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第一部
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しおりを挟むアランに引きずられるようにギルドを後にすると、近くの路地裏へと入っていく。
人気のない薄暗い路地裏。普通の人であれば近寄らないような場所。この時間帯なら尚更。
……考えたくないが、まさか路地裏に連れ込んで集団リンチとか……じゃない、よな。
いや、仮にも生徒会長だ。そんなことするわけがない。
とはいえ一度悪い考えが浮かんでいくと、ぶくぶくと気泡のように増えていく。
周囲の暗さに相まって、自然とネガティブ思考へと陥ってしまう。
周辺に光魔法でも打ち上げてしまおうかと考えるが、確実に目立つためここは我慢しよう。
…………しかし、一体こんな場所に何の用があるんだ。
前を歩くアランは何も言わない。ただ路地裏を進んでいく。
もし万が一本当に集団リンチとかに巻き込まれるのならば……ここはもう黙示録を出すしかないな。
自分の身を守るためだ。躊躇なんてしていられない。
「着いたぞ。入れ」
ハッと顔を上げると、目の前にある赤茶の扉が開かれた。
おずおず中へ入ると、赤い絨毯に煌びやかな照明に彩度が低めの赤いソファーにブラウン色の机。まるでバーのような内装だ。
その室内には、数人の歳が近い少年たちが屯っていた。
「総長、おかえりなさいっ」
そのうちの一人の少年がアランに気が付くと、深々と頭を下げた。
それに続くかのように、他の少年たちも同じように頭を深々く下げる。
……なんだっ!? なんかの組織の舎弟か!?
突然の光景に唖然としていると、アランに手を引かれ奥の部屋へと連れられて行く。
半ば強引に部屋には押し込まれると、アランはドカッとソファーに腰を下ろした。
「座れ」
「あ、はい……」
エリオットは素直にソファーに座る。
何故この場所に連れてこられたかわからないが、とりあえず刺激をせずに穏便に終わらせよう。そうしたら、きっとすぐに解放してくれるはずだ。
アランはじっとエリオットを見据えると、口を開く。
「お前、何処のクラスの者だ?」
「…………え?」
「学園の在籍しているクラスだ。お前、あの日学園内の中庭にいただろ」
……あ、あの時か。
アランの言葉の意味が分かり、あの日ことを思い出し始める。
散歩をしていた時、偶然出くわしてしまった時のこと。
一応同じ学園には通っているが今の外見とは違うし……そもそもバレるのは避けるべき。
「いや、俺はあの学園には通っていないんだ」
勘づかれていないのなら、とにかく否定をしておこう。
「……はぁ?」
するとアランの表情が一転、まるで怒気を全身に纏わせた猛獣のような表情をする。
エリオットは、まずいと慌てて弁解を始めた。
「あ、あの時! 俺は迷子で、間違えて入ってしまったんだ!!」
「迷子?」
「そう! のんびりと空中散歩をしていたら迷ってしまって……。まさか、あそこが学園内なんて知らなかったんだ!!」
そう弁解をすると、アランは──
「……そうか。なら、どう探してもお前の情報が学園内の何処にも無かったのは……ふむ、合点がいくな」
と、一人納得していた。
どうやら上手くはぐらかすことが出来たようだ。一安心、一安心。
「だが、気を付けろよ。不審者として手配されてしまえば、少なからず尋問を受けることになるからな」
「あぁ、これからは迷い込まないように気を付けるよ」
含み笑いを見せた刹那、アランは大きくテーブルを叩いた。
突然の奇行に、エリオットは目を丸くした。
……ご乱心か? それとも、疲れているのか? ……生徒会長というのは、案外大変なんだなぁ。
哀れみを含む視線を向けた。
一方アランは──
……くそっ……リルが変なことを言うからだ。
あの時言われた、一目惚れという言葉が脳裏に蘇る。
この俺様が誰かに一目惚れなんて、するわけないだろ。
リルの言葉が脳裏に反芻し、両手で顔を覆うと長嘆息を漏らす。
とりあえず……もう要件は終わったと言うことだろうか。
エリオットは確認するかのように、言葉を発する。
「え……と、話は終わりですか?」
「あ? まぁ、そうだな」
なら早いところ帰ろう。
もうそろそろ日付も変わる頃合いだし、寮に着いたらすぐ床に就こう。
足早に退散しようと腰を上げた時、何やら部屋の外が騒がしかった。
あの少年たちであろう声に、何処か聞いたことのあるような女の声。
…………ん? 女の、声……。
嫌な汗が吹き出す。
どうやら女性の声に敏感になってしまったようだ。
どう考えてもいるはずがないというのに、どうしても気配を察知してしまう。
思いのほか、かなりの精神的影響を受けているようだ。
……そう、いるわけがないのだ。こんな路地裏の奥なんて、普通赴くわけがない。
次第に声が近付くと、扉が大きく音を立て開かれる。
「アラン様っ!!」
「…………は? アリス……ティア?」
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