55 / 72
4章 まさかの目覚め!?
54.客心を知る
しおりを挟む尚輝くんと話し込んでいたらスマホで設定したアラームが鳴って、二人でビクッとしてしまった。
そしてお互い顔を見合わせて笑い合う。
尚輝くんとのデート終了を告げるアラームを切って、俺は仕事完了メッセージを送って再び尚輝くんを見る。
すると尚輝くんは立ち上がって帰る支度を始めていた。
え、帰っちゃうの?
「伊吹さん、今日はいろいろありがとうございました。とても思い出深い一日になりました♪勿論伊吹さんの住んでる所はバラしたりしませんので安心して下さいね」
「あ、うん。こちらこそありがとう……」
尚輝くんってば大分清々しい顔してるけど、本当に帰る気なのか?
確かに予約してた時間は終わったけど、まだ大事な話してなくね?
「それじゃあ体に気を付けて♪また来週会えるのを楽しみにしてます」
「あのさ、この後予定あったりすんの?」
「いえ、特には。家で勉強でもします」
「そ、そっか~!勉強好きだもんな~!尚輝くんも頑張れよ」
「伊吹さんに応援してもらえるとより頑張れそうです♪」
ええー、せっかく好きな人の家に来てるのに、勉強の為に帰るのかよー。
こう言う時ってどっかの青い誰かさんみたいにもっといたいとか言ったりするんじゃねぇの?
俺は何だかやりきれない気持ちになったから、せめて少しでも一緒にと思ってマンションの下まで付いて行く事にした。
「あ、下まで送るよ」
「大丈夫ですよ。伊吹さんはこのまま部屋で休んで下さい♪」
「そうですか……」
断られた。
尚輝くんの性格なんだろうけど、たまに突き放す時あるよなぁ。本当に俺の事を好きなのか疑わしくなる。
ふと俺は客の言う事は9割は嘘と言う店長の言葉が頭を過ぎる。
尚輝くんは違うと思ってたけど、まさかそうなのかー!?
だとしたら俺のこの今までに無い気持ちはどうしたらいいんだ!?
モヤモヤしながらも玄関まで付いて行き、靴を履く尚輝くんを見ていた。
「伊吹さん?」
「はい?なんでしょう?」
「そんな顔しないで下さい。帰り辛くなります」
「そんな顔ってどんな顔!?それならまだ帰らなくてもいいんじゃない!?」
「えっ!」
まるで尚輝くんを引き止めるように少し大きな声で言ってしまった。
そんな俺に尚輝くんは驚いた顔をしていた。
だってさ、俺のモヤモヤの事もあるけど、まだ一緒にいたかったんだもん!
「あの、まだ一緒にいてもいいんですか?」
「うん。もう少し話そ?」
「ありがとうございます♪それじゃあ延長お願いします♪」
尚輝くんは笑顔でそう言った。
延長だと?どこまで真面目なんだよこの20歳は!そんなの考えてなかったよ!
てか時間ピッタリに帰ろうとしたり、キッチリ延長扱いにしようとしたり、俺より仕事してるっぽくね?
本当に俺の事好きなのかよ!?
あ、そうか、いつも客はこんな気持ちなのか。
楽しかったり、好きなキャストとはもっと一緒にいたい。それは分かっていたけど、まさかこんなにもどかしい気持ちだったのは知らなかった。
そして一度やり取りされるこの「延長」と言う言葉で現実に戻される。
やっぱりこの人は俺の事を客としてしか見ていない。仕事だから俺といるんだって突き付けられるような気持ち。
ベテランだと思い込んでいたけど、俺もまだ客の事知らなかったんだな。
「延長なんかしない!ここからの時間はオフの伊吹として尚輝くんといたいんだ!」
「えー!それは……えっと……」
俺だってやっと気付いて言えたのに、尚輝くんは喜んでくれるかと思ったら、困ったように目を丸くさせてオドオドしていた。
これ、俺が客だったらどうしても帰りたいのに、押しに弱くて困ってると思って絶対に泣いてるぞ。
19
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王の腹心と厄介な男!
