【完結】取り柄は顔が良い事だけです

pino

文字の大きさ
56 / 72
4章 まさかの目覚め!?

55.連絡先の交換

しおりを挟む

 とにかく俺は尚輝くんともっと話がしたかった。
 何か分かりかけて来ていて、それを確実な物にしたかったんだ。
 俺が尚輝くんに他の客とは違う扱いをしてしまうのは、尚輝くんを気にしてるってのは分かった。
 じゃあその気にしてるのは何で?
 尚輝くんは毎回大金を運んで来てくれるから?
 年下で弟みたいだから?
 それとも……


「伊吹さん、俺……」

「尚輝くんが嫌じゃなかったらもう少しだけ……今度は俺に時間ちょうだい?」

「嫌じゃないです!はい♡俺のこの後の時間は全て伊吹さんの物です♡」


 尚輝くんは強く否定した後に、安心したように笑ってそう言った。
 俺はその笑顔とセリフにドキッとしてしまった。
 なんて言うか、いつものキリッとした顔じゃないから油断してたって言うか……
 とても大切な物を見て喜ぶような、そんな甘い笑顔だったから。

 
「尚輝くんてさ、そう言うの慣れてなさそうなのに結構言うよね。おじさんドキッとしちゃった」

「伊吹さん!自分の事をおじさんって言うの辞めて下さい。俺は伊吹さんの事をお兄さんだと思っています。てかどこからどう見てもお兄さんですよ!」

「ん、分かった。尚輝くんの前では言うの辞めるね♪」

「ありがとうございます♪」


 あ、なんか良い感じ?
 てか俺と尚輝くんて凄い仲良いよな?
 相性いいのかも?
 って何の相性だよ!?
 友達?弟?
 と、とにかく尚輝くんとは一緒にいたいと思うんだ!

 俺はとりあえず尚輝くんを再び部屋に上げて話の続きをしようと思って、廊下を歩いてる途中の繋ぎの会話を思い付く。
 寝室のベッドにあるペンギンのぬいぐるみだ。


「あ、そうだ、俺ペンギンと寝てんだよ。あいつふわふわで気持ち良くね?」

「俺もですよ~♪伊吹さんも同じだなんて嬉しいです~♪」

「ほら見て」

「!?」


 俺が通りがかった寝室のドアを開けて中を見せると、尚輝くんは驚いた顔をした。
 あれ?何かヤバいもんなんかあったっけ?
 特に見られてマズいもんなんて無かったと思うけど、もしかして布団が起きてそのままだからか!?尚輝くんてキッチリしてそうだもんな!


「伊吹さんの……寝室……」

「ごめん、ベッドの上の布団乱れてんの気になる?でもちゃんと定期的に布団干してるよ?」

「いえ、そうじゃないです。伊吹さんの寝室を見れるとは思ってなくて……その、ちょっとドキドキします……」

「へ?……って、別に誘ってねぇからな!?ペンギン!ペンギンを見せたかっただけだから!」

「はい……そんなに否定しなくても……」


 俺は慌てて寝室のドアを閉めるけど、そっか、尚輝くんは俺の事が好きだったんだ。勘違いさせたら悪いよな。
 これからは発言とかに気を付けねぇと。


「あれ?伊吹さんのスマホ鳴ってません?」

「え?あ、リビングに置きっぱなしだった」


 尚輝くんに言われてスマホが鳴ってる事に気付く。リビングのテーブルにあったスマホを見てみると、ルナからの着信だった。
 何だよあいつかよ。最近良く連絡してくるけど、どうでもいい話ばっかなんだよな。
 俺はシカトしようと思ったけど、なんとなく出てみる事にした。


「ごめん、ちょっと電話していい?」

「どうぞ」


 尚輝くんが笑顔でいる事を確認してからルナからの電話を取る。
 きっとろくな事じゃないけど、これから来るとかだったら面倒だからな。要件だけ聞いてさっさと切ろう。


「何ー?どうしたー?」

『仕事オツ~♪なぁ店長に聞いたけど延長無しだろ?今から飲み行かね?』


 事務所にいるのか、ルナは俺のスケジュールを把握しているような言い方だった。
 

「仕事は終わったけど、無理。他当たってくれ」

『そんじゃあ伊吹んち行くわ、適当に買って行くから何か欲しいもんあったら連絡ちょーだい』

「は?来るなよ。他当たれって言ってんじゃん」

『てかお前どこにいんの?何か周りやけに静かじゃね?今客と別れたばっかだよな?』


 あ、俺が家にいるってバレたら尚輝くんを家に上げた事が知られちまうか。
 そうなるとルナがうるさそうだ。
 

「タクシー拾って安全運転してもらってるとこだよ。じゃあな」


 これ以上話すとボロが出そうだから強制的に電話を切る。
 にしても何で最近頻繁に連絡して来るんだよ?
 あいつからの連絡は月に一度とかだったのに、この前一緒に焼肉屋行ってから毎日のようにメッセージ来るんだけど?
 だけど、あいつは同じ仕事してるからか俺が接客中は絶対に連絡はして来ないんだ。しっかりしていると思うけど、裏を返せば俺のスケジュールを全て把握しているって事になるから、常に見張られてるようで俺はあまり良い気はしない。

