様へ薬を与えなくなるかもしれない。与えられなくなってしまえば一巻の終わり。
やはりお父様には逆らえない。
……今世でも俺はお父様の言いなりだ。
でも、俺の事を心から愛してくれた人は前世でも今世でもお母様だけだった。優しくて温かくて、クズの父には勿体なすぎる人。
お母様の事は何があっても守り抜くんだ。
その為にこの顔も知識も何もかも利用する。そして、前世の二の舞にはならない。
俺ならできる。
自分に言い聞かせてペンを手にする。
『アラン・メロヴィング様へ
お手紙ありがとうございます。
お誘い大変嬉しかったです。
都合のいい日は来週の木曜日の昼頃です。
アラン様のご予定に合いましたらまたご連絡下さい。
レオベルト・エンフィアより』
書き終わった後、手は震えていた。アランに会うという、自分の選択に恐怖を覚える。
仲良くなんてなれない。話したくなんてない。
切られてない首が何故か痛む。
「レオベルト様……」
「!…ハル?どうしたの?」
ハルが心配そうに顔を覗き込んできた。
もしかしてずっとだまって傍にいたのか?
「レオベルト様が苦しそうだったので…ご迷惑でないなら、俺、ずっとそばに居ます。レオベルト様がまた笑顔になられるまで、ずっと。」
「あ…」
「あ、お、俺なんかに傍にいられても迷惑ですよね!ご、ごめんなさい。」
そうやって部屋から出ていこうとするハルの服の袖を引っ張った。
「ううん。」
「レ、レオベルト様……?」
「傍に、いて。」
「え、あ……も、もちろんです!」
ふわりと嬉しそうに笑うハルを見て、なんだか俺もうれしくなってくる。
味方なんて今世でもお母様だけだと思ってた。俺の事見てくれる人っていないって。
だけどそれは違かったのかもしれない。
俺はアランのことしか見てなかったから、周りの人の事見れてなかったんだ。
俺の事を心配してくれる人は居たはずなのに、どうして気づけなかったんだろう。どうしてこんな大切な事が分からなかったんだろう。
今世では絶対そんな愚かな事はしない。
…俺に寄り添ってくれるハルが嬉しくて、涙が出そうだ。
「レオベルト様…アラン様に会いたくないならお断りしてもよろしいのでは?」
「…そんな事いう人始めてだ。みんなこの家のためにも、意地でも交流しろって言うのに。」
「俺はレオベルト様に苦しんで欲しくないので……」
「ふふ、ありがとう。
だけど、やっぱり会わなくちゃ。楽しい未来の為にもね。」
覚悟は決めた。嵐はすぐそこにある。
だけどこの嵐を乗り越えたらきっと幸せな未来が待ってるはずだってそう思った。
だけどこの嵐はただの序章に過ぎないのだった。
それでも確かに穏やかな日々を送れていた……はずだった。
「レオベルト様。メロヴィング家からのお手紙がレオベルト様宛に届いております。」
「め、メロヴィング…?」
何かやらかしたのか?
この前の交流会で俺は何の粗相もして無いはずだ。しつこく話しかけてきたアランを遠回しに避けたぐらいで…まさか避け方が露骨だったとか?
でもそんな事で手紙なんて送り付けないよな……
開けたくはないが、開けるしか無さそうだ。
ゆっくりと手紙開けて見てみると
『レオベルト・エンフィア様へ
この前の交流会に出席してくれて、どうもありがとう!とっても楽しかったよ!
それでね、良かったらまた僕のお家に来てくれないかな…?
ほら!僕の家のシェフのご飯美味しかったでしょ?食べに来て欲しいし……それに君と仲良くなりたいなって思って。
だから、空いてる日があったら僕にまた連絡して欲しいな!絶対絶対会いたいから!
絶対手紙送ってね!
