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第1章
19.嘘は聞きたくありませんでした。
「…お嬢、一番聞きたいことがあるんじゃないのか?」
ジルが真剣な眼差しをわたしに向けます。
わたしは息を呑みました。
「……いつ、記憶が戻ったの?記憶が戻らないことには、"転移魔法"なんて知らないし、使えないよね?!」
『記憶が戻ったの?』
わたしがずっと聞けなかった言葉。
「お嬢に助けてもらってから半年経った頃かな?」
「屋敷に来てから割と早くに戻っていたのね……」
「お嬢、俺の記憶が戻ってるの気付いていただろ?」
「えっ」
「なんで問い質さなかった?」
「え、な、なに言ってるの?」
「どうしてだ?」
ジルがわたしを射るような眼差しを向けます。
わたしはごくりと息を呑みました。
そして意を決して口を開きました。
「ジルに嘘を言ってほしくなかった、…の。他の人には嘘をついても、わたしには言ってほしくなかった。ジルの口から嘘は聞きたくなかった。だから……、聞かなかった。敢えて聞かなかったの……」
ジルが立ち上がり、わたしの隣に座りました。
「それはどうして?理由は?」
ジルがじっとわたしの目を見つめます。私も反らせません。
「……そ、それは…」
「それは?」
「ジルに嘘を言ってほしくないし、それに、きっとジルはわたしには嘘をつかないと思ってるの。上手く言えないんだけど、記憶に関しては本当のこと聞きたくなかった」
「そうだな。俺はお嬢には嘘は言わない。ただ聞かれないことは言わないだけだ」
「本当に『記憶を取り戻した』と聞いたら、わたしはお父様に報告しないわけにはいかないわ。わたしもお父様に嘘はつきたくないから」
「お嬢は、嘘つくの下手というか、嘘ついてもバレバレなんだよ。だから聞かなくて正解だ」
「え、そうなの?」
「そうだよ。で?どうして報告したくなかったんだ?」
ジルが顔を近づけてきました。わたしは物理的な恥ずかしさと、これから言うことの恥ずかしさで顔が真っ赤になってるはずです。わたしは手で顔を覆い、
「報告したらっ、ジルは親元とか本来いるべきところに帰らせられるからっ!わたしのそばからいなくなっちゃうなんて、絶対イヤなの!ジルは、わたしだけのジルなのっ!」
早口で捲し立てると、
「やっと聞けた」
と言ってわたしをぎゅっと抱きしめました。
「な、なにしてるのっ!」
実は、危険で危ない時に助けてくれる時にしかジルに触れられたことはないのです。
侍女とは名ばかりで、着替えや湯浴みなどは別のメイドにしてもらっています(わたしに男とバレる前からしたがらなかったのです。それをわたしが許容していました)。実質、護衛なのですが、わたしが侍女としてそばに置いているのです。
「いや…か?」
「……いやじゃ…ない」
「よかった。やっとお嬢が手に入った」
「…そうなのね。そんなにわたしが欲しかったの?」
「初めて会った時からずっと欲しかった」
わたしはジルの胸に耳を当てました。とくとくという心臓の鼓動を『ジルでも緊張するんだな』とぼんやり思っていました。
「好きだ、愛してる。可愛くて愛しい俺だけのシャルロット」
ジルはわたしの頭にそっと唇を落としました。
ジルが真剣な眼差しをわたしに向けます。
わたしは息を呑みました。
「……いつ、記憶が戻ったの?記憶が戻らないことには、"転移魔法"なんて知らないし、使えないよね?!」
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わたしがずっと聞けなかった言葉。
「お嬢に助けてもらってから半年経った頃かな?」
「屋敷に来てから割と早くに戻っていたのね……」
「お嬢、俺の記憶が戻ってるの気付いていただろ?」
「えっ」
「なんで問い質さなかった?」
「え、な、なに言ってるの?」
「どうしてだ?」
ジルがわたしを射るような眼差しを向けます。
わたしはごくりと息を呑みました。
そして意を決して口を開きました。
「ジルに嘘を言ってほしくなかった、…の。他の人には嘘をついても、わたしには言ってほしくなかった。ジルの口から嘘は聞きたくなかった。だから……、聞かなかった。敢えて聞かなかったの……」
ジルが立ち上がり、わたしの隣に座りました。
「それはどうして?理由は?」
ジルがじっとわたしの目を見つめます。私も反らせません。
「……そ、それは…」
「それは?」
「ジルに嘘を言ってほしくないし、それに、きっとジルはわたしには嘘をつかないと思ってるの。上手く言えないんだけど、記憶に関しては本当のこと聞きたくなかった」
「そうだな。俺はお嬢には嘘は言わない。ただ聞かれないことは言わないだけだ」
「本当に『記憶を取り戻した』と聞いたら、わたしはお父様に報告しないわけにはいかないわ。わたしもお父様に嘘はつきたくないから」
「お嬢は、嘘つくの下手というか、嘘ついてもバレバレなんだよ。だから聞かなくて正解だ」
「え、そうなの?」
「そうだよ。で?どうして報告したくなかったんだ?」
ジルが顔を近づけてきました。わたしは物理的な恥ずかしさと、これから言うことの恥ずかしさで顔が真っ赤になってるはずです。わたしは手で顔を覆い、
「報告したらっ、ジルは親元とか本来いるべきところに帰らせられるからっ!わたしのそばからいなくなっちゃうなんて、絶対イヤなの!ジルは、わたしだけのジルなのっ!」
早口で捲し立てると、
「やっと聞けた」
と言ってわたしをぎゅっと抱きしめました。
「な、なにしてるのっ!」
実は、危険で危ない時に助けてくれる時にしかジルに触れられたことはないのです。
侍女とは名ばかりで、着替えや湯浴みなどは別のメイドにしてもらっています(わたしに男とバレる前からしたがらなかったのです。それをわたしが許容していました)。実質、護衛なのですが、わたしが侍女としてそばに置いているのです。
「いや…か?」
「……いやじゃ…ない」
「よかった。やっとお嬢が手に入った」
「…そうなのね。そんなにわたしが欲しかったの?」
「初めて会った時からずっと欲しかった」
わたしはジルの胸に耳を当てました。とくとくという心臓の鼓動を『ジルでも緊張するんだな』とぼんやり思っていました。
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