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第一章
領主の処分
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「はい。滞りなく」
オルディンが、そう言って目を伏せ、数枚の書類を手に取った。そこには、領主が行った様々な悪事の証拠や、集まった証言、押収した品物などが詳細に記載されている。
「あの小物はかなり好き勝手していたようで、少し叩いただけで、余罪がいくつも出てきました。人身売買にまで手を出しており、証拠も発見されましたので処分は難しくありませんでした。本人は熱帯地域での強制労働、罰金により全財産を没収となっております。ちなみに、妻は事件後すぐに離縁し、逃げるように子供を連れて実家へ帰っておりました。彼女についても犯罪の関係性を調査し、厳正に対応する予定です」
「そうか、わかった。……本当なら、私が直接手を下してやりたいところだったんだが」
「堪えてください。皇帝が私怨で動くのは良くありません」
「わかっているさ。だから、本人が一番嫌がりそうな処罰で妥協してやっただろう?」
調べたところ、親から領主の地位を受け継いだ後、彼はあの小さな世界で、まるで王であるかのように振る舞っていたらしい。
幼い頃から甘やかされて育ったせいか、わがままでかなりプライドの高い男だったようなので、自分が食い物にしていた奴隷たちのような扱いに身を落としてやるのが一番だと考えたのだ。
「通常の罰なら数十年も経てば出られるかもしれないところを、永久に釈放しないよう念入りに手を回していたのに、妥協ですか」
そう言って、オルディンが苦笑する。
「それくらい、当然だろう? あんなクズは、今すぐにでもこの世から消し去ってやりたいくらいなんだ。再び世に出すなどとんでもない。一発でいいから殴りに行かせてくれと頼んだのに、お前たち側近が許してくれなかったから、仕方なくこうしたんだろう」
「兄上が一発殴るということは、死刑となんら変わりませんよ……」
呆れたように言うオルディンに、ディオルグは「……手加減くらいはできる」と言って、そっと目を逸らした。
普段ならば力を調整することも容易にできるだろうが、つがいに手を出そうとした憎い相手に対してもそれができるかというと、はっきりとは言えないだろう。
竜人族はただでさえ強く、襲ってくる者たちを力によって制圧し、国土を広げ、帝国を築いてきた。
そのトップである皇帝が、私怨によって暴力を振るうと噂にでもなれば、多くの者たちに恐怖を与え、裏では反感を買うだろう。
彼らは、それを避けなければならなかった。
「脱走すれば竜人族が即処刑に向かうだろうと告げたら、顔を真っ青にして膝から崩折れていたと報告があったから、とりあえずそれで良しとするよ」
「それは重畳です」
そう話を結んで、オルディンは元領主に関する書類を元あった位置へバサッと投げ捨てた。そして、ふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、対応に向かっていた騎士が、子供を一人連れて来るそうですね。何でも、領主の下で利権を貪っていた関係者たちを捕縛した際、騎士ルーシャスがその子を庇ったとか……」
「あぁ。彼はサーシャとキアラをここへ連れてきてくれた功労者だ。きっと何か理由があるのだろう。詳細は戻ってきてから聞くことになっている」
ディオルグが、なぜか不満そうな表情で息を吐く。
「何か、問題でもありましたか?」
「いや、ううん……」
いやに歯切れが悪い。言いにくいような深刻な問題なのだろうかと、オルディンは息を呑んだが、次に返ってきた言葉に目を丸くした。
「その子供……キアラと同じ年の男の子らしいんだ」
オルディンが、そう言って目を伏せ、数枚の書類を手に取った。そこには、領主が行った様々な悪事の証拠や、集まった証言、押収した品物などが詳細に記載されている。
「あの小物はかなり好き勝手していたようで、少し叩いただけで、余罪がいくつも出てきました。人身売買にまで手を出しており、証拠も発見されましたので処分は難しくありませんでした。本人は熱帯地域での強制労働、罰金により全財産を没収となっております。ちなみに、妻は事件後すぐに離縁し、逃げるように子供を連れて実家へ帰っておりました。彼女についても犯罪の関係性を調査し、厳正に対応する予定です」
「そうか、わかった。……本当なら、私が直接手を下してやりたいところだったんだが」
「堪えてください。皇帝が私怨で動くのは良くありません」
「わかっているさ。だから、本人が一番嫌がりそうな処罰で妥協してやっただろう?」
調べたところ、親から領主の地位を受け継いだ後、彼はあの小さな世界で、まるで王であるかのように振る舞っていたらしい。
幼い頃から甘やかされて育ったせいか、わがままでかなりプライドの高い男だったようなので、自分が食い物にしていた奴隷たちのような扱いに身を落としてやるのが一番だと考えたのだ。
「通常の罰なら数十年も経てば出られるかもしれないところを、永久に釈放しないよう念入りに手を回していたのに、妥協ですか」
そう言って、オルディンが苦笑する。
「それくらい、当然だろう? あんなクズは、今すぐにでもこの世から消し去ってやりたいくらいなんだ。再び世に出すなどとんでもない。一発でいいから殴りに行かせてくれと頼んだのに、お前たち側近が許してくれなかったから、仕方なくこうしたんだろう」
「兄上が一発殴るということは、死刑となんら変わりませんよ……」
呆れたように言うオルディンに、ディオルグは「……手加減くらいはできる」と言って、そっと目を逸らした。
普段ならば力を調整することも容易にできるだろうが、つがいに手を出そうとした憎い相手に対してもそれができるかというと、はっきりとは言えないだろう。
竜人族はただでさえ強く、襲ってくる者たちを力によって制圧し、国土を広げ、帝国を築いてきた。
そのトップである皇帝が、私怨によって暴力を振るうと噂にでもなれば、多くの者たちに恐怖を与え、裏では反感を買うだろう。
彼らは、それを避けなければならなかった。
「脱走すれば竜人族が即処刑に向かうだろうと告げたら、顔を真っ青にして膝から崩折れていたと報告があったから、とりあえずそれで良しとするよ」
「それは重畳です」
そう話を結んで、オルディンは元領主に関する書類を元あった位置へバサッと投げ捨てた。そして、ふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、対応に向かっていた騎士が、子供を一人連れて来るそうですね。何でも、領主の下で利権を貪っていた関係者たちを捕縛した際、騎士ルーシャスがその子を庇ったとか……」
「あぁ。彼はサーシャとキアラをここへ連れてきてくれた功労者だ。きっと何か理由があるのだろう。詳細は戻ってきてから聞くことになっている」
ディオルグが、なぜか不満そうな表情で息を吐く。
「何か、問題でもありましたか?」
「いや、ううん……」
いやに歯切れが悪い。言いにくいような深刻な問題なのだろうかと、オルディンは息を呑んだが、次に返ってきた言葉に目を丸くした。
「その子供……キアラと同じ年の男の子らしいんだ」
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