黄金の鍵と曖昧な君

pino

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1章

6.匂いの原因は俺

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「初めましてエリム。私は大天使であり守護隊ガーディアンの長、アンビシャスだ」

「初めまして!エリムです。お目にかかれて光栄です!俺、アンビシャス様に憧れてガーディアン科を選びました!」

「担当から聞いた通り元気な子だね。うん、君なら立派な大天使になれそうだ」

「本当ですか!?」


 アンビシャス様にそんな事を言われて嬉しくて興奮気味に聞き返してしまった。
 それを見ていたフリージアが笑った。


「本当だとも。君も嘘はついたらダメと教わっただろ?ん?」

「はい!教わりました!」

「よし、それじゃあいくつか質問をしよう。正直に答えてくれるかな?」

「勿論です♪」


 アンビシャス様は俺の前に立ってニッコリ笑顔で言った。ここでアンビシャス様に気に入られればあのふわふわな翼を触らせてもらえるかもしれない!ここは何が何でも嘘はつかないようにしよう!


「エリム、黄金の鍵探しは順調かい?」

「いいえ。隠してありそうな聖なる森を探しているのですがまだ手掛かりすらも掴めてません……」

「……うむ、本当のようだね」

「?」

「次の質問だ。最近悪魔、もしくは魔界に住む者に会ったりした事は?」

「悪魔!?」


 俺は「悪魔」と聞いて思わず素で驚いてしまった。悪魔とは俺達が暮らす天界とは違う世界に住む者達の事で、そこは魔界と言うらしい。
 授業で習って得た知識だけど、悪魔は言わば俺達天使とは真逆の事をする者達の事だ。人間界に住む人々を陥れて不幸にしたり、時には命を奪ったりと、それらから人間を救うのも天使の役目になる。
 天使見習いである俺は存在する事は知っていたけど、実際に会った事は無い。どう言う姿形なのかも、教科書に載っている絵でしか知らないんだ。


「そう、魔界に住む悪魔だ。答えなさい」

「いいえ。そもそも天界と魔界は自由に行き来出来ない筈ですよね?まさか悪魔が侵入して来たのですか?」

「……嘘はついてないな。フリージア」


 俺の質問には答えてくれる事はなく、アンビシャス様はフリージア様と目を合わせて何かやり取りをしていた。


「私も嘘はついていないと判断します」

「だよね。はぁ、明らかに接触したと思われる反応が出てるんだけどね~」


 そっか!大天使レベルになると相手の心が読めるのか。だから俺が嘘をついてるとかついてないとか分かるんだな。
 困ったような声を出してアンビシャス様は体を屈めて俺の顔を覗き込んで来た。
 そのまま綺麗な顔をスーッと近付けて来て、俺はどうしたらいいのか分からずその場に凍り付くように立っていた。


「ほら、近くで嗅いだらこんなにも濃い……」

「もしかしたら気付かずに接触しているのではないでしょうか?」

「その可能性は大いにあるね。悪魔も上の階級になると姿形を偽る事が出来るからね」


 俺を挟んで二人は訳の分からない話を進めて行く。
 どうしよう?俺、もしかして役に立てなかった?
 でも匂いの事はさっきユディも言ってたな。ユディが言う匂いって俺からしてたのか?

 ええい!もう聞いちゃえ!


「あの!さっき友達も嗅いだ事のない匂いがするって言っていたんです。それはとても禍々しい匂いだとか……でも俺からしてるとは分からなかったみたいです。俺自身も分かりませんでした。それと関係はありますか?」

「この匂いが分かる天使見習いがいるのか?」

「同じ科の名前はユディです。彼は優等生なんです」

「なるほどな。禍々しい匂いか。確かにそうかもな。でも私にはどこか懐かしい匂いに感じるのだよ」


 アンビシャス様は俺の話を聞いて寂しそうな笑顔を見せた。そして俺から離れてから明るい笑顔に切り替えて見て来た。


「この事は公にはしないつもりだったんだけど、数日前からこの天界に悪魔が忍び込んだらしいんだ」

 
 ここでやっとさっきスルーされた質問の答えが返って来た。
 天界と魔界へはそれなりの地位が無いと行き来出来ないんだ。それだけでなく、大昔にあった戦争を機にお互いの世界へ自由に行き来出来ないように取り決めを行ったらしい。それからは無駄な争いもなくなり、ここ天界は常に平和が保たれているんだ。
 てか悪魔が忍び込んだなんて世に知れ渡ったら大騒ぎになるだろう。

 てか悪魔に会ってみたいんだけど!


「らしいと言うのは確証が無いんだ。ただ今の段階では気配と匂いだけで、どうやって忍び込んだのかも分からない状況なんだ」

「アンビシャス様、お尋ねしたい事があります」

「何かな?」

「先程俺から匂いがするような事を言いましたけど、その俺からする匂いとは悪魔の匂いなのですか?」

「そうだ。だけど君が化けているとも思えないし、エリムとして実在する事は調べが付いているんだ。だとしたら接触している内に匂いが付いたと考えられるのだが、心当たりはないかい?」

「ううーん、ちょっと待って下さい?思い出してみますね?」

「よろしく頼むよ♪」


 アンビシャス様のお力になりたいと俺は必死でここ最近の出来事を思い出していた。
 って言っても黄金の鍵探しでひたすら聖なる森にいたぐらいなんだよな~。そこでただ遊んでただけだし。悪魔らしい奴も見掛けてないぞ?
 あ、姿形が獣の場合もあるか。だとしてもきっと恐ろしい容姿をしているだろうからすぐに分かりそうだもんなぁ。うーん……


「聖なる森で黄金の鍵探し……は名ばかりでほとんど遊んでばかり……」

「はは、声に出てるよ」

「あ、すみません。サボってるのバレちゃいましたね」

「いや、結構。エリムは遊ぶのが好きなんだね」

「はい♪大好きです。遊ぶ事だけに限らず初めてやる事とかはやりたがります♪」

「それじゃあ聖なる森で遊んでいていつもと変わった事はなかった?」

「変わった事か~、あ、そう言えば新しい友達が出来ました♪その子とは気が合うんでここ最近毎日のように……あー!」


 話していて気付いたけど、アスがいたじゃないか!アスの事を忘れていた訳じゃないよ?アスが悪魔だとは思えないから除外していたんだ。
 でも最近出会って匂いが付く程一緒に過ごしているのは当てはまるよな。キスして抱き合ったりもしちゃったし。
 それに、あの黒い髪と色の違う両目、黒い翼だ。
 全然気にならなかったけど、こうしてアンビシャス様のお話を聞いたらアスが俺にとっての最近の変化だ。

 
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