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4章
他見てる余裕ねぇんだわ
しおりを挟む道端で心と向き合いながら話していた。
柳瀬は良い奴なんだろうけど、自分がこうだと思ったら聞かない奴らしい。自分に近いものを感じて怒りも今じゃ収まりつつある。
「お前が謝る事はねぇけどよ、一回柳瀬と一対一で話した方がいいよ。俺より柳瀬と仲良かったんだし、俺にはあいつをまとめるのは無理だわ」
「うん、そうする。本当にごめんね」
「だから心が謝る事ねぇっての。それに、無理して柳瀬に合わせる必要もないからな!謝られても好きだって言われても心が嫌ならもう関わる必要ねぇと思うし、もしまた仲良くしてぇんならしてやれよ。お前は自分の意見を言わな過ぎるからな。たまには本音で話してみたら?」
「貴哉は俺の事を良く分かってるね。ありがとう」
「おう。また何かあったら話聞くからよ~。いつでも呼んでくれや」
「……貴哉、一つだけ聞いて欲しい事があるんだ」
「何だ?」
俺が聞き返すと、心はニコッと笑って話し出す。
いつものように感じの良い笑顔で真っ直ぐに俺を見て言った。
「俺、貴哉の事が好きだ」
「……おう、そうか」
突然の告白だったから、俺は一瞬考えちまったけど、変に考えずに俺もいつも通りにする事にした。
「心、悪いけど諦めてくれ。前にも言ったけど、俺にはうるせぇ相棒がいてよ。他見てる余裕ねぇんだわ」
「あはは、それは残念だな。分かった、応援してるよ。それと俺行かなきゃいけない所あるから送って行けないや。ごめん」
「おう!俺も近くに相棒が待機してっから気にすんな」
俺と心は笑い合った。まるでたわいない会話を楽しむ友達のように。
俺も心の事応援してるぜ。いつか過去の事に囚われずに好きに振る舞えて、また心から好きだと思える相手を見つけられるようにな。
それから心はコンビニの方へ戻って行った。
俺はクルッと後ろを向いて家がある方角を目指して歩く。途中で空に電話をすると、何をするでもなく駅前で待っていたとかですぐに来ると言っていた。
俺の相棒か。それは空だったらいいなと思っているけど、俺の首に掛けてあるネックレスに付いてる指輪が本当にそれでいいのかと言ってるようでもどかしかった。
誰よりも空がいいはずなのに、伊織の事も忘れられずにいる。
俺が本当に好きなのはどっちなんだ?
「貴哉ー!」
「お、来たな」
名前を呼ばれた方を見ると、チャラ男号に跨る男がこちらに向かって走って来ていた。
今の空は髪も短くして、色は相変わらず明るいからチャラさは抜けてないけど、大分男らしくなったと思う。外見だけじゃなくて中身もな。
俺の横まで来ると、自転車を降りて転がしながら隣にピッタリ張り付いて来る空が可愛いくてニヤけちまう。
「なぁ、大丈夫だったのか?って、何ニヤついてんだよ~」
「いやー?お前可愛いなって♪」
「どこが!?帰らないで待ってたとこー?」
「それもだけど、見た目?てかお前背低くなった?」
俺が空の頭ら辺を見ながら聞くと、悔しそうな顔をした。
俺は空より少しだけ背が低かった筈だ。気のせいか今では俺の方が高く見える。
「俺は低くなってないよ。貴哉が伸びたんだろ~?」
「また伸びたのか!やったぁ♪空より高くなったぁ♪」
「まだ同じぐらいだ!いや、まだ俺の方が高いかもな!」
「この分なら年明けにはお前の事見下ろさなきゃならねぇな」
「どんなけ高速で成長する気だよ!もうずっと同じぐらいでいいじゃんっ」
「確かに。それも悪くねぇな」
「…………」
「何?自分のが高くないと不満なのか?」
「ううん。この前まで貴哉の事、可愛いなぁって思ってたんだけど、こうして見るとかっこいいなって思うよ。口は悪いけどな」
「かっこいい!やっと認めたな!?」
「これはもう認めなきゃでしょ。貴哉はかっこいいよ~。頭は悪いけどな」
「最後に悪口言うのやめね?でも気分良いからいいや」
「そりゃいろんな人から好かれる訳だよ。周りに凄過ぎる人が多いから気付かないだけで、普通にイケメンなんだもんな~」
「お前褒め過ぎじゃね?何か企んでるのか?」
憧れてたかっこいいってのを言われて浮かれたけど、ここまで褒められると何かあると思っちまうな。
空は笑っていた。
「企んでねぇよ♪それよりも体は本当に大丈夫なのか?足の他に痛いとことかねぇの?」
「平気平気。足ももう普通に歩けるし。少し違和感あるぐらい。紘夢が本当に俺を守るように抱えてくれてたからな~」
「じゃあ一条さんは結構痣とか出来てるのかな?普通にしてたけど、結構辛かったのかな」
「あいつは怪我してるだろうよ。気絶したぐらいだからな。夜にでも電話して様子聞いてみるよ」
「うん。俺もメッセージしてみる」
担任の言う通り、あの場では普通にしてても後から何かしらの症状が出てくるかもしれねぇよな。特に紘夢は俺を庇って落ちたんだから。
俺も今は何ともないけど、明日の朝起きたら起き上がれないぐらい痛かったらどうしよう。俺、もう休めねぇじゃん。そん時は迎えに来てくれてる空に担いでもらうしかねぇか。
俺は隣を歩く可愛い相棒を見て自然と笑顔になれた。
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