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7章
俺の母ちゃんとは違う迫力があったわ
しおりを挟む陽子さんがいる病室に入ると、空は自然と手を離していた。すまん、空、勝手に母ちゃんに俺達が付き合ってる事は話しちまったんだ。
俺達に気付いた陽子さんはニコッと笑って手招きした。
「空、こっちおいで」
「っ……うん」
陽子さんに呼ばれて少し緊張した感じの空。
俺はさっき陽子さんと話してたから分かるけど、空は見捨てられたままだと思ってるもんな。自分の事なんか何とも思ってない母親から笑顔で手招きなんかされたら戸惑うわな。
「もっと近くに来て」
「母さん……」
空を自分の真横まで呼んで、陽子さんはニッコリ笑顔のままスッと腕を伸ばす。そしてそのままベッドから身を乗り出して空の胴体に抱き付いた。
あ、さっき俺がギューって抱き締めてやってってやつやってくれてんのか!
「空~♪来てくれてありがとう!心配かけてごめんね」
「えっ!か、母さん?待って、いきなりどうしたのっ」
「本当はずっとこうしたかったよ~。でも、私ダメダメだからさぁ~、今までごめんね空」
「か、母さんっとりあえず離れよ?貴哉も見てるからっ」
「何照れてんだよ空~?俺に見られたらマズイのか?」
「貴哉くんもおいで~♪一緒にギューしてあげる♪」
「母さん!ふざけんなよ!」
ここで何も知らない空は怒りだした。
あー、そんな大きな声出したら迷惑だろうが。
そろそろ種明かしをする事にした。
「空、声控えろって。実は陽子さんに話したんだよ、俺とお前の事」
「何、貴哉と俺の事って」
「付き合ってるって事だよ」
「!!」
「はい聞きましたー♪お母さんは大賛成だよ♪貴哉くんも私の息子になるの。だからギューしても問題ないでしょ?」
「あるだろ!人がいない間に勝手に話進めて何してるんだよっ!俺がっどんなけ心配したかっ……二人共ひでぇよ……」
とうとう空はポロポロ涙を流して泣き始めた。
出たよ、泣き虫空くん。
これには陽子さんもビックリ。どうやら空が泣き虫だっての知らなかったようだな。
「そ、空っどうして泣くの?お母さんの事、そんなに嫌い?」
「嫌いじゃないっ俺、ここに来るまで凄く不安で、知らない事とかもいっぱい聞いたりしてっ頭ん中ぐちゃぐちゃだったんだ!それなのに二人がヘラヘラ笑ってるからっ!俺だけ馬鹿みたいだってっ」
「空、声」
「そっかぁ、空も大変だったんだね。全部私のせいだね。本当にごめんね」
「何だよ今更っ」
「今更でもさ、また空のお母さんになりたいなぁって思っちゃった。今度はちゃんとお母さん出来るように頑張るから、だから~……メッセージとか返して欲しいな?」
陽子さんはテヘヘって笑って空を見ていた。きっと空だけじゃなくて、陽子さんも緊張してるだろう。もう母ちゃんとして頑張ってるもんな。
空は涙を拭いて俺を見た。
「貴哉、俺……」
「母ちゃんが本音で言ってくれてんだからお前も本音言っちまえよ」
「聞かせて?空の本音」
「……俺、母さんとまた暮らしたい……」
「うん!私も空と一緒に暮らしたい♪」
小さな声で呟くように空は言った。
それを聞いた陽子さんは嬉しそうに笑っていた。そんな陽子さんの目尻に涙が少し出ていたのは触れないでいてあげた。
面会時間がとっくに過ぎていた為、看護師に注意された俺と空はもう少し話していたかったけど、泣く泣く病院を出る事にした。
そういや的場が待ってるはずだ。勝手に帰ってなければな。
俺と空は駐車場まで手を繋いで歩いていた。
「母ちゃん無事で良かったな」
「うん。貴哉、本当にありがとう。貴哉がいてくれなかったらこうはならなかったよ」
「俺は関係ねぇだろ。フラフラ勝手に出歩こうとして倒れそうになってたのを助けてくっちゃべってただけだし」
「母さんそんな事してたの?」
「うん。てか空んちも家に負けず劣らずな母ちゃんだよな~!俺の母ちゃんとは違う迫力があったわ」
「……あんな母さん見た事ないよ。俺が知ってる母さんはもっと暗くて冷たい目をしてた。あんな風になるのは男の前だけだよ」
なるほどな、陽子さんにとって素が出せるのは拠り所の前だけだったのか。いや、どっちが本当の陽子さんなのかは知らねぇけど、俺と話してる感じの陽子さんならこのまま空とやっていけるんじゃねぇかな。
少なくとも俺は空を安心して家に帰してやれると思う。
「空がどう思ってるのかは分からねぇけど、少しだけ母ちゃんの事見てやれよ。本当にお前の母ちゃんやりたがってるみてぇだからよ」
「貴哉、もしかしていつもみたいに母さんと話をしたのか?」
「した!てか初め口説いてきたんだよ!息子の友達をだぞ?そしたら何か普通に話せたわ」
「母さんてば何て事を!」
「まぁいいじゃねぇか。ちょっとズレてるなぁとは思うけど、お前の話をいっぱい聞きたがって、すげぇ楽しそうにしてたぞ」
「本当に?母さんが?」
「本当だって。俺の事も空との事認めてくれたし!それが俺は一番嬉しかったかな~」
ここで空はギョッとした顔して立ち止まった。
あー、勝手に話した事怒るんかなぁ?
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