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「……お前は」

 ……やばい。確実に出会ってはならない人物に出くわしてしまった……。
 突然の生徒会長の登場に、狼狽の色を隠せずにいた。
 イメージ的にはギルドにいる野蛮な人とか大嫌いそうだというのに、何故こんな場所にいるのだろうか。
 そもそも、生徒会長の姓がジークフレッドということも初耳な気がする。
 まぁ、興味がなかったからだろうが、よくよく見ると多少エヴァンの面影がある気もする。
 二人の顔を交互に見たアディルは、首を傾げながら言葉を発した。

「ん? 君、アランと知り合いなのか?」
「え、いや……」

 知り合い、というか同じ学園に通っているんですよ。……なんて、言えるわけがないっ!!
 パニックに似た焦燥感に苛まれていると、グサグサと突き刺さる痛い視線に気が付く。が、その視線の方向へ向くわけにはいかない。向いてしまえば負け確定だ。何もかもが終わってしまう。
 ……いや、そもそも何故こんなにも生徒会長はじっと此方を凝視しているのだろうか。
 考えたが、前にこの姿でばったり会ってしまった以外に心当たりは存在していなかった。
 他に……他に何かあるとすれば……考えたくはないがバレてしまったのでは。
 見た目は学園とは違うが、声は変化魔法を使用していないので同じだ。勘が鋭い人ならば、それで勘づかれてしまう。
 ここは早急に退散しよう……いやすべきだ。

「お、俺はここらで——」
「待てっ!!」
「ひいっ!」

 失礼しようとした途端、力強く腕を掴まれる。
 いやいや、ちょっと待って。これはバレているのか!?
 もしバレているのであれば早く寮に戻ってアリバイを作らなくてはいけないというのに、アランにがっしり腕を掴まれているこの状態では逃走は不可能だ。
 これではあの時のように、姿を消して逃げることが出来ない。体を霧状にすることも可能だが、それには少なからず詠唱が必要だ。
 しかし、生徒会長がそんな隙を与えるわけがない。詠唱を始めた瞬間、腹部をグーパンてくるだろう。……流石にそれは避けたい。避けなくてはいけない。

「……今回は絶対に逃がさないからな」
「い、いやぁ……」

 あまりに本気の面持ちに、顔が強ばる。
 ……これは逃走を選択するより、従う方が正解だろう。
 流石に生徒会長と戦うのは避けるべき事項だし、逃げたら逃げたで剣を振り回しながら追ってくることは間違いない。
 目立たず事を穏便に済ますためには……うん、従うしかない。

「わ、分かったから。手を……離してくれないかな?」

 降参だと言わんばかりに、片手を上げる。
 しかし、依然とアランは手を離す素振りはない。

「……離したらお前、逃げるだろ」
「いやいや、逃げないからっ!!」

 訝しげな言葉を否定するかのように首を横に振るが、アランは何処か納得していないようだ。
 とうに逃げる気は失せているし、逃走に成功したとしても……またばったり出くわした時が怖い。二度あることは三度あるというし。
 そして、三度目は絶対血を見ることになりそうだ。
 じっとエリオットのことを凝視続けていたアランは、数分後口を開いた。

「……ダメだな。もしものことに備えて、俺様は手を話すことが出来ない」
「……あ、ソウデスカ」

 どうやら俺は信用されていないらしい。……諦めよう。

「兄貴。こいつ、借りていくからな」
「えと、さようなら」

 エリオットはアディルに会釈すると、そのままアランにズルズルと引きずられて行った。
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