花より団子よりもお茶が好き。(応募用)
BL
【これだから……これだから嫌いなんですよ……!】
魔王の腹心であるシュケルは、魔王のもっとも信頼のおける部下だ。
ある日の朝、魔族領に異変を感じとった魔王の命で、シュケルは姿を消した。
だがそれから一月(ひとつき)近く及んでもシュケルは帰って来ない。
それに疑念を抱いた魔王のもう一人の腹心、カボチャが痺れを切らし城の回廊を歩いていると、魔王の恋人カイン(人間)がシュケルを探してやって来た。
二人で姿の見えないシュケルを心配していると、突如として城の壁が破壊され「ワタシの名はマハル。シュケルの〝夫〟になる男」などとのたまう変態、もとい青年が現れる。
彼は風の力を操り一度は帰って来たシュケルをあっという間に拐ってしまい――。
「なんて厄介な奴なんだ!」
〝初恋〟という名の思い込みと執着が物語とカボチャの心をかき乱す。
だけど一番厄介なのは――結局は〝あの男〟。
異界のストーカー王子VS魔王の腹心カボチャ
腹心×腹心(シュケル×カボチャ)
ライトBLラブコメファンタジー。
果たしてカボチャは、シュケルを取り戻すことが出来るのか。
*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
■特別編:魔王とカインの紙ひこうき!~少年と物語のはじまり~
【それってつまり、セオドアは神様から俺への贈り物ってことだな!】
これは本編から「十年前」のお話。
カインという少年が勇者になると宣言し魔王城を目指していた。
ここまでは普通の話である。だが少年と魔王はなんと紙ひこうきで文通をする仲なのだ。
おまけに魔王は国際会議中だから相手出来ないと断って来て――?
そもそもカインは本当に魔王を倒すつもりがあるのか?カインの本当の目的とは?
カボチャは相変わらず怒っていて、シュケルは相変わらず静かに微笑み、魔王も相変わらず絶妙にそこにいます。
■番外編:Happy Birthday to You
【……俺、寂しくなんかなかったんだ】
突然現れたカインの旧友ユメハ。
彼女は別世界と別世界を行き来する妖精だ。
そんな、彼女がなぜカインの前に現れたかというと……なんと、彼女は大事な大事な誕生日プレゼントを三つ、この世界に落としてしまったのだ。
ことのしだいを知ったカインはカボチャとシュケルと城の皆を巻き込んで、プレゼントを探すのだが……。
ブラック企業の寮で、同期とだけは恋に落ちないと決めていた~同室生活・過労案件・限界メンタル―それでも、唯一の味方が、隣にいる。
中岡 始
BL
「限界社畜、恋に落ちたら終わりだと思ってた――でも、一緒に辞めて起業しました。」
ブラック企業で出会った新卒ふたり。
職場は地獄、寮は同室、心は限界寸前。
“ちゃんとした社会人”を目指す白井と、マイペースに生き延びる藤宮。
恋なんてしない、期待なんてしない――そう思ってたはずなのに、
「お前がいたから、ここまで来られた」
気づけば手を取り、会社を辞め、仲間たちと“理不尽の外側”へと走り出す。
すれ違い、涙、ほうじ茶プリンとキスの夜。
これは、仕事と恋に潰れかけたふたりが、
一緒に人生を立て直していく、再起系BLラブコメディ!
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
恭介&圭吾シリーズ
芹澤柚衣
BL
高校二年の土屋恭介は、お祓い屋を生業として生活をたてていた。相棒の物の怪犬神と、二歳年下で有能アルバイトの圭吾にフォローしてもらい、どうにか依頼をこなす毎日を送っている。こっそり圭吾に片想いしながら平穏な毎日を過ごしていた恭介だったが、彼には誰にも話せない秘密があった。
過去のやらかしと野営飯
琉斗六
BL
◎あらすじ
かつて「指導官ランスロット」は、冒険者見習いだった少年に言った。
「一級になったら、また一緒に冒険しような」
──その約束を、九年後に本当に果たしに来るやつがいるとは思わなかった。
美形・高スペック・最強格の一級冒険者ユーリイは、かつて教えを受けたランスに執着し、今や完全に「推しのために人生を捧げるモード」突入済み。
それなのに、肝心のランスは四十目前のとほほおっさん。
昔より体力も腰もガタガタで、今は新人指導や野営飯を作る生活に満足していたのに──。
「討伐依頼? サポート指名? 俺、三級なんだが??」
寝床、飯、パンツ、ついでに心まで脱がされる、
執着わんこ攻め × おっさん受けの野営BLファンタジー!
◎その他
この物語は、複数のサイトに投稿されています。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。
モラトリアムは物書きライフを満喫します。
星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息
就職に失敗。
アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。
自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。
あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。
30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。
しかし……待てよ。
悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!?
☆
※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる