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2章 球技大会
怜ちん!俺はおろし牛丼だ!
しおりを挟む金曜日の学校の部活終わりに先輩のなっちと牛丼を食っていた。腹なんか減ってねぇとか思ってたけど、店に入ってあの良い匂いを嗅いだら無性に腹が減って来たんだ。
「俺はねぎ玉牛丼の特盛の肉二倍~、それから汁だくに、豚汁だろ?あとサラダも~っと」
「なっち、それ食って夕飯食えるの?」
「当たり前だろ!特盛はおやつだ!」
「さすがだぜ」
テーブル席に座り、机の上にあるタッチパネルのモニターで楽しそうに選んでるなっちに聞くと、なっちらしい答えが返ってきた。
俺はいつもの牛丼並盛りと、トッピングで温玉を選んだ。
「秋山それだけで足りるのか?」
「普通に足りるから。なっちが食い過ぎなの」
「そうかぁ?」
「なっち、誘ってくれてありがとうな」
「いいって事よ!秋山は可愛い後輩だからな!で、いーくんと何があったんだ?」
「てかまず俺が聞きてぇよ。なっちは俺と伊織のどこまでを知ってるんだ?」
「俺と怜ちんはいーくんに秋山と付き合ったって聞いたんだ。そんでおめでとー、今度からは四人で連む事が増えるねーみたいに話してたら、いーくんがいきなり冗談だったとか言い出すからよぉ。結局どっちなんだって話!」
「結論を言うと付き合ってねぇよ。今日別れたんだ」
「ふーん。じゃあ付き合ったのは本当なんだな!いーくんのヤロー、コロコロ言う事変えやがって」
「……なっち、ごめんな」
「ん?何で謝るんだ?」
ここで注文した牛丼が届けられた。
なっちは嬉しそうに丼を持ってガツガツ食い始めた。
「伊織の事傷付けたからだよ。大事な友達なんだろ」
「んー、つっても秋山も大事な友達だからな~。だからいいんじゃん?お互い様って事でよ」
「…………」
「かー!うめぇな牛丼!秋山も早く食えって♪腹いっぱいになれば元気出るぞ?」
「うんっ!食う!」
俺はなっちみたいに丼を抱えてかき込むように食った。やっぱ好きだなぁなっち!話してるとすげぇ気持ちが楽になる。
「ところでさ、いーくんてどんなセックスすんの?」
「ぶっ!!」
めちゃくちゃ良い事言った後にこれかよ!?
なっちはやっぱり馬鹿だ!
「何だよいきなり……」
「だって気になるじゃん!秋山はヤッた事あるんだろ?いーくんと!」
「お前、伊織にどこまで聞いてんだよ……」
「俺ら三人は何でも話すぜ~♪ガハハ!」
「てかどんなって聞かれても俺、経験人数二人だけだし……うーん」
空と伊織を比べるのは良くねぇけど、伊織の方が激しい気はするな。男らしいっての?逆に空のは優しい?
「伊織はあのまんまだよ」
「うお!すげぇって事か!」
「うわ、伝わった」
「やっぱりいーくんはベッドでもすげぇのかぁ!」
「ってお前らどんな話してんだ。場所を考えろ場所を!」
「「ぎゃ!!」」
俺となっちは同時に肩をビクッとさせて驚いた。
いきなり横から声を掛けられたからだ。
慌てて横を見ると、そこには笑顔で怒ってる伊織と、ニコニコ笑顔の怜ちんがいた。
「牛丼美味しそう~♪俺チーズ牛丼汁だく~♡」
「まったく!那智てめぇ想像すんじゃねぇって言っただろ!怜ちん!俺はおろし牛丼だ!」
怜ちんはなっちの隣に。伊織は俺の隣に座って普通に注文し始めた。
え、二人とも何でここにいんの?てかここで食うのか!?
俺は軽くパニクってると、なっちがごめんと両手を合わせて来た。
「悪いな秋山!ここにいるの教えたの俺なんだ」
「何で教えたんだ?」
「そりゃ喧嘩した友達を仲直りさせるためっしょ!なぁ?怜ちん?」
「そうそう♪喧嘩したらすぐに仲直り!それが俺達のルール!てか喧嘩なんかしないけどね~♪」
「え、それって俺と伊織を?」
「だそうだ。仲直りするも何も喧嘩なんかしてねぇよ」
「それならそれでいいじゃない♪四人で食事を楽しめば~♪」
「……そうだけど」
俺は気まずくてチラッと伊織を見る。それに気付いた伊織も俺を見て目が合った。
そして伊織は困ったように笑った。
「貴哉、いろいろと悪かったな。改めて俺と友達になってくれないか?」
「えっ」
「いーくん、今時友達になるのに許可なんかいらねぇって」
「那智くん!余計な事言わないの!ほら黙って牛丼食べてな!」
「……早川との事は今は心から応援はできねぇけど、なるべくするようにはする。二人が喧嘩したら友達として話聞いてやるよ」
伊織はニッと笑って言った。
それって、もう俺の事を好きなのをやめるって事だよな?空と付き合うのを認めるって事……
あの伊織がそんな事言うなんて……
多分これは喜ぶべきなんだろう。だけど素直に喜べなかった。何か、心に暗くて重い何かが落ちて来たような、そんな気持ちになった。
「分かった。伊織の気持ち、分かったよ」
「……貴哉」
「貴ちゃん、これでもいーくんは頑張ってるんだ。時間が掛かってもいいから、友達になる件、俺からもお願い出来ないかな?」
「怜ちんお前は俺の保護者か」
「だーから!友達になるのに許可なんかいらねぇって!だから秋山が困ってるんだろー?」
ここで追加で注文した二人の分の牛丼が届いて四人で食い始めた。けど、俺は全部食い切る事が出来なくて、結局残りはなっちに食ってもらった。
何だろう、この気持ちは。
伊織は全然前向きな事言ってんのに、俺の気分は落ちたまま。
このままじゃ三人に気を使わせるだけじゃん。
「はー、食った食った~!秋山って少食だったっけ?まぁ俺がいたらいくら残してもいいけどな!」
「……いーくん」
「ああ。貴哉、送ってくよ。怜ちん、これで払っといて」
怜ちんが不安そうに伊織を見ると、伊織は頷いて財布から金を出してテーブルに置いた。札の量から言って四人分はあった。
俺はそれを見て何でか無性に嫌になり、自分の分は自分の財布から出してバンっとテーブルに出していた。
「へ?貴ちゃんどしたの?」
「俺の分の会計これで頼む」
「秋山~、いーくんが奢ってくれるんだってー。だから秋山は……」
「伊織に奢られたくねぇ!」
「…………」
これには三人は黙ってしまった。店にいた他の客からも見られ始めて俺は逃げるように一人で店を出た。
何やってんだ俺。あんなガキみたいな事して!
怜ちんも、なっちも俺の為に励ましてくれてたのにっ。
くそ!これも全部伊織のせいだっ!伊織があんな事言うからっ!
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