黄金の鍵と曖昧な君

pino

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1章

2.黒い翼

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 俺が暮らすここは天界と呼ばれていて、天使見習いの俺は毎日立派な天使になる為に勉強を頑張っていた。だけど、遊ぶ事が大好きでいつも寄り道をしては先生や先輩方に呆れられたり怒られたりしている。
 それでも俺は楽しい事が好きだから周りの目も気にせずやっている。今日も黄金の鍵は見つけられなそうだけど、アスと仲良くなれたしあまり気にしていなかった。


「あー、楽しかった♪そろそろ帰ろうかな~」
 
「エリム、また遊ぼう」

「うん♪遊ぼうね~♪」


 聖なる森の中で二人で遊んでいたら、大分アスも話してくれるようになった。
 アスはボーッとしてる事が多かったけど、それでも俺が話し掛ければ笑ってくれるし、一緒に過ごす時間が増えるにつれてアスともっといたいと思えるようになったんだ。

 ただ、一緒にいて疑問に思った事もある。
 それはアスはずっと翼をしまったままなんだ。だから空を飛ぶ遊びは出来なかったんだ。


「ねぇアス~、何でずっと翼をしまっているの?窮屈じゃないの?」

「えっと、少しキツいかな……」

「それなら広げちゃえばいいのに。ほらこんな風にさ♪」


 俺が自分の白い翼をバサっと動かしてアピールすると、アスは下を向いて黙り込んだ。
 あ、怪我をしているとかかな?だからしまったままなのかも。それなら悪い事を言ったな。


「ごめんね?無理して広げなくていいよ♪でもさ、アスと一緒に飛べたらいいなぁって思うよ」

「エリム……」

「いつか一緒に飛び回って遊ぼう♪その時までのお楽しみだと思って……」


 取っておく。そう言おうとした時、アスの背中からバサッと大きな翼が生えた。だけどそれは俺達天使が持つ物とは違う色をしていて、真っ黒。同じ形をした翼のように見えるけど、色は俺達の白い翼とは違い真っ黒だったんだ。
 初めて見る色の翼に俺は一瞬口を開けたまま魅入ってしまった。

 気付くとアスが慌てたような顔をしてすぐに翼をしまい、俺に一歩近付いてこう言って来た。


「エリム、驚かせてごめん……見ての通り僕の翼はエリムのように白くないんだ。だから隠していた……嫌われると思って……」


 そう言うアスは少し寂しそうな顔をしていた。アスは感情をあまり顔には表さない。今日遊んでいた間にもほとんどが無表情で、たまに微笑むぐらいだった。だけど今は赤い瞳を潤ませて、少し震えているようにも見えた。

 俺はアスの隠していた黒い翼を見て驚いてしまったのは本当だ。けれど、嫌いになんてならないよ。どうして色が違うだけで嫌いになるのかな?
 ああ、他の天使達は何か言うかもな。
 正直言って翼は俺達の体の一部であって髪の毛や手足のように個体差がある物だ。だから、翼も大小、羽毛の量、そしてそれらは飛び方にも影響して来る。
 他と比べて衰えて見えるとそれだけで下に見たり、馬鹿にして来るものなんだ。

 俺はそんな考えはおかしいと思っていた。
 いや、みんなと違う俺がおかしいのかも。
 だからいつもからかわれたり怒られたりするのかも。
 きっとアスは俺と同じ気持ちなんだろうな。

 よし!アスの翼を馬鹿にする奴がいるなら俺が守ってあげよう!


「嫌いになんかならないよ!色が違ったってアスはアスだろ?今日一緒に遊んでとても楽しかった。だから俺はアスが好き♪それでいいじゃない♪」

「エリム……正気か?」

「俺って嘘は嫌いなんだよ~。てか嘘なんか付いたら大天使様に追放されちゃうよ。もしその翼で嫌な思いをしてるのなら俺に話して?俺はアスの味方だから♪」

「……ありがとう。君は優しいな」

「ふふ♪これでも大天使を目指してるからね!まだ天使見習いで、まずは立派な天使にならなきゃだけど~。人々を正の道に導くのが俺ら天使の役目でしょ?」


 アスは何も答えなかった。だけど、もう寂しそうな顔じゃなかったから励ませたと思うんだ。
 て言うか今の俺、とても良い事を言ったんじゃないか?まるで大天使アンビシャス様みたいじゃないか?

 大天使アンビシャス様。それはそれはとても高貴なお方で、数えるぐらいしかいない大天使の一人だ。主に俺達が暮らすこの天界を外部から守る役目を担っていて、とてもお強いのだ。俺達天使見習いにとっては誰もが憧れる存在だ。
 俺達天使見習いが会えるような存在じゃないけど、こうして憧れるぐらい有名な天使様だ。


 俺とアスはその場で別れた。
 また「明日もここで」とお互い笑顔で約束をした。

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