43 / 72
3章 引退を考える今日この頃
42.キツネのイタズラ
しおりを挟む俺とルナは夕方になると家を出て街へ繰り出した。家に何もないから夕飯を買いに行こうとしたら、ルナに飲みに行こうと誘われたからだ。
いつもなら断るけど、今の気分は一人になりたくなかったから乗った。
「伊吹と外で飲めるなんて嬉しいな~♪マジいつ振りって感じ?」
「最後の晩餐だ、ありがたく思えよ」
「それ前の時も言ってた~」
特に入る店も決めずに歩いてるけど、家で飲んだから飯メインが良いな~。ビール一杯飲めれば十分な気分だ。
「あ、肉食わない?肉~♡」
ルナが焼肉屋の前で俺の腕を引いて足を止めた。
焼肉か、たまには良いかもな♪
ルナを先頭に良い匂いのする店の中に入ると、元気な男の店員の声が聞こえて来た。
「いらっしゃいませ!二名様ですか!?」
「いらっしゃいました~♪二人だよん♪」
またルナがふざけた事を言ってるなと思って俺も前を向き、黒のバンダナを巻いて笑顔で接客してる店員を見て絶句した。
垂れ目に口角の上がった大きめの口。180を超える長身に、びっしり付いてる耳のピアスで店の制服を着ていてもチャラさが滲み出ていた。そして極め付けに黒のバンダナからはみ出した青い髪……
この店員、ブ、ブルータイガーだぁ!!
何でこいつがここにいんの!?
「只今店内混み合っておりまして~、カウンター席ならすぐにお通しできますか!?」
「俺はそれでもいいけど、いぶ……」
「待つ!!」
俺はルナに名前を呼ばれる前に短く言って、サッと後ろを向いてタイガーに気付かれる前に入口近くにあった椅子に座って下を向く。
いや、これ店変えた方が良くね?
でもそんな事したらルナに怪しまれてタイガーの事までしつこく聞かれそうだ!
いやー、まだタイガーは俺に気付いてないし、個室っぽい席に通してもらってやり過ごすしかないだろぉ!
その後ルナが順番待ちの名前を記入して、俺の隣に座って俺を覗き込んで来た。
ま、まさかバレたか?
俺がポーカーフェイスで内心焦っていると、次第にルナのキツネ顔がニヤ~っと緩んだ。
「伊吹ってば個室がいいだなんて♡どんなけ俺と二人きりになりたいんだよぉ♡」
セーフ!!
よし、このままやり過ごそう!
極力席を立たないようにして、店員とのやり取りはルナに任せよう。注文方法は店員を呼ぶスタイルか?タッチパネルか?頼む!次に空く席は個室であってくれ!
とうとう呼ばれる時が来て、タイガーじゃない店員が呼びに来た。
良かったぁ♪コソコソしないで席まで行けるじゃないかぁ♪
「えー、二名様でお待ちの……夏川……夏川伊吹様~、お席にご案内しまーす」
「!?!?」
ちょ!なっ!はぁ!?
何でフルネーム!?
ルナの野郎!勝手に俺の名前書きやがったな!!しかもフルネームで!!
せめて苗字だけだろぉ!!
安心したのも束の間、店中に響き渡る呼び声でタイガーに聞こえたんじゃないかと俺はビクビクしていた。
「えっとー、もう一度お呼びしまーす!夏川いぶ……」
「はいはい!俺です!今行きます!!」
俺がビクビクしている間にまた名前を呼ぼうとしてたから慌てて名乗り出てさっさと席へ案内してもらった。
俺の慌てようを見てゲラゲラ笑う千太郎。クソが!後で覚えておけよ!
20
あなたにおすすめの小説
ブラック企業の寮で、同期とだけは恋に落ちないと決めていた~同室生活・過労案件・限界メンタル―それでも、唯一の味方が、隣にいる。
中岡 始
BL
「限界社畜、恋に落ちたら終わりだと思ってた――でも、一緒に辞めて起業しました。」
ブラック企業で出会った新卒ふたり。
職場は地獄、寮は同室、心は限界寸前。
“ちゃんとした社会人”を目指す白井と、マイペースに生き延びる藤宮。
恋なんてしない、期待なんてしない――そう思ってたはずなのに、
「お前がいたから、ここまで来られた」
気づけば手を取り、会社を辞め、仲間たちと“理不尽の外側”へと走り出す。
すれ違い、涙、ほうじ茶プリンとキスの夜。
これは、仕事と恋に潰れかけたふたりが、
一緒に人生を立て直していく、再起系BLラブコメディ!
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
恭介&圭吾シリーズ
芹澤柚衣
BL
高校二年の土屋恭介は、お祓い屋を生業として生活をたてていた。相棒の物の怪犬神と、二歳年下で有能アルバイトの圭吾にフォローしてもらい、どうにか依頼をこなす毎日を送っている。こっそり圭吾に片想いしながら平穏な毎日を過ごしていた恭介だったが、彼には誰にも話せない秘密があった。
過去のやらかしと野営飯
琉斗六
BL
◎あらすじ
かつて「指導官ランスロット」は、冒険者見習いだった少年に言った。
「一級になったら、また一緒に冒険しような」
──その約束を、九年後に本当に果たしに来るやつがいるとは思わなかった。
美形・高スペック・最強格の一級冒険者ユーリイは、かつて教えを受けたランスに執着し、今や完全に「推しのために人生を捧げるモード」突入済み。
それなのに、肝心のランスは四十目前のとほほおっさん。
昔より体力も腰もガタガタで、今は新人指導や野営飯を作る生活に満足していたのに──。
「討伐依頼? サポート指名? 俺、三級なんだが??」
寝床、飯、パンツ、ついでに心まで脱がされる、
執着わんこ攻め × おっさん受けの野営BLファンタジー!
◎その他
この物語は、複数のサイトに投稿されています。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
義兄が溺愛してきます
ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。
その翌日からだ。
義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。
翔は恋に好意を寄せているのだった。
本人はその事を知るよしもない。
その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。
成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。
翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。
すれ違う思いは交わるのか─────。
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる