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8章
お前嘘ついてんだろ?
しおりを挟む俺が昔話を思い出してる間、目の前にいる類はいろんな顔をしながら悩んでいるような素振りを見せた。
困ったような、苦いものを食ったような、もう諦めようとしているような、そんないろんな顔。
「おい、何でお前の百面相を見せられなきゃなんねぇんだ」
「思い出そうとしてるんだよ。貴哉の大切な物を~。俺が返してないんだろ?そんな物あったかなって……あ!もしかしてアレ!?」
腕を組んでずっと悩んでいた類は何かを思い付いたように、ただでさえ大きな目を更に大きくさせた。
「いや、アレか!そう言えばあの後貴哉んち行っても会えなかった気がする!えー、もしかしてアレのせいで俺と会わないようにしてた!?いつ行っても外へ遊びに行ったとか言われてたんだよ確か~」
「アレじゃ分からねぇよ!本当に思い出したのか?」
「でもさ~、アレだったとしたら俺ちゃんと返したよ?その日の夜にお母さんにバレてお父さんが返しに行ってくれたんだよ」
「はぁ?返って来てねぇよ。他のと勘違いしてんだろ」
「いやいや、絶対アレだって!アレの後に貴哉と会えなくなったんだもんっ」
「だからアレって何だよ!」
「ブラックキングのソフビだろ?」
「っ……そだよ……分かってんじゃんっ」
ふざけてんのかと思ってたから、本当に思い出してて驚いちまった。しかも今の類はふざけて笑ってたりしなかった。真面目な顔して、ちゃんと喋っていた。
でも話は食い違っていた。俺はあの日から宝物だったブラックキングは返って来ないまま。類はその日の内に返した。類が嘘ついてんだ。
「覚えてるっても断片的にだけどな。俺怒られた事ないんだけど、あの時はお母さんに強く言われた日だったから少し印象に残ってるんだ。貴哉お兄ちゃんの大切な物なんだから勝手に持って来たらダメだって。次会ったら謝ろうねって」
「残念だけど、返って来てねぇよ。お前嘘ついてんだろ?」
「ついてねぇよ。貴哉こそ忘れてるだけじゃん?」
類は少しムッとして言い返して来た。
やっぱり類とは分かり合えないか。
でも俺が類の事を苦手な理由は伝わったはずだ。これでもう類が俺にそういう事をしなくなればそれでいい。
「もうそれでいいよ。面倒くせぇからこの話は終わりに……」
「やだ!良くない!ちょっと待ってて!」
「はぁ?おいどこ行っ……」
類は慌ただしく部屋から出て行った。
俺は一人になってため息をついてベッドに寝転がる。
やっとモヤモヤしていた物が吐き出せた気がして気分が良い筈なのに、類との食い違いでまだスッキリは出来なかった。でももう考えるのはよそう。所詮ガキの頃の話だ。これ以上類とも深く関わらなければいいだけの事。
でもなんでだろ。さっきの類の真面目な顔が頭から離れない。もし類の言う事が本当で、返してもらってるのに俺が忘れてるだけだったら……
俺が悪者じゃんっ。
俺はボーッとしたままスマホを見る。あ、やっぱり空からだ。空からのメッセージを見て俺は自然と微笑んでた。今日は陽子さんと初詣行ったって。そんで、雪兄がおせち作って持って来てくれたのを一緒に食ったって報告。あ、おせちの写メ美味そう!
はぁ、空に会いてぇなぁ。
「貴哉ぁ!謎が解けたよ!」
「おわっ!?って、お前まだいたのかよっ!」
バタンっと大きな音を立ててドアから入って来た類は、満面の笑みを浮かべて俺の腕を引っ張った。
「やっぱり俺は貴哉に返してたよ♪そして貴哉も返してもらってなかった♪どっちも嘘はついてない♪」
「はぁ?何言ってんだよ?って引っ張るなよっ」
「だって、これでまた二人で遊べるんだよ♪早く凛子さんの所へ行こう!」
「母ちゃんとこぉ??」
ひたすら嬉しそうにしてる類。訳が分からなかったけど、そんな類に引っ張られる形で母ちゃんの所まで連れて行かれる事になった。
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