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5章
楓ぇ♡やっぱお前は俺の事分かってるなぁ♡
しおりを挟む久しぶりの楓の部屋は少し変わっていた。物の配置とかはそのままだけど、物が少し減った気がする。元々綺麗に片付いてた部屋だけど、物がなくてより大人っぽい部屋になっていた。
そして目に付くのはテーブルの上にあったパソコンだ。少し前にゲームでイベントやっててどうしても限定アイテム欲しくて偶然会った楓を誘って協力してもらった事がある。ふむ。楓はこのパソコンでやってるのか。
そして楓に用意して貰った缶ビールを開けて久しぶりに酒を飲む。中学の頃とかは良く飲んでたけど、母ちゃんにバレるとかなり怒られるから高校入ってからは全然飲んでなかった。
俺は酒を飲みつつコンビニで買ったケーキを食いながら楓の別れ話を聞いていた。
思ったよりもすんなり別れられたみてぇだな。楓の表情もスッキリしてる感じだし、それはそれで良かったんじゃん。
「恋も覚悟決めたみてぇよ。最後はお互い割り切って過ごしたわ。だから気持ちもスッキリしてるよ」
「本当かぁ?実は楓の方がショック受けてたりして~?」
俺が茶化すように聞くと、楓は「はは」と軽く笑って淡々と答えた。
「ショックって言うか、後悔はしてる。もっとあいつの事分かってやれば良かったって。俺は恋の事を分かってやれてなかったんだ」
「それ引きずってるって言うんじゃねぇの?もう別れたんだしどうこうしろとか言わねぇけどよ~」
「引きずってるか……」
こりゃ引きずってんな。
楓自身は彼氏と別れたいとか言ってたけど、やっぱり好きで一緒にいたんだからそうなるわな。
俺は楓の気持ちが分かった気がして自分の事も思い出していた。
俺も空や伊織と別れるってなった時、明るい気持ちにはなれなかったよな。楓も本当は泣きたいんじゃねぇの?楓は昔からクール振って本当の事言わない事があるからなぁ。
よし、俺の話もしてやっか!
やっぱり楓は俺がまだ伊織と付き合っていると思っていたらしく、ここで本当の事を話してやった。
伊織とは今「保留」って言うちょっと訳分かんねぇ関係になってて、あいつは海外旅行中。
やっと俺が今日イブにぼっちだって理由が分かったのか話を聞きながら納得していた。
「なぁ、貴哉も桐原さんと上手くいってなかったのか?」
「んー、別にそういう訳じゃねぇんだけどよ~。何か面倒になったから俺がどっちとも付き合うの辞めたんだ。伊織は保留って言い張ってる。そしたら伊織にもいろいろあって距離置く感じになったんだ」
「まさかそんな事になってたなんてな。貴哉もお疲れさん」
多分俺らしいなとか思ってんのかな。楓はクスクス笑いながらコンビニで買ってたポトフを食っていた。
今日はお互い寂しい者同士だし、こういう話も有りだな。傷を舐め合うじゃないけど、元々気が合うからお互いの事は良く知ってるし、それだけでも話して気持ちが楽にもなるもんだ。
俺はケーキを食うのを途中で辞めて、座っていた座椅子から降りてベッドにもたれ掛かって座る楓の隣に移動する。
「伊織は今自分を見つめ直すの頑張ってんだ。だから前みたいに会ったりしてねぇよ。んー、学校とかで顔合わせたら挨拶する程度?逆に空とは伊織がいなくなった分、前より一緒にいる事が増えてよ。ちょいちょい付き合いたいとは言われるんだけど、俺はフリーを楽しむって言って断ってんだ。空の事は好きだけどな。それでいいと思うか?俺、空にひでぇ事してっかな?」
伊織とは少し離れただけで別に関係が悪くなった訳じゃない。空とも前より仲良くなってるけど、それもあって付き合わずに今の今まで来ている。好きとか言ったり、その気にさせるような事言ったりして期待させてんのを少し悪いかなと思うんだ。
だからと言って伊織とはまだ完璧に終わった訳じゃねぇし、このまま空と付き合うのは違うようなー?
んー、なんか上手く考えらんねぇなぁ。
そんな俺にニッコリ笑って頭を撫でてくれる楓。うわー、それ今めちゃくちゃ嬉しいんだけど。
「いいと思うぜー?貴哉はそのままでいろよ。二人がどうなろうが、文句言おうが堂々としてろって。多分二人もそのままの貴哉を好きになったんだろうからさ」
「楓ぇ♡やっぱお前は俺の事分かってるなぁ♡」
俺は信頼してる楓に正に言われたい言葉を言われて感極まり、普段戯れるように抱き付いた。
本当楓ってば俺の事分かってるよなぁ♪
俺が良い事なくてむしゃくしゃしてる時にサラッと現れて楽しい気持ちにさせてくれるとかマジでスーパーマンだよなぁ♪
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