 とにかくルナがうちに来るかも知れないな。
 俺が来るなって言っても聞く筈無いからな。
 尚輝くんには悪いけど今日は帰ってもらうか。


「今からちょっと面倒な奴来るかも。俺が引き止めたのに悪いんだけどまた話そ?」

「あ、はい!俺の事は気にしないで下さい。今日は帰りますね」

「うん。また連絡するよ」

「はい♪」

「あ」


 俺は思い出して再びスマホを取り出して尚輝くんに向ける。
 

「良かったら連絡先教えてくれない?店通してだとタイムロスあるし、直接の方が楽じゃん?」

「えっ交換してくれるんですか!?」

「うん。尚輝くん良い子だから。でも他の客とは交換した事ないから、タイガーには内緒な?」

「分かりました!ありがとうございますっ!あの、夜とかメッセージしてもいいですか!?」


 尚輝くんは目をキラキラさせて珍しく興奮気味に聞いて来た。
 今までは店を通してサイトのメッセージ機能を使ってやり取りしてたから、これからは直接やり取りすれば、好きな時にしたい話が出来るだろ。
 絶対にタイガーには知られたくないから口止めはしたけど、尚輝くんなら大丈夫だろ。


「いいよ♪いつも通りしてよ♪」

「嬉しいです♪伊吹さん大好きです♪」

「あ、ありがと……」


 尚輝くんは意識して言ってんじゃないのかな?何か普通に流れで「好き」って言われたけど、これは返答に迷った。
 とりあえず無難な返ししたと思うけど、大丈夫だよな?
 てか何このドキドキは?
 俺、客に好きって言われるの初めてじゃないのに何でこんな動悸がすげぇの。

 と、ここでキツネ野郎からメッセージが届いた。
『今コンビニ~。つまみはいつもの感じでいい~?』
 やべ!あいつ来る気満々じゃん!
 
 俺は急いで尚輝くんを帰して、部屋にも痕跡が残っていないか確認して回った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】重ねた手

ivy
BL
とても短いお話です。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

ブラック企業の寮で、同期とだけは恋に落ちないと決めていた~同室生活・過労案件・限界メンタル―それでも、唯一の味方が、隣にいる。

中岡 始
BL
「限界社畜、恋に落ちたら終わりだと思ってた――でも、一緒に辞めて起業しました。」 ブラック企業で出会った新卒ふたり。 職場は地獄、寮は同室、心は限界寸前。 “ちゃんとした社会人”を目指す白井と、マイペースに生き延びる藤宮。 恋なんてしない、期待なんてしない――そう思ってたはずなのに、 「お前がいたから、ここまで来られた」 気づけば手を取り、会社を辞め、仲間たちと“理不尽の外側”へと走り出す。 すれ違い、涙、ほうじ茶プリンとキスの夜。 これは、仕事と恋に潰れかけたふたりが、 一緒に人生を立て直していく、再起系BLラブコメディ!

王子様と一緒。

紫紺
BL
田中明夫は作家を目指して10年、全く目が出ない男だ。 ある日、書店の前で金髪青い目の青年が突然話しかけてきた。最初は胡散臭く思っていたのだが……。 南の国の第2王子アスラン、その護衛トーゴー、田中が住むアパートの大家や住人の奨励会員などなど。 様々な人間模様と恋模様が織りなすBL多めのラブコメ開幕です!

恭介&圭吾シリーズ

芹澤柚衣
BL
高校二年の土屋恭介は、お祓い屋を生業として生活をたてていた。相棒の物の怪犬神と、二歳年下で有能アルバイトの圭吾にフォローしてもらい、どうにか依頼をこなす毎日を送っている。こっそり圭吾に片想いしながら平穏な毎日を過ごしていた恭介だったが、彼には誰にも話せない秘密があった。

【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜

星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; ) ――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ―― “隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け” 音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。 イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――

過去のやらかしと野営飯

琉斗六
BL
◎あらすじ かつて「指導官ランスロット」は、冒険者見習いだった少年に言った。 「一級になったら、また一緒に冒険しような」 ──その約束を、九年後に本当に果たしに来るやつがいるとは思わなかった。 美形・高スペック・最強格の一級冒険者ユーリイは、かつて教えを受けたランスに執着し、今や完全に「推しのために人生を捧げるモード」突入済み。 それなのに、肝心のランスは四十目前のとほほおっさん。 昔より体力も腰もガタガタで、今は新人指導や野営飯を作る生活に満足していたのに──。 「討伐依頼? サポート指名? 俺、三級なんだが??」 寝床、飯、パンツ、ついでに心まで脱がされる、 執着わんこ攻め × おっさん受けの野営BLファンタジー! ◎その他 この物語は、複数のサイトに投稿されています。

無愛想な氷の貴公子は臆病な僕だけを逃さない~十年の片想いが溶かされるまで~

たら昆布
BL
執着ヤンデレ攻め×一途受け

処理中です...