黄金の鍵と曖昧な君

pino

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1章

3.鳥達の歌声の下で

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 アスと出会ってから数日が経ったけど、毎日遊んで過ごした。毎日と言っても明確な日付なんかは無い。ここ天界には時間などは存在しないからだ。人間達のように睡眠わ食事をとらなくても問題は無い。俺のようにお菓子を食べたりするのを趣味としてやる天使はいるけどね。
 おまけにいつも明るい。人間界で言う夜がない。学校で習ったけど、夜って真っ暗なんでしょ?俺には想像もつかないけど、そんな世界も見てみたいなぁと思った記憶がある。

 そうそう、時間はないけど学校はあるよ!定期的に学校へ学びに行くんだけど、学科が分かれていて授業があると担当の先生の使いの鳥が知らせに来るんだ。俺は大天使の中でも特に厳しいと言われている「守護隊ガーディアン」になる為の学科で学んでいる。守護隊ってのはその名の通り、この天界を守る強い天使の事。人間達を護り導く役目とは違って実戦なんかの授業もある面白い学科だ。
 ただし、天界では争い事や暴力は禁止されているから、実戦が出来るのは授業で認められた天使見習いのみ。つまり天使になれて初めて戦い方を教わる事が出来る。
 俺の憧れであるアンビシャス様もこの学科から今の大天使の地位にまでなったんだ。

 暴力には興味はないけど、中でもより多くの事が出来そうだから俺は今の学科を選択したんだ。


「エリム、鍵は見つかった?」


 聖なる森の中でオレンジ色の木の実がなる木の下でアスと隣同士座りながら小鳥の歌声を聞いていた。
 俺にとってアスに会う事が日課になっている。
 アスも必ず約束をした場所にいてくれて、俺が姿を現すと日に日に笑顔で出迎えてくれるようになった。
 今ではこうしてアスから話題を振られる事も多い。


「まだだよ~。他の子達もまだみたい~。先生はとても厄介な所に隠したらしいね」


 黄金の鍵探しの事はアスに話してある。アスも見付けてくれているらしいけど、今だに見つからない。そろそろ聖なる森は諦めた方がいいとか思い始めている所だ。

 俺がそう言うと、アスが隣で自分の両膝を抱えて座りながらクスクス笑った。


「何がおかしいの~?面白い物でもあった~?」


 俺が「教えて教えて~」と体を寄せて何に笑っているのかを聞くと、アスはこっちを向いて笑顔を見せた。

 その時に歌を唄っていた鳥達がバサバサと飛び立ち、俺達に一瞬そよ風が吹いてアスの長い前髪が揺れるのが見えた。その時にいつも隠れている右目がチラッと見えた。
 その瞳の色は金色で、とても綺麗な色に見えた。金色の瞳なら他の天使達にもいるけど、これほど、澄んでいて心惹かれるのは初めてだった。

 見えた右目を見ている事に気付いたアスは慌てて前髪で隠す。だけど俺はそんなアスの手を掴んでそれを止めた。


「エリムッ見ないでくれっ」

「どうして?とても綺麗なのに……もっと見せてよ」

「綺麗じゃないっ僕は……僕は……」


 狼狽える姿を見ると、右目はわざと隠していたらしいな。あまり嫌がる事はしたくないから手を離すと、ふいっと顔を背けた。
 両目の色が違うのを気にしているのかな?珍しいってか見た事が無いけど、他の誰にも無い物なんだから誇ればいいのに。俺だったら自慢しちゃうのにな。

 言わば俺とアスは正反対の性格だ。
 俺は何でもやりたがると自分でも思うし、特に楽しい事に関しては積極的。課題そっちのけで遊びに夢中になるぐらいだ。
 でもアスは常に落ち着いていると言うか、ボーッとしてる。俺と遊ぶ時もいつも俺が提案した遊びに付き合ってくれるし、アスからはあれがしたいこれがしたいとか言う事は無かった。

 ただ黙って俺に付いてくる。そんな感じの関係。
 なんとなく思っている事だけど、アスは自分の見た目にコンプレックスがあるみたいだ。天使達では見た事がない黒髪に、翼の色は真っ黒。おまけに両目の色が違うなんて、アスの性格だと気にせずにはいられないのかもしれない。

 俺から見ても分かるぐらいにアスは浮いている。だからいつも周りを避けているのか。
 こうして考えると、胸が苦しくなるな。

 アスも堂々としていられるようになれればいいのに。そうすれば一緒に翼を広げて空を飛べるのに。


「アス、君はその目を気にしてるの?」


 俺はアスにとって酷な事を聞いていた。
 そんなのアスの様子を見れば一目瞭然だからだ。
 だけど、俺はアスとちゃんと向き合いたいから聞いたんだ。これでアスが俺を嫌いになるなら……悲しいかな。


「エリムには分からない……僕はみんなとは違う……」

「違くないよ。俺は君の翼や瞳を含めてアスの事が好きだ。その黒い髪も翼の色と同じでとても綺麗に見えるよ。みんなと違ってもいいんだってば。アスがアスでいてくれるなら俺はそれでいい♪」

「エリム……」


 アスにはどう聞こえるかは分からないけど、俺は思っていた事を素直に伝えた。それはいつも俺がしている事だ。誰にでも正直に伝えている。時には傷付けてしまう事もあるけれど、ちゃんと向き合えば分かってくれるから。
 だからアスにも伝わればいいな。
 
 いつものようにアスにニッコリ笑って言うと、アスはゆっくり俺を見て瞳を潤ませた。頬は赤く染まり、照れているのか口をモゾモゾさせて何かを言いたそうにしていた。

 そんなアスが可愛いくて俺は心が踊った。
 アスに触れたい。そう思ったら俺は顔を近付けてチュッとキスをしていた。


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