【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ6th season

pino

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8章

類さん、なんかすんませんでした

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「はぁぁ!?母ちゃんが預かっててそのまま忘れてただぁ!?」

「そうそう。あの日の夜にるいたんの父ちゃんがわざわざ返しに来たんだよ。そんで、それを私が貴哉が言う事聞かなかった時に使おうと思って隠してそのまま~。あれどこやったっけなぁ?」

「どこやったっけなぁじゃねぇよ!犯人は俺の母ちゃんだったとかダセェ事してくれんなよ!」

「まぁまぁ♪俺の疑いは晴れたんだしいいじゃーん♪」

「凛子さん、あの時めちゃくちゃ悩んでましたよね。貴哉が元気無くして何日か口聞いてくれなくなって、俺八つ当たりされて散々でしたよ」

「だって貴哉が私と風呂入らないとか言うんだよ?1日の楽しみの一つだったんだよ~」


 何なんだようちの母ちゃんは!!!!
 悩むぐらいならさっさとブラックキングを返せば良かったじゃねぇか!!!!
 そしたら俺と類もあの後仲良く遊べてたんじゃねぇの!?

 結局、類んちから返って来たソフビを母ちゃんが受け取って、せっかくだからそれをどこかのタイミングで使おうと思っててそのまま忘れていたらしい。そんなオチに俺は愕然とした。
 え、この場合俺が悪いって事になんの?類は嘘ついてなかったし、俺の母ちゃんが犯人って事は俺が悪いんだよな?


「あ、類さん、なんかすんませんでした」


 なんとなく謝っていた。
 類は全然気にする様子もなく、むしろ楽しそうに笑っていた。


「ううん!俺の方こそごめんね?何でもくれる貴哉に甘え過ぎてたなって反省~。とても大切な物だったのにね」

「類、お前って良い奴なのか?」

「どうだろー?俺は自分の事好きだけど♪あはは♪」

「なんか良く分からないけど、私のせいでお前ら仲悪かったんだろ?今日は二人にご馳走を食べさせてやろう♪竜太郎、私ビール飲んじゃってるから運転よろしく~」

「ええっ!?今日は二人で飲む約束じゃないですかぁ!」

「可愛い子供達の為だろ!ほら正月でどこも混むだろうから早く行くよ♪」

「やったー♪ご馳走だ~♪」

「…………」

「貴哉?いっぱい食べような♪」

「類……マジでごめん。俺も知らなかったとは言え、ちゃんと返してたのにお前の事避けるような事して……」

「あー、凛子さん!貴哉の部屋にスマホ置いて来ちゃったんで取って来ます!貴哉行こう」


 あの頃の類を思い出して、ちゃんと謝らなくちゃと思ったんだ。
 俺も弟みてぇに可愛いがってたし、類も俺の事を兄貴のように慕ってくれてたんだ。いつも俺の後を付いて来て嬉しそうに笑ってた。俺がもっとお兄ちゃん出来てれば、おもちゃ取られたぐらいでヘソ曲げなければ、類とはあのまま仲良く遊んでたかも知れないのに。

 類に腕を引かれて一度部屋に戻って来た。
 罪悪感で下を向いてる俺の頭を撫でる類。今はその手がウザいとは思わなかった。


「貴哉、またこうして会えたんだからいいじゃん♪お互いガキだったからお互い譲れないものがあったんだよ。貴哉は大切な物。俺は周りからの甘やかし。今はあの頃よりは大きくなったんだし、譲り合って仲直りしちゃおうよ♪」

「お前……」

「って、ダメかなぁ?」

「ダメじゃない!ありがとう類っ」

「っ!」


 あの類にすげぇ前向きな事を言われて、俺は胸がくすぐったくなった。類が良い奴なのは知ってたんだ。だからみんなから愛されてたんだ。
 俺もそんな真っ直ぐで純粋で懐っこい類の事が大好きだったんだ。今やっと打ち解けて、胸に引っかかってた何かが外れて、心から類に笑顔を向ける事が出来た。


「貴哉、お前……」

「類♪何食う?お前が言えば母ちゃん何でも食わせてくれるから焼肉って言っ……!?」


 気分の良くなった俺は大好きな焼肉を食う気満々で類にそう言えと指示しようとしたんだ。そしたら言い終わる前に、類に両手で顔を押さえられて顔を目一杯近付けて来た。
 は!?いきなり何!?


「おま、近いっ」

「貴哉はさ、俺とまた仲良くなれて嬉しいか?」

「そりゃ……お前良い奴だし」


 本当の事を言うと、類は今までとは少し違った優しく微笑むような笑顔を見せた。
 あ、あれっ?俺ドキドキしてね!?
 いや、これはあれだ!俺より背の低かったガキが突然背伸ばして現れてこんなに顔近づけられてるからだ!ビックリのドキドキだ!


「それなら付き合ってっての撤回するわ♪貴哉、改めて友達としてよろしくな♪あ、あの頃みたいにお兄ちゃんでもいいかも~♪」

「は、はは……驚かせやがって!弟としてこき使ってやるから覚悟しとけっ」


 すっかりいつものニコニコるいたんになったから、俺は気が抜けて、なんとかいつも通りに答える事が出来た。と、思う!
 母ちゃんの言う通り類は色男に育ったよ。最近みんなから背が伸びたって言われるから調子に乗ってたけど、俺より遥かに高い身長になってた類を見るとそれも霞んだ。
 そんな類が見せた大人っぽい笑顔は、しばらく俺の頭から離れなかった。

 少なくても焼肉を食うまでは。

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