【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ 5thのその後

pino

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3章 年下の友達

※ この人が俺の次のターゲット?

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 ※双葉side

 友達の石原るいに会う為に学校を休んで家を出た。
 駅前のマックで10時に待ち合わせだけど、俺は親には学校へ行ってる事になってるから、いつも通り朝家を出て着替えをバッグに詰めて駅のトイレで着替えて出たとこだ。
 制服が入ってる荷物はコインロッカーに預けて、身軽な格好でマックに入る。

 約束の時間までまだ一時間以上もあるな。参考書でも持ってくれば良かった。
 一応俺は今年中学三年で受験生だ。塾には通っているけど、類と遊び過ぎて少し学力が落ちて来ていた。本当は今日も学校を休んでる場合じゃないけど、類が言うから仕方なく付き合っている。

 類とは中学一年からの付き合いで、席が前後になってからずっと一緒にいた。俺は他に気の合う奴もいなかったから、類に声を掛けられた時とても嬉しかったのを覚えてる。
 類も俺と同じぐらい背が高くてなかなかのイケメンだ。性格も明るくて俺の他にもたくさん友達がいた。そんな類は少し変わった趣味をしていた。

 それは人の物を手に入れる事だった。
 例えば、誰かが使いやすいボールペンを使っていて、それを類が欲しがる。でもそのボールペンはその人のお気に入りだから簡単には手離さない。
 ここで怖いのが類はあの手この手を使ってそのボールペンを手に入れようとするんだ。
 自分が持ってるのと交換しようと申し出たり、買った時の値段の倍を払うと言い出したり、でもこんなのは普通だ。それでも相手が首を縦に振らなければ類は悪魔になる。
 盗んだり、酷い時は相手を痛め付けてでも手に入れようとするだろう。

 まぁこれは例えの話だ。

 類が欲しがるのは物に限らない。
 欲しがるのが人だった場合が厄介なんだ。

 類はモテる癖に何故だか相手がいる人ばかりを好きになる。それは女の時もあれば男の時もある。
 そして人を欲しがった場合、自分一人では無理そうな時は俺を頼って来るんだ。

 俺は協力した。
 類は俺のたった一人の友達だから。

 やり方は簡単。類が欲しがってる人の相手を落とせばいいだけ。落とし方はいろいろあるけど、女の場合は楽だね。ちょっと声を掛けてマメに連絡すればさっさと別れて俺の所へ来るから。男の場合はちょっと面倒だ。
 まず相手によって、やり方を変える。
 もし男でもOKな感じならそのまま言い寄って女同様俺の所へ来させるんだ。もしノンケだったら……まぁいろいろやるよ。

 そんで、類が次に欲しがってる人がいて、その人は年上なんだって。だから下見をしに土曜日にその人が通う高校の文化祭に行ったんだ。
 
 赤い髪をしたかなりのイケメン。スタイルも抜群で、まるで芸能人かのような男だった。
 えー、今回大変そうだなぁとか思って、俺のターゲットも下見する。男同士なら女を落とすのと変わらないから楽だなって軽い気持ちでいた。
 でも、俺のターゲットはなかなか姿を現さず、見つける事が出来ずにいた。俺は興味のない学校の文化祭や類とはぐれたりとうんざりしていた。
 そんな時にターゲットである秋山貴哉と出会った。彼の事は類から聞いてたから少しなら知っていた。
 見た目はヤンキー。口を開いてもヤンキー。おつむもヤンキー。あーはいはいなるほどねーって思った。城山高校にそんな生徒がいるなんてって思ったけど、実際城山高校に来てみたらいろいろな人がいて驚いた。髪型や髪色も個性的な人多かったし、本当に進学校なのか疑ったぐらいだ。

 それでも秋山貴哉に会えずに、類ともはぐれて一人で秋山貴哉が所属しているボランティア部ってとこのブースに来てみた。もしかしたらいるかも知れないしな。
 俺の期待とは裏腹に、既に店じまいを始めていたボランティア部。もぬけの殻状態で、ただ一人、黒髪の男が椅子に座って唸っているだけだった。

 俺は声を掛けて、類の特徴を伝えて見なかったかどうか聞こうと思った。
 とても機嫌の悪そうなその男は俺を見て来た。

 凄い綺麗な人。それが第一印象だった。
 男なのが勿体無いくらい綺麗な顔してた。
 そして、少し話していく内に男は天然な事が分かった。綺麗な顔してるのに口が悪くて、そのアンバランスさがちょっと面白くも感じた。
 恋愛で悩んでいるらしく、話を聞いている内に俺も楽しんでいた。その男が笑顔になるにつれてもっと話したいと思った。

 そして仲良くなってお互い名乗り合った所で俺は一気に現実に戻された気分になった。
 なんと、その男こそが秋山貴哉だったんだ。

 この人が俺の次のターゲット?
 類の友達で、ヤンキーで、あの芸能人みたいな人と付き合ってて、恋愛で悩んでて、天然で……

 あ、俺がこの人の人生壊さなきゃいけないのか……

 そう思ったら俺は今すぐに貴哉から離れなきゃいけないと思って、逃げるように立ち去った。
 
 どうしよう。
 類には協力したいけど、貴哉とは普通に仲良くなりたい。
 それから俺はずっとモヤモヤした気持ちで過ごしていた。

 今日だって、城山高校が休みだって知ってた類が貴哉に会いに行けば伊織さんに会えるとか言うから渋々付き合ったんだ。
 本当は嫌だった。もし貴哉に会ったとしても俺はどうすればいい?
 類には文化祭で貴哉に会った事は言ってない。
 てか類が本当の俺を貴哉に話すんじゃないかって不安があった。
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