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4章
28.結果よりも過程
しおりを挟む二人が手合わせを始めてから俺はフリージア様と地面に座っていた。フリージア様は時々上を見ては微笑んでいたけど、俺にはまるで何が起こっているのか分からなかった。
と言うか、ユディを応援するとは言ったけど、果たして本当に大丈夫だろうか。
ユディは間違いなく天使見習いの中では強いけど、暴力は禁止されていたからこういった本格的な手合わせは初めてな筈だ。
フリージア様の特訓で少しならやったけど、誰かに攻撃をするのはやっぱり気が引けて俺もユディも思うように出来なかったんだ。
「フリージア様、ユディは大丈夫でしょうか?」
「あら、ユディが負けると思ってるのですか?」
「そうじゃありませんけど、いえ、正直リアルには勝てないと思います。やっぱり怪我をする前に止めるべきですよね?」
「今はそれでいいんですよ。私の予想でもユディは圧倒的に負かされるでしょう。ですが、それを恐れていてはいざと言う時に戦えません。何事も経験が必要なのです」
「そんな……それは怪我をしてまでもですか?」
「大怪我をする前には止めますよ。エリム、これからはその優しさを隠して行きなさい。でないとアスを助け出す事は出来ません。天界を敵に回すと言う事はそう言う事なのです」
「…………」
「リアルが言っていた天界ボケとは、あながち間違えてはいないでしょう。エリムだけではなく、天使達は皆争いを好みません。暴力なんてもっての外です。ですが、時には必要な時も訪れるのです。その覚悟が出来た者のみがアンビシャス様程の地位に立てるのです」
「そっか」
今でも暴力なんて考えるだけでも恐ろしいよ。だけど、アスの為だと思ったら何も言えなかった。
現にユディはリアルからの誘いを断らなかったけど、その覚悟が出来てるって事なのかな。
その覚悟が出来てない俺が心配するのは少し申し訳ないような気がして来たよ。
「ユディの場合は少し違う意味での覚悟だとは思いますが、悪魔相手に立ち向かうのは立派です。この手合わせで何か得られる事を祈ります」
「フリージア様、俺にもその覚悟が出来た時には、ユディにしたように力を分けて下さい!その間にもっと強くなりますから!お願いします!」
「いいでしょう。エリムも可愛い弟子ですからね。でも今は先程の落下でのダメージを回復しましょうね」
「えへへ、やっぱりフリージア様は分かってたんですね」
フリージア様はニコッと笑って持っていた回復薬を飲ませてくれた。
実は結構全身が痛かったんだ。時間が経ってから疲労感がどっと出て今では立ち上がるのも無理そう。リアルがクッションになってくれなかったらもっと酷い事になっていたよ。
俺が今回学んだ事はもっと冷静に判断するように出来る事と、それに適応出来る能力を身に付ける事だ。
きっとフリージア様なら他の方法で助けられたし、ユディならもっと早く追い付いて難なく助けていたと思うんだ。
回復薬を飲んでから反省していると、フリージア様は立ち上がって上を見た。
「二人共そこまで!今から私の言葉を無視して動いた方は負けとみなします!」
フリージア様が空に向かってそう言うと、二つの影が現れた。一つはユディ、もう一つはリアルだった。
二人の動きが止まってやっと目視出来るようになった。
そしてゆっくり降りて来る二人。
先に地に足をついたのはユディ。俺はユディの姿を見て痛む体を押さえながら駆け寄った。
顔や体が傷だらけだったからだ。
酷い!これのどこが大怪我じゃないって言うんだ!
後から地面に立ったリアルは手合わせをする前と何も変わらずに余裕そうな表情でそこにいた。
「ユディ!酷いよっこんなに……」
「ハァハァ……フリージア様、お力を分けてくださいましたのに申し訳ありません」
「気にする事はありません。上手く扱えたようですね。このまま精進なさい」
「はい!ありがたきお言葉感謝致します!」
フリージア様が言葉を掛けると、ユディは傷だらけなのにも関わらず、元気よくお礼を言った。
そして俺を見てニッコリ笑う。
「やっぱりリアルは強いよ。今の俺じゃ敵わない」
「ユディ……」
ぶっちゃけ二人が手合わせしていた姿は全く見えなかったから、何がどうなってこうなったのか経緯は分からない。
だけど、ユディが一方的に攻撃されたんだって言うのは分かったよ。
俺は胸が苦しくなったけど、ユディの笑顔を見て苦しさの他にも何かがある気がした。
「でもね、絶対に今より強くなって勝つよ。俺はエリムの為にもっと強くなるから」
「あは、そうだね!ユディならきっと勝てる時が来るよっ♪本当にお疲れ様っ」
「エリム……♡」
とても前向きなユディに心打たれて涙が溢れて来た。俺はそれをユディに抱き付いて隠した。
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