落ち人を拾いまして

★エリィ★

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アレクと出会ってから、3ヶ月。
彼は、元々の頭が良かったのか、色んなことを覚えるのが早かった。市役所の人から
「彼は、普段の生活には、困らないぐらいの常識や読み書きができるようになったので、勉強のためにこちらに来なくて大丈夫ですよ」
と連絡があり、アレクに話をしたら、とても嬉しそうに話をしてくれた。
「早く伊織の役に立ちたくて、必死に勉強したんだ」
「いや、今までも俺のために、家の家事をやってくれてたじゃないか。全然、役に立ってるから」
「それだけじゃ足りない。俺は、自分でまだ働けなくて、伊織に頼ってるし」
いやいや、シュンとしないでくれ。お前、そんなキャラだったか?うーん、なんか初めのクールなイメージが消え去ってないか?なんか大型犬を見ているようだぞ。
「あっ、さっきの電話で、一度、俺とアレクで市役所に顔を出して欲しいと言われたんだが、今度の土曜日でいいか?」
「ああ、伊織の都合で大丈夫だ」
「じゃあ、その日程で伝えとくぞ」
うーん、何の話になるんだろうなぁ。


アレクと一緒に住み始めてわかったことは、こいつスペック高いイケメン様だった。料理も初めの頃は、俺が教えながらだったのに、今じゃたぶん俺より上手い。そのせいか分からないが、前までは、バーとかに飲みにいっていたのに、仕事が終わったら、まっすぐ帰宅している。胃袋掴まれてる気がする。
うん、アレクが女性だったら、確実に惚れてるわ。こんなに甲斐甲斐しく世話してくれる嫁欲しい。


――――――――――


市役所に行く日。
ついて早々に、担当の人から
「実は、ハイヤーさんは、ある程度、生活基盤ができたので、社会生活に慣れるためとお仕事に慣れるために、アルバイトの斡旋をしようかと思いまして、お呼びしました」
んっ?アルバイトかぁ。それなら、俺別にいらなくねぇ?アレクに話ししてくれればいいのに。
「アルバイトですか?まだ俺は、字の読み書きが怪しいのですが、大丈夫なんですか?」
「ああ、それは大丈夫です。何箇所か候補があるのですが、どこも落ち人の方の受け入れを快く快諾してくれておりまして、ハイヤーさんが大丈夫なら、いつからでもという話にはなっているんです」
「わかりました。ちょっと候補を尋ねていいですか?」
担当とアレクが、話してるのを横目で見ながら思う。(アレク働き始めるのかー。そうすると一緒に住む必要ないよなぁ。担当もアレクは大丈夫という話をしていたし。)そう考えると寂しいという気持ちが湧き上がってくるのに気付いて驚いた。なんで?アレクが生活で、自立するの嬉しいはずなのに。自分の心の動きがよくわからなくて、悩んでいたら、伊織?と呼ばれて、ハッ、とアレクを見た。
目でどうした?と聞かれていたけど、首を振ってなんでもないよ。と。
「アレク、アルバイト先決まったか?」
「うーん、ここのカフェにしようと思う。家から近いし」
その返答を聞いて、ホッとしている自分にまた驚いた。

「じゃあ、そのカフェに連絡しておきますが、いつからが良いですか?先方に話をして決まったら、また連絡しますね」
「一週間後からでお願いします」
「あと早見さんの連絡先をカフェに伝えて構いませんか?何かあった時の緊急連絡先として」
「あっ、別に構いません」
「では、また連絡しますので、宜しくお願いします」
一礼して担当者は部屋から出て行った。

部屋についてから、アレクにアレク用の通帳や印鑑を渡した。このタイミングでなので、アレクは一瞬驚いたようだけれど、意図はわかったのだろう。受け取ってくれた。
中身を見て驚いていた。
「これっ?!」まぁ、そうだろう。補助金の金額とかも聞いているだろうけど、その中には、ほぼ補助金の金額3ヶ月分あるんだから。携帯電話代ぐらいだろうか、そこから引き落とされているのは。
苦笑して、
「どうなるかわからなかったから、手をつけなかった」
と説明したが、納得してくれている様子はない。でも、納得してくれなくては困る。だから、
「これから働くんだから、来月からお金を入れてくれればいいから。今までは働いていなかったんだから、気にするな」
と言ったが、それでも苦虫を噛み潰したような顔をしたあと、俺が引き下がらないと気づいたのだろう、しぶしぶ引き下がってうなづいてくれた。
「やっぱり伊織はお人好しだ」となぜか抱き締められた。ちょっと苦しいぐらいの強さだが、俺も、イヤな気分じゃない。深く追求するのは、ダメな気がしたので、この気持ちに蓋をして、目の前の体を抱き締め返した。
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