黄金の鍵と曖昧な君

pino

文字の大きさ
16 / 48
2章

15.突然の悲報

しおりを挟む

 竜の谷に入ってから彷徨う事しばらく。デコボコした岩場を一生懸命に登ったり下ったり。時々休みながら少しずつ進んでいた。
 それでも一向に姿を現さないドラゴンさん。恥ずかしがり屋なのかな?
 いや、そんな簡単に会える訳がないよね。


「やっぱり会えないのかな~」

「エリム疲れただろう?そろそろ帰ろうか。また来てみよう」

「そうだね。次来る時はもっとおやつを多めに……ん?」


 ユディの提案で今日は探索を辞めて帰る事にした時、辺りに急に風が舞い、目の前が光ったと思ったらなんと、フリージア様が現れた。
 凄い!テレポートってやつ!?生で初めて見たよ!
 じゃなかった!フリージア様ならアスの事何か知ってるかも!


「フリージア様!」

「お久しぶりですエリム」


 綺麗な白い髪を揺らしながら、キラキラと輝く立派な翼を一度羽ばたかせて俺の近くまで歩いて寄って来た。
 フリージア様と初めて会うユディは突然の出来事に驚いているようだった。


「ユディ、こちらは上位天使のフリージア様だよ。アンビシャス様の補佐なんだって~」

「アンビシャス様の?あ、初めまして。天使見習いのユディと申します」


 俺が説明すると、ユディは慌ててその場にしゃがみ込み片膝をついて挨拶をしていた。おお、さすが優等生だ。目上の人への作法を熟知しているな。


「初めましてフリージアです。貴方がユディですね。とても優秀な方だとエリムから伺っております」

「滅相もございません。まだ未熟者の身でございます」

「ユディ、そんな硬くならなくて大丈夫だよ。フリージア様はとても優しいお方だから」

「そうは言っても……」

「エリムの言う通りです。楽にして下さい」


 ユディに手の平を向けてニッコリと微笑んだ。
 女神様のようなお方だなぁ。

 ユディがやっと立ち上がり顔を上げたのを確認すると、フリージア様は俺を見て話し始めた。


「この度私がここへ来た理由はある事をお伝えしなければならないからです。エリム、心して聞いて下さい」

「はい」

「アンビシャス様は近々この天界を追放されます。罪状は天界への裏切り行為。この事は追って天界中に知らされるでしょう」

「アンビシャス様が!?」

「追放!?」


 信じられない話に俺もユディも驚きを隠せなかった。だけど、上位天使であるフリージア様が嘘なんかつくはずがない。きっと事実なんだろう。
 まさか、アスの件で!?


「アスは!?アスはどうなったんですか!?」

「アスは上にどこかへ囚われてます。アンビシャス様と共に。アンビシャス様の罪、そして処罰はたった今宣告されました。私はアンビシャス様の意思を継ぎここへ参りました」

「嘘だ……そんな……二人が……」

「エリム!」


 次々と出てくる嘘であって欲しい情報に俺は押し潰されそうになった。ユディが俺に駆け寄り肩を押さえてくれたけど、俺は事実を受け止められずに困惑していた。
 それに対してフリージア様が今までにないぐらい大きな声で俺を叱った。


「しっかりなさいエリム!アンビシャス様はアスの為にと私を貴方の元へ送ったのです。貴方が狼狽えていてはアスは助かりませんよ」

「でもっ二人は……」

「自分を信じるのです。貴方には未だ見ぬ力が眠っています。アンビシャス様はそれを見抜いて貴方に託したのです。私も本当ならアンビシャス様のお側にいたい。ですが、それはアンビシャス様の意思に背く事になる。だからこうしてアンビシャス様の意思を受け継ぎここへ参ったのです」

「フリージア様……」

「それにこんなにも心強い友がいるではありませんか。ユディ、貴方は天使見習いの身でありながら既に天使としての力を備えています。どうか、エリムを支え、アスを助ける為に力を貸してもらえませんか?」


 フリージア様は目を伏せてユディにそう言った。
 そんなフリージア様に対してユディは俺を抱き抱えるようにして堂々と言った。


「勿論です。俺は先ほどエリムに誓いを立てました。返事はまだ貰えてませんが、気持ちは変わりません。俺はこの先何があってもエリムの信じる道について行きます」

「素晴らしい忠誠心です。それならば場所を移しましょう。私も今では追われる身、ここへ追っ手が来るのも時間の問題です。結界を張るのでここから離れますよ」

 
 フリージア様は両手を広げて何かをするポーズを取った。
 そうか、フリージア様も天界に逆らっているのか。それに、アスを助けるって言ってたな。
 アス、良かったね。君を想う仲間はたくさんいるよ。

 
「結界を張ったままではテレポートは出来ませんので飛行での移動になります。急ぎますが大丈夫ですか?」

「ごめんなさい。今日はたくさん飛んだし、ゴツゴツした岩場を歩いたので体力があまり残ってません」


 俺が素直に申し出ると、ユディがヒョイッと俺を抱き上げた。
 えっ!?いきなりどうしたんだ!?


「問題ありません。エリムは俺が運びます」

「嘘ぉ?ユディやばぁ!」

「ふふ、頼もしい戦士ナイトですね。では行きますよ」

「エリム、しっかり掴まっててね」

「うん!」


 俺がユディの首元に腕を回してギュッと抱き付くと、フリージア様はキラキラと輝く翼を大きく広げて飛び立った。それを追うようにユディも俺を抱き抱えながら飛び立つ。

 いきなり知らされた悲報に、目の前が真っ暗になったけど、二人のお陰でまだ諦めちゃダメだって思い直す事が出来た。
 まだ天使見習いの二人と、たった一人の上位天使だけで天界に背くような事をするのは無謀な事だった。

 それでもアスを助けたいから。
 もう一度アスに会いたいから。

 だから俺は前を向いて立ち向かうんだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

うちの魔王様が過保護すぎる

秋山龍央
BL
主人公・折本修司(オリモトシュウジ)は転生恩恵女神様ガチャにはずれて異世界に転生して早々、つんでいた。 「異世界で言葉が分かるようにしてくれ」と頼んだところ、相手の言葉は分かるが自分は異世界の言葉は喋れない状態となり、 「平和な国に転生したい」と頼んだところ、平和で治安のいい国に転生をすることはできたものの、そこは人間のいない魔族だけの国だったのである。 困っていた主人公の元に、異世界の"魔王"である紅の髪と角を持つ男があらわれて―― 「まさか――そっくりだとは思ってたけれど、お前、本当にシュウなのか?」 異世界転生魔王様×異世界転生主人公 幼馴染年下攻めだけど年上攻めです

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

溺愛極道と逃げたがりのウサギ

イワキヒロチカ
BL
完全会員制クラブでキャストとして働く湊には、忘れられない人がいた。 想い合いながら、…想っているからこそ逃げ出すしかなかった初恋の相手が。 悲しい別れから五年経ち、少しずつ悲しみも癒えてきていたある日、オーナーが客人としてクラブに連れてきた男はまさかの初恋の相手、松平竜次郎その人で……。 ※本編完結済。アフター&サイドストーリー更新中。 二人のその後の話は【極道とウサギの甘いその後+ナンバリング】、サイドストーリー的なものは【タイトル(メインになるキャラ)】で表記しています。

処理中です...