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散歩
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今日は、どうにも腹の虫が収まらない気分だった。
歩いて歩いて気分転換を図ったが、どこを通ってもまるで拘束されているみたいに身体が重かった。視線を変えようとして、辺りを見渡すと、無機質な動いてすらいないような古い監視カメラのレンズと目が合って、自分が悪いことをしているような気分になって、地面に視線を逸らす。
あぁ、息苦しい。
上から頭のてっぺんを焼く太陽が、私の視線を掠めて視界が反射的に狭まった。こんな事をしているせいなのか、こんなにも消極的な自分に心底腹が立ち、足元に転がる石ころを意味もなく蹴りあげた。
まるで何かに脅えて逃げているみたいじゃないか。
傍から見れば挙動不審な人間にでも見えていたかもしれない。いや、実際、そうなのだろう。自分でも自覚はしていた。
右も左も分からずにさまよう外国人のような外見をした日本人が、見知った土地で挙動不審になりながらさまよっている。
ふと、そう言えば自分は気分転換に来たはずなのにどうしてこんなにも息が苦しいのだろう、どうしてこんなに腹が立つのだろう、と言う疑問が頭をよぎった。
そして、その疑問に対して答えが出てくるのにさほど時間はかからなかった。
その疑問に対して浮かんだ答えは、もしかしたらいつの間にか、私の呼吸器官が肺呼吸からエラ呼吸に変わってしまっていて空気中から酸素を取り入れることが出来なくなってしまったのだろうか、というものだ。もしそうならば、苦しいのは当たり前である。なにせ、常に摂取せねばならないものが摂取されていないのだ。腹が立っているのも頭に酸素が行ってないからかもしれない。
あぁ、そうか、けどそれなら私はどうして──
そこまで思考が行き着いて、女子のような、か細い指で首筋から顎の当たりを探るように撫でてみるが、そこにはあるはずの無いものが無かった。
──どうして私にはエラがついていないのだろう。
あぁ、そうだ、そこにエラがないならば刃物をそこに当て抉ってエラを作ってしまえば。
……私は一体何を考えているのだろう。
ふと、我に返れば。私に残ったのは空虚な妄想と歩き続けた倦怠感のみである。疲れているのか、それとも本当に狂ってしまっているのか、分からないがとにかく私は深呼吸をして後ろを振り返った。
深めの前ポケットから携帯を取り出すと地図を開き自分の住所を入力する。太陽からの光のせいか、部屋で見た時より暗く見える画面を凝視して帰路を眺めた。
表示されているのは五kmという距離と、徒歩二時間という数字である。想定していたよりも長くなってしまった道のりを覚悟して一歩踏み出すと、あれだけの腹立たしさは何処かへ落としてしまったように消えてしまっていた。
歩いて歩いて気分転換を図ったが、どこを通ってもまるで拘束されているみたいに身体が重かった。視線を変えようとして、辺りを見渡すと、無機質な動いてすらいないような古い監視カメラのレンズと目が合って、自分が悪いことをしているような気分になって、地面に視線を逸らす。
あぁ、息苦しい。
上から頭のてっぺんを焼く太陽が、私の視線を掠めて視界が反射的に狭まった。こんな事をしているせいなのか、こんなにも消極的な自分に心底腹が立ち、足元に転がる石ころを意味もなく蹴りあげた。
まるで何かに脅えて逃げているみたいじゃないか。
傍から見れば挙動不審な人間にでも見えていたかもしれない。いや、実際、そうなのだろう。自分でも自覚はしていた。
右も左も分からずにさまよう外国人のような外見をした日本人が、見知った土地で挙動不審になりながらさまよっている。
ふと、そう言えば自分は気分転換に来たはずなのにどうしてこんなにも息が苦しいのだろう、どうしてこんなに腹が立つのだろう、と言う疑問が頭をよぎった。
そして、その疑問に対して答えが出てくるのにさほど時間はかからなかった。
その疑問に対して浮かんだ答えは、もしかしたらいつの間にか、私の呼吸器官が肺呼吸からエラ呼吸に変わってしまっていて空気中から酸素を取り入れることが出来なくなってしまったのだろうか、というものだ。もしそうならば、苦しいのは当たり前である。なにせ、常に摂取せねばならないものが摂取されていないのだ。腹が立っているのも頭に酸素が行ってないからかもしれない。
あぁ、そうか、けどそれなら私はどうして──
そこまで思考が行き着いて、女子のような、か細い指で首筋から顎の当たりを探るように撫でてみるが、そこにはあるはずの無いものが無かった。
──どうして私にはエラがついていないのだろう。
あぁ、そうだ、そこにエラがないならば刃物をそこに当て抉ってエラを作ってしまえば。
……私は一体何を考えているのだろう。
ふと、我に返れば。私に残ったのは空虚な妄想と歩き続けた倦怠感のみである。疲れているのか、それとも本当に狂ってしまっているのか、分からないがとにかく私は深呼吸をして後ろを振り返った。
深めの前ポケットから携帯を取り出すと地図を開き自分の住所を入力する。太陽からの光のせいか、部屋で見た時より暗く見える画面を凝視して帰路を眺めた。
表示されているのは五kmという距離と、徒歩二時間という数字である。想定していたよりも長くなってしまった道のりを覚悟して一歩踏み出すと、あれだけの腹立たしさは何処かへ落としてしまったように消えてしまっていた。
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