記憶探し

★エリィ★

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10(side大和)

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意識を失った悠馬をその場から連れてタクシーで、前入院していた病院へ連れて行った。
俺が殴った男は、その場に放置だ、それよりも悠馬をどうにかしなくては。

夜間だったにも関わらずに前回同様に入院の手続きをしてくれた。診察してくれた医師は、体には異常はないので大丈夫だと言ってくれたけれど、俺は、悠馬についていたかった。でも、医師に起きたら知らせるから、今日は、家に帰りなさいと言われてしぶしぶ帰宅した。

(また記憶を失ったらどうしよう。俺のこともまた忘れられたら…)

不安で、寝付くこともできなく、睡眠不足のまま、病院の面会時間が始まる時間に悠馬の病室を訪ねた。悠馬はまだ目覚めていないようで、とりあえず悠馬の両親にまた意識を失って病院にいることを伝えた。
ベッドの近くの椅子に腰を下ろし、悠馬の寝顔を見つめながら過去に思いを馳せた。

◇◇◇◇

悠馬と出会ったのは幼稚園の5歳、年長の時だった。悠馬は引っ越してきたらしく途中からの入園となった。先生が「今日から新しいお友達が入ります。皆さん、仲良くしてくださいね」と連れてきたのが、悠馬だったのだ。第一印象は大人しい子だった。皆で遊んでいてもそばでニコニコしているだけで、あまり会話をしない。俺とは遊ぶグループが違ったから、一緒に遊ぶことはなかった。
それが変わったのは、秋に行う運動会からだ。かけっこで隣同士、俺は昔から運動神経は良かったから一番初めにゴールをしていたが、悠馬は途中で転んで痛みに耐えながらゴールした。先生が悠馬の泥がついた膝を洗うために手を繋いで歩き出そうとしたところに、俺が「先生、俺が悠馬を連れていくよ」と代わりに手を繋いで歩き出した。洗っている間、痛みに耐えていた悠馬だったが、無事に洗い終わると俺を見て「ありがとう」と満開の笑顔でお礼を言われて、俺はそこで恋に落ちたんだと思う。

そこから親同士も仲良くなり、小学校~大学まで同じ進路に進むことになった。悠馬に恋愛感情を持ったことにきちんと気づいたのは、中学で、告白されて気になっていた女子と付き合うことになった時だ。気づいたのは、その子とキスをする時に思い浮かんだのが悠馬のことで、愕然とした。
それからとてつもなく悩んだ。悠馬のことは親友だとは思っていたけれど、恋愛対象として見ていたのかと。
付き合っていた子の雰囲気が好きだったのだが、悠馬と似ていた。悠馬は、中学のころから、可愛い外見でふんわりした雰囲気を出していた。たぶんそこいらの女子よりも可愛いと思う。それに気づいてしまったら、付き合っている女子に申し訳なくて別れた。そこから、悠馬にばれない様に細心の注意を払って、親友以上の距離にならないように気を付けながら接した。
高校に入ってお互いに同じ男子校に入学して、一気に悠馬はモテた。高校に入っても悠馬はそこまで身長が高くならず童顔で可愛い顔だったせいもあるのだろう。1年の時に数回、告白のための呼び出しをされている現場に何回か遭遇した。俺は、その度に冷や冷やしていた。いつか俺に、付き合っている人できた、と報告を受けるんじゃないかと。俺はその時に笑っておめでとうと言えるだろうか。気持ちを押し込めることができるだろうかと。
そんな心配をよそに、結局、悠馬は一度も誰とも付き合うことなく高校生活を終了させたのだった。
大学進学を機に、一人暮らしをする悠馬が心配な悠馬の両親から頼まれて一緒に暮らすことが決まってからの俺は忍耐の連続だった。好きなやつが同じ空間にいるのに何もできない、悠馬は俺を幼馴染以上の感情を持っていないようだったので適度な距離感を大事にしなくてはいけない、気持ちを気づかれてはいけない、というないないづくしだったのだ。
そんな時に悠馬の記憶喪失。本当は、このまま気持ちを伝えないつもりだったけれど、記憶喪失の原因となった日、俺に泣きながら助けを求めてきた悠馬をみて考えを改めた。ベッドに横なって寝ている悠馬を見て、悠馬が幸せになるなら、それが女性ならばまだ諦めることができると思う。でも、今回みたいにたぶん男性に悠馬を取られると可能性もでてくるとなると話は違ってくる。悠馬が俺以外のやつのものになったら…と大学卒業後、別々の道に歩んで俺の知らないところで見知らぬ人と幸せになるであろう悠馬を見たくない。
だから、悠馬に俺を意識してもらうために、記憶がなくなったのを世話することと並行してなるべく優しく寄り添って生活することにした。
なのに、また悠馬が危ない目にあった。そのせいで意識を失ってしまった。俺が間に合わなかったら悠馬は…。
首をふり、なかった未来のことは忘れる。

(悠馬、早く目覚めてくれ。俺、お前に伝えたいことがあるんだ。もう自分の気持ちから逃げないから)

椅子に座りながら、悠馬の寝顔を見続けた。
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