アラン・メロヴィングより』
……好意的な内容。粗相はしてないようで一安心……ともいかない。
ここまで好かれているのも不気味だし、そもそもあんまり関わりたくない。
でも絶対に手紙を送れという圧を感じる…
それとなく断わりの手紙を書くか?
勉強が忙しいとか言って社交にしばらく出なかったら解決じゃないか?
いや、それもだめだな。
俺のお父様は堕落しきった親としても人としても駄目な人だが、公爵家というプライドは無駄にあるせいで外ヅラは異常に気を使う人だ。
愛人のために多額のお金をつぎ込んで本館よりも豪華な別荘を建てたくせして、愛人の存在を隠し、病弱な妻を気遣う当主を演じるという反吐が出るような性根を持っているのだ。
自分の息子が美形だったという話はそろそろ別荘にも届いた事だろう。これから馬車馬の様に社交界に引っ張り出されるにちがいない。
そんなお父さんに、もしメロヴィング家と仲良くなるチャンスが舞い込んだとバレたら、絶対に仲良くさせようとするだろうし、断ったとバレたらお母様に何をするか分からない。
下手したらお母様へ薬を与えなくなるかもしれない。与えられなくなってしまえば一巻の終わり。
やはりお父様には逆らえない。
……今世でも俺はお父様の言いなりだ。
でも、俺の事を心から愛してくれた人は前世でも今世でもお母様だけだった。優しくて温かくて、クズの父には勿体なすぎる人。
お母様の事は何があっても守り抜くんだ。
その為にこの顔も知識も何もかも利用する。そして、前世の二の舞にはならない。
俺ならできる。
自分に言い聞かせてペンを手にする。
『アラン・メロヴィング様へ
お手紙ありがとうございます。
お誘い大変嬉しかったです。
都合のいい日は来週の木曜日の昼頃です。
アラン様のご予定に合いましたらまたご連絡下さい。
レオベルト・エンフィアより』
書き終わった後、手は震えていた。アランに会うという、自分の選択に恐怖を覚える。
仲良くなんてなれない。話したくなんてない。
切られてない首が何故か痛む。
「レオベルト様……」
「!…ハル?どうしたの?」
ハルが心配そうに顔を覗き込んできた。
もしかしてずっとだまって傍にいたのか?
「レオベルト様が苦しそうだったので…ご迷惑でないなら、俺、ずっとそばに居ます。レオベルト様がまた笑顔になられるまで、ずっと。」
「あ…」
「あ、お、俺なんかに傍にいられても迷惑ですよね!ご、ごめんなさい。」
そうやって部屋から出ていこうとするハルの服の袖を引っ張った。
「ううん。」
「レ、レオベルト様……?」
「傍に、いて。」
「え、あ……も、もちろんです!」
ふわりと嬉しそうに笑うハルを見て、なんだか俺もうれしくなってくる。
味方なんて今世でもお母様だけだと思ってた。俺の事見てくれる人っていないって。
だけどそれは違かったのかもしれない。
俺はアランのことしか見てなかったから、周りの人の事見れてなかったんだ。
俺の事を心配してくれる人は居たはずなのに、どうして気づけなかったんだろう。どうしてこんな大切な事が分からなかったんだろう。
今世では絶対そんな愚かな事はしない。
…俺に寄り添ってくれるハルが嬉しくて、涙が出そうだ。
「レオベルト様…アラン様に会いたくないならお断りしてもよろしいのでは?」
「…そんな事いう人始めてだ。みんなこの家のためにも、意地でも交流しろって言うのに。」
「俺はレオベルト様に苦しんで欲しくないので……」
「ふふ、ありがとう。
だけど、やっぱり会わなくちゃ。楽しい未来の為にもね。」
覚悟は決めた。嵐はすぐそこにある。
だけどこの嵐を乗り越えたらきっと幸せな未来が待ってるはずだってそう思った。
だけどこの嵐はただの序章に過ぎないのだった。
3,724
あなたにおすすめの小説
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
狂わせたのは君なのに
一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
愛などもう求めない
一寸光陰
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる