【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

１章 写真ばら撒き事件

なんつー格好で人んちウロウロしてんだっ！

　俺がシャワーを浴びて部屋に戻ると、冷房のきいた部屋でスマホを見ながらくつろぐ伊織。
　てかこいつ何で家にいるんだっけ？


「あ、貴哉ー♡次俺シャワー使っていい？」

「おーいいぞー。てかお前何で家にいるんだよ」

「何でって怜ちんに電話するからだろ」

「そっか」


　伊織は機嫌良く部屋から出てった。
　ってちげぇだろ！あいつがあまりにも普通にしてるから流されるとこだったけど、俺は今日一日あいつから逃げる為に外を走り回ってたんだ！

　早く帰さねぇとだな。

　怜ちんに電話なんて言い訳だろうし、シャワー終わったら何が何でも追い出そう。

　と、ここで俺のスマホが鳴った。
　空からだ。部活終わったんかな？
　俺は普通に出ると、少し元気の無さそうな声がした。


『もしもし？貴哉？今話せるー？』

「おう。学校お疲れ」

『ほんと疲れたよぉ。貴哉はちゃんと家で大人しくしてたか？』


　ウッ。聞かれるとは思ってたけど、いざ聞かれると言葉に詰まるな……
　

「あー、体が鈍っちまうから少しジョギングしてた」

『何それー？貴哉がそんな事する訳ないじゃん。絶対嘘でしょ』


　笑う空の声が聞こえて俺は少しホッとした。
　そして空が話し出した。


『あのなー、実は今からクラスメイトの倉持んちに行くんだけどさ～』

「倉持？誰だそれ」


　クラスメイトにそんな奴いたか？
　いや、クラスメイトの名前とか全部覚えてねぇからいてもおかしくねぇけど、何で空がそいつんちに行くんだ？


『やっぱり分からないよな～。俺も顔とか薄っすらとしか覚えてねぇもん。今日ちょっと話に進展があってさ、その倉持って昨日から学校休んでるんだよ。だから担任に住所聞いて様子見に行くとこなんだ』

「何で空がそんな事すんだよ？クラス委員でもねぇのに」

『それがさー、話すと長くなるから会って話したいんだけど、夜会えるー？てか貴哉に会いたーい！』

「んー、何か気になるし、俺家から出れねぇから家で良ければ来いよ」

『やったー♡んじゃ、ちゃっちゃっと終わらせて貴哉んち行くな♡また連絡するー』


　電話を切って考える。
　倉持って誰だ？
　空の何なんだ？
　俺のいない間に何かあったのか？
　んー、その倉持ってのが誰だか知らねぇし、わかんねーや。

　空が来たら聞けばいっかと思ってると、シャワー浴びて来た伊織が部屋に入って来た。


「あ、伊織ー、お前怜ちんには帰ってから電話し……ろってお前！なんつー格好で人んちウロウロしてんだっ！」


　伊織を帰そうと振り向くと、そこにはバスタオルを下半身に巻いただけの全裸の伊織がいた。
　こいつ自由過ぎるだろ！母ちゃん帰って来てたらどーすんだ！


「貴哉服貸して～。パンツも～」

「やだよ！着て来たやつ着ろ！」

「汗かいたし新しいの着たい。あ、ほらバッティングした時に着てたやつならデカそうだし俺でも着れんじゃん？」


　そう言いながら勝手にクローゼットを漁り出す伊織。こいつはどこまでも勝手な奴だなぁ！
　まぁ服ぐらいならいい。でもパンツは貸さねー！


「貴哉の服って、似たようなのばっかだな。黒とか好きなのか？」

「好きってか着れれば何でもいいだろ服なんて」

「そっかー。あ、今度一緒に服買いに行くもんな♡そん時選んでやるよ。あ、これお洒落じゃん！てか前着てたの見たな～」

「あ？ああそれか。芽依が買ってくれたやつ」


　前に芽依に寝巻きのまま拉致られて無理矢理着替えさせられた服だ。緑色でフードがデカいパーカー。パーカーは好きだけど、いつも同じようなTシャツ着ちゃうからどんどん下の方に行って存在忘れてたわ。


「芽依ちゃんに買ってもらったのか！？」

「何驚いてんだよ。あいつ金持ちなの知ってるだろ」

「いやいや、女の子に買って貰うとかやるな貴哉。すげぇわ」

「関心すんじゃねぇ！そもそもあん時は寝巻きだった俺を無理矢理連れ出したあいつが悪いんだ！買って当然だろ！」

「そういや芽依ちゃんとは会ってんの？あんま話出て来ないけど」

「会ってねぇよ。てか会いたくねぇわ」


　そういや、俺を拉致るぐらいだったあの芽依はあれから全く姿を見せなくなったな。
　うるさくなくていいけど、戸塚も何も言って来ねぇし、俺に飽きたんだろ。


「貴哉はモテモテだからなぁ～。俺と付き合ったら芽依ちゃんでも浮気はダメだからな♡」

「お前はまだそんな事言ってんのかよ。てかさっさと服選んで着て帰れ！ノーパンでな！」

「えっ貴哉ってそういう趣味あったのか？俺がノーパンで外歩くの想像すると興奮すんの？」

「しねぇよ！いちいち変なボケかましてくんな！」

「んじゃ怜ちんに電話しますかー」


　伊織は一番上にあった黒いTシャツを着て、下はノーパンのまま自分が履いていたズボンを履いた。俺と伊織は身長差があるけど、俺はデカいTシャツが好きだから伊織が着るとちょうどいいサイズになった。
　そしてスマホをいじり始める。
　おいおい、マジで電話していくつもりかよ……

　俺は長くなりそうだったからベッドに寝転がりながら電話が終わるのを待つ事にした。