完璧君と怠け者君

pino

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一章

噛み合わない二人

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 一日が終わり、帰る準備をしていると、隣に居る黒田がキラキラした笑顔で声を掛けてきた。


「なぁ、俺どうだった?」

「は?」

「痒かったか?」

「いや、良かったんじゃないのか」

「やったー♪じゃあ一緒に帰ろうぜ」

「何でそうなる?悪いが寄る所があるから一緒には無理だ」

「付き合うよ♪」


 そう言って黒田はニコニコ笑いながら付いてきた。少し真面目に授業を受けたからって調子に乗っているのか?

 あまり相手にすると俺の血圧がどうにかなりそうだから放っておいた。


 今日は本屋で新しい参考書を買う予定だ。
 休みの日は全て勉強に費やしている。それかやりたい事が出来たらそれに費やす。今日は塾も無いから家で勉強だ。勉強は無駄にはならないからな。

 本屋で本を選んでいると俺の周りをウロチョロしていた黒田が喋り出した。


「黒田と本屋って似合うよなー。なぁ何買うのー?」

「参考書だ」

「うわーそんな分厚いの買うの?重そう」

「うるさいな。それよりも黒田も勉強が出来るみたいだが、塾とか行ってるのか?」

「そんなとこ行かねーよ。授業聞いてれば十分だ。あと教科書読んだり?」

「嘘だろ?」

「俺嘘つかねぇよ」


 黒田が言っている事が本当なら相当凄い人間だぞこいつは!いつもはあんなにだらしなくしているのに、まさかそんな才能があったなんて!
 でも悔しいから認めてやらない!

 内心驚いているのを悟られないように興味を手に持っている参考書に移す。


「ま、まぁ勉強方法は人それぞれだ。よし、これに決めたぞ」

「ちょっと待って。それはオススメしないよ。それにするならこっちの方が値段もだけど、何より内容がかなり充実してるよ。白崎が選んだ方は難しい言い方ばかりしていて、内容は教科書と変わらないよ。むしろ教科書より複雑。まぁ上級者なら理解出来なくはないだろうけど……」

「はぁ?お前これ読んだ事ないだろ」

「白崎が読んでるの後ろで見た」


 そう言って笑顔でオススメする参考書を渡して来た。正直この分厚い参考書にするか、黒田が勧める参考書にするか迷っていたんだ。

 く、黒田の奴、まさか俺がペラペラと適当に捲っていたのを横で見ただけで大筋の内容まで理解していただと?
 俺が見比べても判断するのに数十分は掛かったと言うのに……


「ふんっどうせ適当なんだろう?俺はこっちにする」

「あ、そう?白崎は上級者だもんなー」


 意地で分厚い方を選んでしまった。
 これ以上余計な事は言われまいとさっさとレジを済ませて店を出る。勿論黒田も付いてきた。


「なぁ白崎、腹減ったからマック寄ってこーぜ」

「断る。そんなもの食べたら夕飯が入らなくなるだろう」

「えー、食べなくてもいいからさ、俺が食べるの見ててよ」

「何故俺が黒田の食事シーンを見ていなくてはならないのだ?俺は帰って勉強するんだよ。ここで解散だ」

「じゃあ白崎んち行く」

「何故そうなる?」

「もっと白崎と居たいから。ねぇ、勉強の邪魔しないからお願い」

「来るな!そもそも俺はお前を家に呼ぶような仲じゃないと思っている!勘違いするな!」

「うん。知ってる。だからさ、これから仲良くなればいいじゃん?俺って良い奴よ」

「自分で良い奴と言う奴を信じられんっ」

「じゃあどこが嫌なの?教えてよ直すから」

「全部だ全部!特に中途半端な所がだ!」

「中途半端ぁ?俺が?」

「ああ!授業は真面目に出席しないわ、かと言って辞める訳でも無くダラダラと在籍している!俺はずっとそんなお前が気に入らなかったんだ!」

「そっか。でも知ってたよ。白崎いつも怒ってるし、初めはうるさい人だなと思ってた」

「そりゃうるさくもなるだろう!お前が人の話を聞かないからな!」

「でもさ、段々こう思えて来たんだよね。こんなに構ってくるのは俺に気があるからじゃないのかってね」

「脳味噌がお花畑だな」

「今日だってわざわざ探してくれたんでしょ?ねぇ、白崎本当の事言ってよ」


 黒田は真っ直ぐに俺を見て腕を掴んできた。
 どうやらここでも俺の意見は黒田には響かなかったらしい。まるでトンチンカンな答えが返ってくるばかりだ。

 でも黒田の言う通り、俺は黒田にこだわり過ぎていたのかもしれないな。

 隣の席だから嫌でも目に付く存在。それならば離れてしまえばいい。

 俺は黒田の手を払って心に決めた。


「ならばこうしよう」

「え♡やっと決心してくれた?」

「明日、担任の先生に席替えを申し出よう。席が離れてしまえばもうお前を気にする事もなくなるからな」

「ん?席替え?」

「これでお互いスッキリするな」

「ちょっと待って!俺別に白崎と席離れたい訳じゃないよ?」

「今更何を言う。担任には俺から伝えるとしよう」

「えー、何でそうなるの!白崎、謝るからやめてよ」

「黙れ。とにかく俺は帰る。もう付いてくるなよ」

 黒田は何か言いたそうだったがこれ以上はついて来なかった。
 何でもっと早く思いつかなかったのだろう。
 こんなにも素敵な方法があったなんて。
 ふふふ、明日が楽しみだ。

 俺はこの席替え計画を完璧な物にする為に、残りの帰り道に色々プランを立てて、帰ったら準備をする事にした。

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