黄金の鍵と曖昧な君

pino

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1章

1.聖なる森で出会う

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「うーん、ここにもないな~?」


 聖なる森の中でキラキラ輝きながら生い茂る茂みの中を掻き分けながら進む。そこには他の花達も咲き誇り、ヒラヒラと蝶が舞う空間だった。少し離れた所には泉でもあるのか、水の音も聞こえる。
 

「こういう綺麗な場所にありそうなんだけどな~。おっと、ここまでか」


 茂みを抜けて少し開けた場所に到着した。
 そこには先ほどから聞こえていた水の音の正体、小川が流れていた。
 そこでひと休みする事にした。

 ずっと縮めていた背中に生える白い翼をバサっと広げて数回羽ばたいてみる。
 ずっと窮屈な場所を行き来していたからこうして堂々と伸ばせると気持ちいいな♪
 気分も良い所でおやつタイムにしよう。腹が減っては何かが出来ぬって誰かが言ってたしな。

 俺はその場に座り込み、肩に下げていたポシェットからクッキーを取り出して一人で食べる事にした。

 それにしてもここはいつ来ても綺麗だなぁ。
 聖なる森は学校の校外学習とかでも良く来るけど、学校に通う前から遊び場として良く来たものだ。
 キラキラ輝いている草木や花達に、サラサラと優しく流れる小川。天を見上げれば澄み渡る青空。何もしていなくてもここにいれば幸せな気持ちになれる。そんな場所だ。


「さてと、次はどっちへ行ってみるかな?」


 クッキーを二枚食べた所で次の進むべき方向を考える。
 今俺がこの場所で何をしているのか気になるだろう?
 実は学校で出された課題で、「黄金の鍵」を探しているところなんだ。鍵って言うんだから大体の姿形は想像付くけど、鍵ってだけで他のヒントは一切無し。
 鍵にもいろんな種類があるから気を付けないといけない。普通に金属などで出来た手の平サイズの物や、カード状の物。面白い物では食べ物やぬいぐるみなんかを鍵にする事もあるんだ。
 まぁ黄金ってんだから金ピカに光ってるだろうし、とりあえず金色の物を見つけたらそれを提出しようと思っている。


「そろそろ行きますか~」


 立ち上がってお尻に付いた草を払っていると、近くの茂みがガサガサと動く音がした。
 この森の生き物達かな?ここへ来るまでに野ウサギの兄弟には会ったけど、今度はどんな生き物達に会えるかな?
 俺はワクワクしながら何が飛び出して来るのかその場で待つ事にした。

 こんな風に他の事ばかりに気を取られちゃうから鍵探しが捗らないんだよね。でもさ、いろんな生き物に会えるのって楽しいじゃん?一緒に遊んでるとハッピーになれるし。だから鍵が見つからなかったとしてもそれはそれでいっかなぁとか考えちゃうんだ。
 あ、先生に怒られるから捜索はするよ!
 つまり息抜きも必要って事♪

 自分の考えを前向きに考えていると、茂みを掻き分けて来る音が近くなり、とうとう姿を現した。
 って、アレ?


「だ、誰ぇ?」

「……!」


 現れたのは動物達じゃなくて、俺と同じ人型をした生物だった。
 いや、別に珍しくもないよ。俺と同じように課題でこの森に誰かいてもおかしくはないし、この森に用がある他の天使達かもしれない。
 だけど、今目の前に現れた天使は見た事が無かったんだ。

 見た目は俺と同じ歳ぐらいの黒い髪の男の子。
 長い前髪は片目を隠す程で、かろうじて見えてる左目は赤い色をしていた。白いTシャツにボロボロのジーンズ姿で、翼はしまっているのか見えなかった。


「あ、あの……」

「ちょっと待って!動かないで!」

「!」


 俺が手で動くなのポーズを取ってビシッと言うと、彼は動きを止めてジッと俺を見て来た。
 そんな彼にそっと近付いてゆっくり手を伸ばす。
 彼の頭に触れた瞬間、ビクッと驚いたような顔をした。


「あはは、そんなに驚かないでよ~♪頭に葉っぱが付いてたよ~」

「……え、あ……葉っぱ?」


 俺が笑いながら手に取った小さな葉っぱを見せると、彼は戸惑うように瞬きを何回もして見せた。
 驚かせるつもりは無かったんだけどな。
 せっかく会えたんだし、仲良くなれたら良いな。


「俺はエリム♪君初めて見るね♪一緒に遊ぼうよ♪」

「僕は……アス……」

「アス!ねぇ何して遊ぶ?鬼ごっこ?かくれんぼ?小川を辿れば泉があるからそこで水遊びでもいいね♪」

「……エリム、僕が怖くないの?」


 俺がはしゃいでると、アスはボーッとしたまま変な事を聞いて来た。
 

「どうしてアスが怖いの?怖いどころか会えて嬉しいよ♪」

「嬉しいの?……本当?」


 アスの目がキラキラして見えた。確かに赤い目は珍しいってか今までに会った事が無いかな?少し大人しそうな雰囲気だけど、一緒に遊んでくれるなら嬉しいに決まってる。

 そうだ、クッキーを分けてあげよう。
 そうすればアスも元気に遊べるようになるよ。

 俺がポシェットから残りのクッキーを出して差し出すと、アスは驚くように目を丸くした。


「俺のおやつあげる♪美味しいよ♪」

「君、食事をするの?」

「するよ?あー、でもいるよね。食べるのを嫌う天使~。俺は食べるの好きだよ♪アスは食べないの?」

「食べる。でもクッキーは食べた事ない」

「それなら是非食べて!とても美味しいよ♪」

「……うん。ありがとう」


 俺がオススメをすると、アスはニコッと笑ってクッキーを受け取った。
 
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